CX『ボクらの時代』トーク、小野武彦×地井武男×村井国夫

11月9日に放送された俳優座養成所第15期生3人による同期生トークですけど、これが思いのほか面白かったんですよ。芸能生活40年以上の大ベテランだけあって、フジテレビ・高島アナとの意外な関係も含め知らない話もいっぱいあったし、普段は垣間見ることのできない同期生への思いやつながりの強さ、最近の若い俳優の印象など貴重な話をたくさん聞くことができて非常に楽しかったです。地井さんいきつけのお店ということもあってか、飲み屋でだべってる感じそのまんまといった仲の良さで、特に小野さんはね、こういった番組になかなか出ないし、夏八木勲江守徹原田芳雄平泉成といったベテラン役者の名前がポンポン出てくるので、年末在庫一掃セールとして蔵出ししておきます。

地井「じゃあまずはカンパーイ!」
小野「久しぶり。」
村井「久しぶりじゃねーよ。」
小野「キミとはあれだけど、地井とは久しぶりだから。」
村井「だって手術する前にみんな集められたじゃないか。」
(実は小野さん、今年の7月に腰を手術し、8月に退院していた。)
小野「地井とは…」
村井「あれ? 地井はこなかったの?」
地井「俺は行けなかった。」
村井「集められたんだよ。もうこれで最期になるからって。」
地井「そうそうそう。」
小野「電話したら、千葉に行ってたじゃん。」
地井「ああ、そうだっけ?」
小野「万が一のことがあったら、夏八木(勲)が葬儀委員長やるって(一同笑)。」

1963年(昭和38年)に俳優座養成所に入所した3人。この年に入ったメンツは“花の15期生”と呼ばれるほど多くの人材を輩出。同期には他に、原田芳雄前田吟夏八木勲林隆三秋野太作高橋長英竜崎勝栗原小巻太地喜和子赤座美代子などがいた。

村井「でも、タケん家にはお世話になったよね。」
地井「お世話になった。いまでも古い写真見るとタケん家で撮ったのがいっぱいあるもん。あそこでいつもご飯御馳走になって。」
小野「でもうちなんかはあれだよ。地方から出てきてなかったから、(高橋)長英とかみんなのところをぐるぐる行ったよ。」
村井「(栗原)小巻さんとこは行かなかった?(笑)」
地井「そこだけは行かなかった。」
小野「俺は1回だけ行ったことある(一同笑。小野の横っ面をはたく地井)。いや、稽古しに。マジメに。」
地井「稽古? なんの稽古?」
村井「おうちに呼ばれたの?」
小野「うん。密林地帯だよ。読み合わせするのに場所がないから。」
地井「小巻好きだったもんな。タケはな。」
小野「(照れ笑いしながら)バカ・・・。小巻を好きだったわけじゃなくて…」
村井「そう。小巻を好きだったの。」
小野「す、好きじゃないよ! 可愛い子だなとは思ったけど。」
村井「ああ、そうか。そうだね。」
小野「だいたいここは…あれ(言い訳)するわけじゃないけど、養成所の中では同期とか後輩とか先輩とかと付き合ったことないじゃん。」
村井「ないない。」
地井「そりゃあ他所ばっかりだもん、これ(村井)は(笑)。」
(※ちなみに村井国夫の妻・音無美紀子俳優座ではなく劇団若草に所属。)
小野「他所はあるけどさ、養成所の中では男女の付き合いしたやつっていないよな、こん中では。」
地井「僕はない。モテなかったもん。」
村井「モテなかったもん、全然。養成所では。」
小野「この3人はモテなかった。“おしゃべり”だしな(一同笑)。夏八木みたいなじっとして深く物事を考えてそうなやつの方が…」
村井「モテてたねえ。」


小野「俺はね、モテたのはいないと思う、この3人の中では(一同笑)。」
地井「モテたのはいないか。」
小野「(村井に向かって)モテたと思う? 自分が。」
村井「思ってない思ってない。全然思ってない。」
小野「こっちから追っかけるっていうのはあっても、モテたってのは無かったよ。」
村井「ないないない。」
小野「酔っぱらって“おねえさん”だと思ってくどいたら“おにいさん”だったってこともあ…(村井におしぼりを投げつけられる)」
村井「それは俺じゃないだろ!(一同笑) それは、、、だれだ?(笑) それは俺じゃないぞぉ。」
地井「そりゃあ、間違いは誰にだってあるんだよ。一度や二度は。」
村井「あのときは3人で呑んでたんですよ。」
地井「いいよ、その話は(苦笑)。」
村井「『セチュアンの善人』って芝居をやっててね、3人で呑んでて、タケ(小野武彦)は公園で寝ていて、僕はちゃんと家に帰ってて、で、地井クンがキレイな“おねえさん”とどっか行っちゃったんだよね。」
小野「どっか行っちゃった。」
地井「(苦笑)」
村井「次の日、そのおねえさんはなんか…」
小野「花束持ってきたよね。」
村井「花束持ってきた。なんか果物も持ってきてたよ、楽屋に。」
小野「その頃は花束とかもらう立場じゃないからビックリ。『なんか地井さんにお客さんで、花束と果物持ってきてるんですけどね』って。『あ、すげえなあ!』って…」
村井「『(低いダミ声で)地井さ〜ん!』って言ってたよね。『地井さんのお部屋どこですか』って(一同大爆笑)」
小野「『ん? おねえさんだと思ったのはあれはおにいさんだったのか』って。」
地井「(笑)」
村井「いやいやあれはね、やっぱり忘れられないですよね。」
地井「朝気が付いてビックリしたよ。俺の腕より太い腕がここにあるんだもん(一同大爆笑)。髭の生えた。」
小野「全然モテないわけじゃないじゃない?」
地井「(笑いながら小野を叩く)」
村井「結構モテるじゃないか。」



地井「俺はね、俳優座の養成所ってところによしんば15期じゃなくても入れたとしてだよ。俺は15期じゃなかったら俳優になれなかったと思ってんだよ。」
小野「ああ、それはどうかわかんないけど、15期に合ってたってことか。」
地井「これはキザに聞こえるかもしれないけれど、合ってたのかもしれないし、今日こうやって集まって他にも何人も同期がいるけど、ほんとにこの仲のいい何人かが周りにいてくれたから俳優らしきことになれたかなっていうのはある。」
村井「ミーハーが多かったからね。15期はね。」
小野「中にはいるよ? (劇作家の)斎藤憐とかさ、原田芳雄さんとかさ、最初から演劇を意識してた人も。キミたちはどうかしらないけど、俺は日活で(石原)裕次郎さんに憧れてなったみたいなところがあるからさ。」
村井「まあ、それは地井も一緒じゃない?」
地井「そりゃそうだよ。俺なんてまったくそうだもん。演劇なんてやったこともないし見たこともないからね。」
村井「俺も見たことなかった。」
地井「キミはだって演劇部だろ?」
村井「演劇部だけどさ。」
地井「いまの国夫ちゃんを思わせるようなことはあったんだろ? ミュージカルをやりたいとかあったんだろ?」
村井「全然!」
地井「ないの?」
村井「ないよ! ただ、地井と違って声が良かったから(一同笑)、歌はまあね。」
地井「だけどそういう意味では、同じ世代でよく話題になったのが江守(徹)な。」
村井「江守くんね。」
地井「僕らが…さっき国夫も言ったけど、俳優座に入ってまだ台詞の「せ」の字も言えない頃にもう舞台でイイ役をやってて…」
村井「いや、僕はね、何が衝撃的だったっていうと、江守くんのね、『怒りをこめて振り返れ』(65年文学座公演 )っていうジョーン・オズボーンの作品があるんですよ。それを大ちゃん(草野大悟)と、草野大ちゃんと岸田森がやってた。ところが大ちゃんが例の如く声を潰してたの。よく潰すんだけど。あの『怒りをこめて〜』の長台詞を3日で江守さんは仕上げて、僕が観た舞台は初日だったんだけど、なんのとちりもない、ぶわーーーっとあの長台詞を言って…」
小野「俺だから両方観てる。『すっげえ・・・』って。」
村井「すっげえなあ。いまね、いろんなところでナレーション聞くでしょ? いやあ、江守くんが一番上手い!」
地井「そりゃあそうだな。」
小野「うんうん。」
村井「もうどんな人がやったってあんなに…」
地井「江守には絶対見てもらわらないとな。(俺らが褒めてる)このシーンはね(笑)。」

1970年、同期生の中でも特に仲の良かった7人で「どぅりーみぃ7(セブン)」という会社を設立。メンバーは3人の他に、前田吟高橋長英夏八木勲竜崎勝

地井「でもまあ、会社をやって…まあいろいろ大変だったけど、いまはバラバラになって良かったと思うけど…」
小野「いろいろやりたい方向も分かったし…」
地井「あれをきっかけに国夫はいまのような歌や踊りやちゃんとした舞台ができるようになろうと思ったり、俺はそういうのは諦めようと思ったから、テレビや映画をやっていこうって思ったし。」
小野「国夫も地井もさ、劇団には属してたけどさ、映画会社と契約してたじゃん。」
村井「そうそう、俺はな。」
地井「ああ、俺なんかもな。」
小野「そういう映像でいろんなイイ監督だとか先輩なんかに出会えて、まあ芝居(=演劇)もキライではないんだろうけど映像の方に傾斜してくみたいなのがあったじゃない?」
村井「ああ、もちろんあったよ。」
小野「俺なんかはなかったからさ、出たくなくて出なかったわけじゃなくてお呼びがかからなかっただけだから、そういう意味じゃ羨ましいなあってさ、国夫を予告編で、おまえがポーンと立ち上がって『総員静止!』って…」
村井「映画『あゝ同期の桜』な。」
小野「『おお、いいなあ』って見てたよ。」
地井「そういうタケだって…って言い方もおかしいけど、「どぅりーみぃ7」はみんな世に出ていくチャンスがあったり、出てきてくれたりさ、どっかでいつも思うけどみんなが頑張ると『いと嬉し、いと悲し』っていうかさ、あんまり頑張ってると『国夫の野郎・・・』ってちょっとヤキモチもあったり(笑)。」
小野「自分が一番調子が良くて、二番目ぐらいにみんながいればいいな(一同笑)。俺、原田芳雄氏にさ、こないだ『おまえはさ、同期生に対してライバル意識とかないの?』って言われたのよ。なんかね、そういうところがいまいちダメなのかもわからないけれど、ほんとのとこいうとあんまりピンとこないんだよ。」
村井「うん。」
小野「ていうのはなんでかなあと考えたんだけど、それぞれみんな違うなと思ってたから、おんなじでこうなんかあれしてたらあれなんだけど、地井は地井、村井は村井…」
村井「で、平泉成にあれだろ!(笑)」
小野「だからそれを言ったら、『おまえそれは“ライバル”じゃなくて“商売敵”だ』って言われた(一同笑)。」
村井「じゃあ、平泉成(のモノマネ)やってもらおうか。」
小野「バカ言ってんじゃないよ(笑)。似なくてもやり続けよう平泉成、って知ってる? みんなでかわりばんこでやるわけだよ。」
村井「ハイッ!(とうながす)」
小野「『(モノマネしながら)会社には会社の事情というものがあって』とかさ…」
村井・地井「(大爆笑)」
小野「とにかく似てなくてもめげずにやり続けるの。」
地井「似てるよ! 似てる! 俺よりいいよなあ。」
小野「だから、同期のあれはやっぱりそれぞれ『こいつのこういうところは、俺、マネできないなあ』と思ったり、別々のもんだと思う。でもホントは俯瞰で見たらある年齢の層の中に入ってるんだろうけどさ。」
村井「そうだね。で、平泉成はどう思ってるの?(とまたうながす)」
小野「(御茶を一口飲み)『(モノマネで)おんなじなんじゃないですか?』」
地井・村井「(笑)」


地井「俺はいま国夫さんにも1年にいっぺんぐらいしか会えなくなっちゃったけど、他の連中にも昔みたいにちょいちょいちょいちょい会えるわけじゃないけど、タケに連絡すればだいたい動向がわかんのよ(笑)。これはさ、珍しい男だよな。タケに聞けば、他のメンバーがいま何しててどういうとこにいるか、村井が先月まで海外に行ってたとか全部・・・。こいつは…」
小野「家も(村井とは)300メートルだし。」
地井「そうだけども!」
村井「さっき『長英は?』って聞いたら…」
小野「実は明日一緒に映画を見に行く(一同爆笑)。」
地井「ほんとにこいつはさ…」
村井「キミがいなけりゃね…」
小野「いや、飽きっぽい僕ですけど、「どぅりーみぃ7」だけはね飽きないんですよ。」

ちなみにメンバーのひとり、竜崎勝(本名:高島史旭)は44歳という若さで死去。彼の娘がかのフジテレビ・高島彩アナウンサー。

小野「竜崎はほんとにリーダーというか、リーダーシップをね…」
村井「そう。なににつけても“おっちゃん”だったよね。」
地井「“おっちゃん”だね。」
村井「僕がなにかグジグジ言うと『おいおいおい!』って必ず押さえつけられて『おい国夫、もっと…』って言って…」
地井「みんなそうだよな。竜崎にはおまえ(小野)もいつも止められてたし。」
小野「そうそう。」
村井「それはやっぱり僕はね、(高島)彩が仕事するようになって、初めてフジテレビで会ったときはほんとにね、涙出てきちゃうのね。もうね、はあ〜。。。」
小野「高島アナウンサーは学校に上がってなかったもんな。亡くなったときな。」
村井「試験があれで、入ったってことがわかったぐらいだったみたい。」
小野「ああ・・・。」
村井「ぶっさいくな顔してな(一同笑。地井にぶたれそうになる村井)。」
地井「どんなに喜んだかなあ。竜崎が生きてたら。」
村井「そうだよぉ。」
地井「でもね、彩ちゃんは若いからね、俺たちの世代の頃の自分の父親を知らないからね、いくら『昔、あなたのお父さんにはこうこうこうで』って言ってもそれはピンとくることはないのかもしれんな。」
小野「そうだね。」
地井「だから一瞬空回りしちゃうみたいなところはあったんだけども…」
村井「(こちらが)ひとりで感動してな。」
地井「それだけ竜崎の存在って僕にとっては大きかったし。」
小野「僕の中でも大きかった。」
村井「僕の部屋は…まあ、小さい書斎があるんだけど、おっちゃん(竜崎)の写真が飾ってあるの。」
地井「ああ、前から言ってたよね。」
村井「ずーっと俺の中ではいるっていう感じがね…」
地井「竜崎がね。書斎にタケの写真は飾らねえもんなあ(笑)。」
小野「いやわかんないよ。亡くなったら良さがじわじわ分かってくるかもよ。」
村井「タケの写真は飾らないもんなあ(笑)。」
小野「気持ちワルいから飾るなよ、おまえ。だいたい死なねえし、まだ。」

ちなみに、村井国夫の奥さんである音無美紀子はチイチイの幼なじみだそうで、こんな話も飛び出しました。

地井「もうそろそろ国夫もいい加減にしなさいよね。いい年して週刊誌を騒がせて。まあ差し障りがあるから控えるけども、やっぱりそういう噂が一番あるのは国夫ちゃんだったよな。」
村井「やっぱり下手なんだよね、僕は。」
地井「下手とは思わないけどさ、勇気があるというかさ。国夫ちゃんの場合は僕はいつも言ってるけど、美紀子ちゃんというさ、ちっちゃい頃から可愛がってる父親代わりってイメージがあって、国夫が美紀子の旦那だっていうことがどっかで許せないみたいな…」
小野「それはやっぱり個人的に前から知ってたからだよ、地井が。」
地井「それだけじゃないだろ?」
村井「だってさ、俺が美紀子と最初に出た番組がドラマ『お登勢』でしょ?」
小野「これ、3人とも出てたじゃない?」
村井「でも俺が最初なの、出たのは。それで地井が『うちの小さいときから可愛がってる子が主役をやるからよろしくな』って言うから、よろしくしなけりゃいけないのかなって思ったの(一同笑)。」
小野「そこまでよろしくしろとは言ってなかった。」
村井「言ってなかったの?」
小野「うん。」
村井「言ってなかったんだ。」
小野「うん。」
村井「俺、言ったかと思って・・・。それで仲良くなったんだよねえ(一同笑)。」
地井「でも美紀子によって助けられてるよなあ、おまえは。ほんとに!」
村井「(苦笑)」
地井「ホントにおまえは女房を当てたよなあ。美紀子じゃなかったらどうしようもなかったね、キミは。」
村井「・・・それは言える」
地井「(爆笑)」


そしてフィルム撮影の時代を知ってる3人から見た最近の若い俳優の印象について。

村井「感性はね、やっぱり僕は感心するところがあるわけ。」
地井「若い人に?」
村井「そう。ものすごい…僕たちのころなんて台詞なんてさ、ほんとに台詞台詞してたじゃないですか。いまの子、普通にできるんだもん、こうやって。」
地井「なんでだろ、あれは?」
村井「俺たちできなかったよ。」
地井「できないできない。」
村井「緊張があったじゃない?」
小野「ただナチュラルにやるだけじゃなくて、自然な感じだけどパワー出すっていう…ただ自然にやるだけだったらさ、いけるとかって前に国夫が言ってたけど、確かにそれでチカラにすることができるやつなんか見るとさ、ビックリしちゃうよね!」
地井「いや、俺もそれは思うんだけど、僕らの時代はフィルムがメインでフィルムって非常に貴重なものだって思いがあったじゃない?」
小野「ああ。」
地井「NGが出ると『ごめんなさい!』って言わなきゃいけない世界があったけど、いまの若い人っていうか若い頃はビデオの世界になってどんどんどんどん使い回しが出来るとか、お父さんにも自分を映像として映してもらってることなんかがあって、カメラの前で緊張とかないんじゃない?」
小野「それはあるかもしれない。ホームビデオとかさ、俺たちの頃にはないから。写真だって緊張したじゃない?」
村井「だってさ、フィルムじゃなくたってビデオだって最初から戻さなくちゃいけないから最期にNG出したらまた頭からやんなきゃいけないとかさ…」
小野「そうそうそう。」
村井「そういう意味でほんとに緊張してたよね。その緊張が芝居の方にもあったと思うし。」
地井「舞台の方でも若い人って緊張とかないの?」
村井「舞台は、立ってるだけができないみたいなことはあるわな。つまり映像で(間近で)こう撮るのと、舞台で引きで歩かせるのと歩き方がもう…とかそういうことはあるね。汚いというか。でも緊張は・・・やっぱしないなあ。」
地井「そう言う意味ではやっぱ羨ましいわな。」
村井「羨ましい!」
地井「俺も若い人といろんな仕事すると、なんで俺たちはこういうこと出来ないのかなあって気がする。」
小野「表現するのに緊張しすぎてできないのはいけないけどさ、映画なんかでほら、『よーい、スタート!』でシーンとした中でフィルムが回ってる音がするってあれはイイ緊張感でもあったよな。」
地井「ちょっとハイになってる自分がって、そういうことはあったかもしれんな。でもあんなに、いまの若い人みたいにリラックスして自由にいろんなところから発想できてポーンとできちゃう人って…」
小野「いまの人は『NG大賞に使ってください』ってできちゃう時代じゃない?」


地井「タケの場合は、この世界でずーっと何十年も仕事してきてずーっと変わらぬ…自分にとっての「憧れ」でもいいし「スター」でもいいし…」
小野「憧れなんかの一番わかりやすいのは裕次郎さんなんかがあったんだけど、大人になったら『いいなあ。こういう友情関係も』って小津(安二郎)さん(の映画)なんかも結構キライじゃなかったよ、若くても。あと三船さんだとかの脇でいうとさ、俺は三船さんがかっこいいなと思うけど、小林桂樹さんに目がいったりとかさ、そういうのが…マネするとかっていうんじゃないけれど、自分の原質みたいなのはどこにあるのかなあっていう意味ではさ、裕次郎さんや三船さんや(高倉)健さんではないっていうことはわかっているけれども…」
地井「それは前から呑むと言ってたよな。」
小野小林桂樹さんになれるってことではないんだよ。“質”として…」
地井「タケが言うように、俺も日活の映画の裕次郎赤木圭一郎が好きだったよ。でもおまえと同じように、俺が石原裕次郎さんになれるとは思ってないし、それはホントそう思うよ。赤木圭一郎になれるとは思わなかったけれど、その映画に出てくる“彩り”というか適切な脇役がいいっていうのは子供心にあって…」
小野「あったあった。」
地井「こんな俺でもああいう俳優になれるんじゃないかなって思ったことは実際にあるのよ。」
小野「いや、わかる! それは。」
村井「もう僕たちのこの歳じゃ、かなりね、みんなかなりいったときなんだよ。」
地井「そりゃそうだよ。それを思うといいのかよこんなことしてて!(笑)」
村井「いいのかよ、ほんとに!」
小野「(地井さん見ながら)“おにいさん”くどいてていいのかよ!」
地井「(笑)」
村井「もうね、すごい! ほんとに先輩たちはすごい!」
小野「マジにね、テレビで名画劇場とか見てるとさ、座り直しちゃうよホントに。」


地井「今日はあんまり喋ってくれないふたりなんだろうなと思って私はちょっと心配してたんだけど、トンデモない話。私が口を挟む余地がないほどベラベラベラベラよく喋って頂きまして、ほんとにありがとうございました。ごちそうさまでした。」
村井・小野「ごちそうさまでした。」
(と言って鍋の残りを食べ始める3人。)
村井「いいのかよ、こんなんで。」
地井「番組として? いいんじゃないの?」
村井「そうか。」

こちらこそごちそうさまでした。しかし、まさか高島アナのことを3人がそんな目で見てたとはねえ。こんど一緒に番組出ることがあったら気にして見てみます。