<其の823>超濃厚な180分「オッペンハイマー」短評

 ようやく先のアカデミー賞受賞作品「オッペンハイマー」を観ました。クリストファー・ノーラン監督初の自伝映画にもかかわらず、昨年時点では日本公開未定で、最悪は輸入盤ソフトの購入も考えていたので・・・無事、上映されて良かった良かった!これで公開前から掲載していた「映画秘宝」の特集がやっと読める(笑)。もう大分上映回数も減っているので、もうじき公開終了かとは思いますが・・・サクッと書こうかな、と。

 

 物理学者にしてアメリカで「原爆の父」と呼ばれるJ・ロバート・オッペンハイマー(1904~1967)はドイツからのユダヤ系移民の子としてニューヨークで誕生。ハーバード大学を3年で卒業し、英・ケンブリッジ大学に留学。22歳の時には研究を評価されてドイツの大学に移籍する。帰国後はカリフォルニア大学バークレー校とカリフォルニア工科大学で物理学科の准教授を務め、1936年、教授に昇進。

 1942年、原爆の開発を目的とした極秘プロジェクト「マンハッタン計画」始動。政府に依頼され、プロジェクトのリーダーとして原爆開発を成功に導き、名声を得る。戦後の「冷戦」下でプリンストン高等研究所所長、アメリ原子力委員会(AEC)の議長となるが、水爆をはじめとする核開発に反対した事から周囲と対立。ソ連のスパイ容疑をかけられ聴聞会が開かれる。結果、アイゼンハワー大統領命により公職追放処分決定。以降、FBIが常に監視する生活を送る事に。

 1961年頃、オッペンハイマーの公的名誉回復の動きが出始め、1963年、アメリ原子力委員会は「科学者に与える最高の栄誉」として「フェルミ賞」を授与。1965年、咽頭がんが見つかり、67年に死去。享年62。

 

 ・・・何故、上記の略歴を書いたかというと、映画はオッペンハイマー(=演じるのはキリアン・マーフィ)の学生時代から聴聞会終わりまでが描かれるんだけど、彼の幼少時代のシーンは一切なく(その為、どんな過程を経て成長したのか不明)、年代や場所、登場人物に関する説明スーパーは一切出ないし、加えてオッペンハイマーの主観(主に「公聴会」と「回想」)は<カラー>、彼と対立するアメリ原子力委員会委員長ルイス・ストローズ(=ロバート・ダウニー・Jr.)を中心とした部分は<モノクロ映像>で、これがシャッフルされた複雑な構成!!いかにもノーラン、って感じだけど(笑)、非常にわかりにくいので少々、鑑賞の参考として書いた次第。

 複雑な構成にシャープな編集、大量の登場人物(マット・デイモンエミリー・ブラントラミ・マレックゲイリー・オールドマン、懐かしのマシュー・モディーンほか新旧メジャー俳優多数)に半ば法廷ミステリーのような展開と緊迫感・・・観ながらオリバー・ストーン監督作「JFK」を想起したのは筆者だけではなかろう。一瞬でも見逃すと映画に置いて行かれる超濃厚な180分だ。「ミッドサマー」のフローレンス・ピューが脱いでるのには驚いた(笑)。

 

 筆者的にはオッペンハイマーの名前や「マンハッタン計画(本来はナチに対抗すべく計画された)」ぐらいは知ってたけど、第2次世界大戦の裏戦史から「赤狩り」時代のアメリ近現代史の勉強にもなって面白かった。観賞中、かなりの緊張感を強いられたけど(苦笑)。今作でノーランはIMAXでのモノクロ撮影に初挑戦(コダックはフィルムを新たに開発する必要に迫られた)したんだけど・・・「デューン」同様、筆者はまたまた“ノーマル”で観た!ノーランさん、ごめん・・・。

 

<どうでもいい追記>前回書いた「デューン」も今作のパンフもそうなんだけど、頭から場面シーンのみのページが多いんだよね・・・(流行りなのか?)。個人的にはプロダクションノートや解説をいっぱい読みたいから、グラビアページ増やすなら、もっと中身を充実させて欲しいわ。パンフもいま高いからね!

 

<其の822>「デューン PART2」短評

 バタバタしてたら4月になりました。今年は桜が咲くの遅かったね(苦笑)。

 つい先日、視力が悪くなったので眼鏡を新調。すると程なくスマホのバッテリーが死にかけてたので、急遽スマホも新しくした(金かかるわ~)・・その際、機種変したのが災いしてアプリ&データ移行に超手間かかったし、操作方法も未だよく分からずで、ストレスが溜まる今日この頃・・・(疲)。

 

 ようやく「デューン  砂の惑星PART2」を観にいけました。皆さん言わないけど、、、前作は「DUNE╱デューン  砂の惑星」の表記だったので何気に変わってる(苦笑)。

 フランク・ハーバートの同名原作小説は超メジャーだから、いつもの粗筋紹介は割愛します→→→さすがにこの作品に関しては前作観てないのに映画館に行く人はいないだろう(笑)。この<続編>もドゥニ・ヴィルヌーヴ監督(彼のキャリア初の続編演出)の原作愛(製作、共同脚本も兼任)&審美眼に基づいて撮影された超大作(あれこれカットしたそうだが、それでも上映時間166分)!砂漠の風景ほか、ヴィルヌーヴ作品の特徴のひとつである“映像美”が全編において堪能できる(前作は約40%をIMAXカメラで撮影したそうだが、今作は100%IMAXカメラ!!でも筆者はノーマルのスクリーンでの鑑賞・・・ヴィルヌーヴ監督、ごめんね)。

 作中の見所は幾つもあるけど物語の前半、主人公ポール(=ティモシー・シャラメ)がサンドワームに乗るシーンは・・・凄かったな~!!今作観たスピルバーグは砂の演出を絶賛したそうだが・・・これ一見、全部CGかと思うけど(現在なら金と時間をかければ作れない映像はほぼない)、ヴィルヌーヴの要望で実際の砂漠の砂の下にカーペットを敷いて、ワームが砂の下を移動しているように見える独自で開発したシステムを使って撮影したんだって!ただでさえ大人数で長期間砂漠でロケすること自体大変なのに・・・ヴィルヌーヴ恐るべし!

 全編IMAXで撮影する事を意識したのだろう、前作より今作はロングショットが多い気がしたわ。まるでリドリー・スコットの歴史物のよう(笑)。そのサイズで撮影された戦闘シーンを観た時は凄すぎて、ついつい「ロード・オブ・ザ・リング王の帰還」を連想してしまった程^^。

 前作で基本的な説明終えてる分、すぐストーリーに入る今作の方が更に面白かったよね、ラブストーリーだし、バトルシーンも多いし(筆者の趣味:笑)。クライマックスのポールと見た目も言動も極悪の新キャラ・フェイド=ラウサ(演ずるのはオースティン・バトラー)の決闘シーンも迫力あって良かった!

 

 ところがこの「PART2」も・・・めっちゃいいとこで終わるのよ!長~い原作の頭だけしかやってないから致し方ないのだが・・・PART3の製作はまだ正式決定してないし、ヴィルヌーヴは「やっても大分先」みたいなコメントしてるから・・・3作目がある事を期待して、原作読んで待つしかないか。

 

<どうでもいい追記>「デューン」はまだ続きが作られるか決まっていないけど、あの「マトリックス」は第5作目をやるという!!キアヌ達が出るかは不明だが、前作コケたのに・・・マジか(心配)。

 

<其の821>またまた番外編:「第96回アカデミー賞」個人的感想をちょっと。

 あっという間に3月中旬になってました(早)。もうじき桜も咲きそうとの事ですが、、、花粉症がきついわ~(涙)!!身体もあちこちガタきてて病院通い・・・人間も半世紀以上やってると色々つらいわ・・・。

 

 さて、先日行われた「第96回アカデミー賞」ですが・・・日本映画が3作もノミネートされて、うち2作品が受賞(長編アニメーション賞「君たちはどう生きるか」、視覚効果賞「ゴジラー1.0」)するという“快挙”を達成しました^^。もう何日も経ってるので新鮮味はない話ですが、当ブログは軽く筆者の日記的意味合いも兼ねているのでご容赦の程を(笑)。以下、筆者のあくまでも個人的意見を少々書いてみようと。

 

 長編アニメーション賞「君たちはどう生きるか」は・・・さすが海外でも人気の日本アニメにして、スタジオ・ジブリ作品→→→てゆーか宮﨑駿監督人気を改めて示したような気がする。あるいはリスペクト。だって内容、言いたい事は分かるんだけど、表現が難解だったもの(苦笑:アメリカ人よりもフランス人の方が好きそうな作風^^)。まぁ、その分、逆にいろいろ深読みしたり、議論出来る作品とも言えるけどね。兎にも角にも受賞されて良かった良かった!!

 視覚効果賞「ゴジラー1.0」は、湯水のようにお金を使うハリウッド映画に一石を投じたんじゃない?優れた技術者がいれば、そんなに予算をかけなくても凄い映像は出来るという。映画自体はつっこみどころ沢山あったけど、VFXは良く出来てた(白黒バージョンは合成部分が浮いて観えちゃったそうだが)。欲を言えば、もう少しゴジラを出して欲しかったけどね。山崎貴監督、「白組」スタッフの皆様、本当におめでとうございます(ちなみに筆者は先の「日本アカデミー賞」で「ゴジラー1.0」が受賞ラッシュになる事は想像してた。「日本アカデミー賞」の傾向を考えれば楽勝で予想つく)!

 

 そして作品賞ほか圧倒的強さを見せたのが下馬評通り、クリストファー・ノーラン監督最新作にして初の伝記映画「オッペンハイマー」(=昨年、アメリカ本国で「バービー」と併せて日本人を不快にさせる宣伝やって問題になった)。・・・まぁ、コチラもこうなるとは思ってた(超想定内^^)。ノーランの映画もほぼリアルタイムで観に行ってるので、公開されたら行くけどさ・・・アカデミー獲ったから映画館混みそうでやだな~。日本人は権威に弱いから、日頃映画観ない人も映画館行くし(笑)。

 

 ここからはあまり言う人がいないけど・・・受賞した「君たちはどう生きるか」も「ゴジラー1.0」も第2次世界大戦の“戦中・戦後”にかけてのお話。で、作品賞の「オッペンハイマー」は“原爆の父”と呼ばれた男の話なんで当然、第2次世界大戦がー。勿論、単なる偶然で関連性がある訳ないんだけど、こんなにも時代背景がかぶってるのって、偶然にしてはちょっと出来過ぎなような気が・・・。筆者の考えすぎなのは十分承知してるけど、、、あるいは、映画の神様による采配か!?

 

 上記の筆者の妄想は別にして、日本人としても記憶と記録に残るアカデミー賞となったことは間違いない。筆者の世代は日本映画がダメダメだった時代をリアルで過ごしてるから・・・ようやく来たこの良い流れに日本映画がこれからも上手く乗っていけるよう切に願います!

 

 

<其の820>ファースト世代から見た「ガンダムSEED」&続編「DESTINY」

 2月も早下旬・・・。昨日、今日とめちゃめちゃ寒いんだけど、先日のあの暖かさは一体何だったんだ??

 

 映画「機動戦士ガンダムSEED  FREEDOM」が大ヒットという事で(近年はアニメ映画に大ヒット作が多いなぁ)、あの名作「機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編」の興行成績を越えたそうでー当時と現在では入場料自体違うから、金銭面だけでは単純に比較は出来ないーとはいえ、凄いなぁ!!しかも20年ぶりの続編って「エヴァ」より年月空いてる(笑)。

 自分はリアルタイムでファーストを観てた世代なので、やっぱり富野由悠季が演出した作品じゃないとガンダムっていう気がしないんだけど・・・でもね、一応“勉強”として「SEED」の総集編3本、続く「SEED DESTINY」の総集編4本&スピンオフ1本を観ました!!山ほどエピソードがこぼれた超ダイジェストである事は承知の上での鑑賞。さすがに今から2シリーズ全100話を観てる時間は筆者にはない(笑)。最低限の基礎の基礎を知った・・・っていう感じかな。「そっちはTVシリーズで映画じゃないから、このブログには取り上げられないだろ!」というツッコミもあるでしょうが、その複数の総集編、ついこの間、映画館で“上映”されてたから・・・半ば強引に当ブログで取り上げる^^。

 そして肝心の映画「SEED  FREEDOM」は、、、未だ見てない(笑:忙しいのよ)。

 

 そもそもサンライズは「若い世代に向けた新しいガンダムを作ろう」という意図で「SEED」の企画をスタートさせたそうで、まず筆者は「宇宙世紀」じゃない事と「ミノフスキー粒子」の設定がない事にビックリした。確かに「宇宙世紀」にしちゃうと、既に何作も作られてるから、その年表内で構想しないといけなくなるんで新しい年号を考えた発想がまず素晴らしい(西暦のままだったら、どれぐらい先の未来なんだろ?)。また<ファースト>は「ミノフスキー粒子」の設定があってこそ「モビルスーツ」や「モビルアーマー」に必然性があたえられてはいたけれど、「Zガンダム」からは富野さんが監督していても<リアルロボット路線>ではなく、ほぼスーパーロボットになってたから、ハナからモビルスーツを<量産化されたスーパーロボット>として扱う事を踏襲したことも理解出来た。

 

 更に見ていくと・・・「SEED」及び続編「DESTINY」が、ファーストから「Zガンダム」、映画「逆襲のシャア」(「ガンダムZZ」は筆者は大して観てないので、いまいち分からず)から流用した部分をちょいちょい発見。

 思いつくまま書いていくと・・・

◎主人公キラ・ヤマトは最初から軍人ではない。戦闘に巻き込まれて、モビルスーツに乗らなくてはいけない状況になるのはアムロ・レイと一緒。

シャア・アズナブル同様、マスクした敵キャラが出る(「SEED」、及び「DESTINY」にも)。

◎主人公が乗る船のデザインがファーストの「ホワイトベース」に似てる。

ガンダムモビルスーツが何体もあるのは「Z」と同じ。敵メカはファーストの「ジオン軍」と同じ一つ目(モノ・アイ)型を使用。

◎続編「DESTINY」では主人公がキラからシン・アスカに変わるのは「Z」のアムロからカミーユ・ビダンに変わるのと一緒。

◎主人公が乗るモビルスーツが変わるのも「Z」と同じ展開(これは富野さん的には、その前の「ザブングル」からやってた事だけれども)。

◎登場人物たちに、ちょいちょいニュータイプ的表現あり。

◎「DESTINY」では、ファーストでグフに乗ってたランバ・ラルの名台詞「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」がまんまあり。またドムそっくりの機体が3体出てきて「ジェットストリームアタック」を仕掛けるのも、ファーストのまんま。

◎ファーストの「ソーラ・レイ」的最終兵器が「SEED」に出てくる。

◎「DESTINY」の最初の方に「逆シャア」の隕石落し的な事があって、地球各地の都市が崩壊する。

 ・・・書いていくとキリがない。「SEED」世界の基本設定、ナチュラルとコーディネーターという人種分けもオールドタイプとニュータイプのリアル発展形という見方も出来ると思う。お約束の戦闘シーンをまぶしつつ、キラと親友のアスラン、敵味方に別れてしまった2人の友情と葛藤を描くのは今作のオリジナル。

 キャラクターに関してファーストは作風同様、割とリアルなキャラが多いんだけど、「SEED」シリーズは全く異なるアプローチをしている。基本、出てくるのは漫画チックなイケメン&美少女キャラ!安彦良和デザインのキャラにもイケメンや美女はいたけど・・・数がその比ではない!キラとアスラン含むイケメンキャラ大量動員で女子人気をゲット(過去にも、この手法で「ゴッドマーズ」や「聖闘士星矢」が成功してる)。加えて美少女及び巨乳キャラでロボットアニメ好き以外の男子のハートをゲットーという戦略が功を奏したようで。それを狙ってなければ、巨乳の女性艦長が船が被弾する度におっぱいが大きく揺れる描写はやらないだろう。女性キャラを脱がすのが好きな富野さんだって、やってない(笑)。

 

 この他、筆者が<作劇>として驚いた要素もあるんだけど、全部書くとネタバレっぽいんでこの辺にするけど、うま~くファーストから続く一連の作品要素を取り上げつつ、魅力的なキャラ達でまとめあげたのが「SEED」及び、その続編「DESTINY」っていう感じ^^。これはあくまで「ファースト」から見てた筆者の個人的意見。逆に「SEED」からの世代が遡って「ファースト」、「Z」、「逆シャア」(余力があれば「閃光のハサウェイ」も)を見ての感想も聞いてみたいところ。映画版なら「ハサウェイ」除けば7本で観終わるし(筆者が見たのと同じ数だ^^)。

 

 それにしても「ガンダム」は形を変えながら、これからも作り続けられていくのだろうな~。子供の時は想像もしていなかったわ(笑)!

 

<其の819>新海誠監督作品「すずめの戸締り」を観た(遅っ)

 2月になりました。身体の調子があちこち今イチです・・・(加齢)。

 賞レースの季節となりました。宮﨑駿監督作品の他、この新海誠監督作品「すずめの戸締り」も海外で沢山ノミネートされましたね(日本国内でも大ヒット)!ぶっちゃけ、前作「天気の子」は「君の名は」よりは完成度が落ちたと思うのだけど、さて今作はー!?

 

 宮崎県に住む17歳の女子高生・岩戸鈴芽は、亡き母の妹との2人暮らし。そんなある日、鈴芽は通学途中、旅行者の宗像草太から近くに廃墟はないかと尋ねられる。彼が気になった鈴芽は草太の後を追い、彼に教えた山中のリゾート跡地へ。だが、そこには草太の姿はなく、水溜まりの中に立つ古い扉を見つける。試しに開けてみると、そこには不可思議な光景が!驚愕した鈴芽は扉をくぐるが、何故かその中には入れない。足元にあった変わった形の石を持ち上げてみると、石は白い猫に姿を変えて走り去ったー。

 遅刻して登校した鈴芽が昼食をとろうとすると、先ほどまでいた山中から煙が登っているのを発見。ところが友人達はそんなものは見えないと言う。学校を飛び出し、再びリゾート跡地へ向かった鈴芽は、煙のようなものが大量に出てくる扉を閉めようとする草太の姿を目撃する。2人は何とか扉を“戸締り”したのだがー!?

 

 未見の方の為、ネタバレしないで書けるのはここまでかな~。これでタイトルの意味をなんとなく分かって頂ければと(本当はもうちょい書きたいんだけど)。上記を読んで誰もが思う「扉から出てきたものは何なのか?」、「何故、“戸締り”しないといけないのか?」、「主人公は何故怪異が見れるのか?」「猫になった石は何か?」他、数々の疑問は是非作品を観て頂ければと^^。

 今作は過去2作と比べて、スタートからの展開が早い早い!最低必要限の主人公紹介済ませた後はもうフルスロットル(笑)!で、ジブリっぽいキャラ&アクションもありのファンタジーになりつつ(「魔女の宅急便」とかに影響されたそうで。今作は伝奇的だけど)、ロードムービーにもなっていく。

 映画って“観客の観賞時間を操作するメディア”な訳だけど、頭からグングン話が進んで観客に緊張を強いる分、合間合間にうま~くダレ場“(=観客がほっとする時間)”を入れて、直後に、また観客が緊張するスペクタクル・アクションを展開させる緩急溢れる作劇方法は感心しましたわ^^。このスペクタクルを描く為か、新海作品最大の特徴でもある“美しい美術”は勿論、今作でも健在ながら過去作よりはちょいと比率を落としたような気がしないでもないけど(あくまで筆者の個人的な見解っす)。

 次第に、映画は日本のある“歴史的悲劇”が実はメインの主題だったことが分かっていくんだけどーこれはネタバレになるので書きません。で、迎えるクライマックス・・・ちょっと泣きそうになったわ!泣かなかったけど(笑)。個人的には「天気の子」より良かった。今作の主人公もこれまで通り明朗快活な女子でいいよね♪

 

 予告観てちょっと気になってたんだけど、公開当時は映画館行く時間がとれなかったんだよね・・・。スクリーンで観れば良かったわ(残念)!エンドロール含めて、きちんと<完結>させてる事も筆者的には高評価❤

 

<其の818>久々の番外編:月刊誌「映画秘宝」が再々創刊(驚)!!!

 昨日1月19日(金)、某雑誌購入の為、某書店に入ったところ・・・本棚に休刊していた「映画秘宝」の文字を発見した!!!

 な、なんと何気に再々創刊されていたのだ!!!筆者が驚愕しつつも、目的の雑誌と共に購入した事は書くまでもない^^。出版は「秘宝新社」なる会社(出版社を立ち上げたのね)。価格は1650円(税込)・・・ちょっと高いなぁ(苦笑)。

 マジで表紙見た時は心底驚いたわ!思わず二度見した程。数日前にふと「休刊後、秘宝はネットか何かで展開しているのかなぁ?」と思ったんだよね・・・わざわざ調べなかったけど(笑)。

 帰宅後、早速読んでみたところ、過去の事件(わからない人は各自で調べてみてネ)の反省の弁に始まり、日本公開は決まったものの公開時期未だ不明のクリストファー・ノーラン監督作「オッペンハイマー」の特集。・・・この記事は同作を観た後に読もうと決めた(笑)。

 映画本編よりも面白い文章を書く肝心要のライターさんは以前の方々もいらっしゃれば、新規の方々も。でも以前より全体的な人数は減少。そのせいか誌面全体としては、企画とか構成とかめちゃくちゃ変わっていた訳ではないけれど、ページ毎の<密度(以前は細かいネタが小さな文字で書かれていた箇所が多々あった)>が薄くなって、あっさりした印象かな。まぁ、筆者は老眼なので、読み易くなったという言い方も出来るが(苦笑)。

 想い起こせば筆者が「秘宝」に出会ったのは約30年前の、まだ不定期のムック本時代。購入する特集号もあれば、スルーした特集号もあり。で、いつしか月刊誌となり、以来欠かさず購入していた。そのバックナンバーは1冊も欠ける事なく、我が家の本棚の多くのスペースを占拠している。

 

 まぁ、兎にも角にも再々創刊、おめでとう御座います!!再び世に出す以上は、これからも映画オタクに特化した普通の映画誌では扱わないような作品紹介や以前のカルト作品についての研究(ほとんど小論文)も掲載して頂きたいと思います。そろそろネタも溜まったと思うので「底抜け超大作」の第3弾とかもやってほしいなぁ~(期待)。ネット社会で黒字になる程の売上になるかどうかは分かりませんが、なんとか頑張って頂いて1年、1か月でも長く続けて頂ければと。期待しております!!

 

 余りの衝撃に、つい番外編として書いてしまった(笑)。次回更新は通常運転に戻ります(・・・予定。予定はあくまで予定だ←昔の秘宝っぽい文章の真似^^)。

 

<其の817>邦画サスペンス2本「#マンホール」、「ロストケア」短評

 新年1発目が洋画からスタートしたので、2発目は邦画にしようかな、と(そんでサスペンス映画を短く2本立てで)。

 

 まず1本目は熊切和嘉監督の「#マンホール」。翌日に結婚式を控えたサラリーマン(=中島裕翔)が会社の同僚にお祝いして貰った帰り道に深~い穴に転落!!目を覚ますと足を大怪我した上に、警察に連絡したもののスマホのGPSの誤作動で自分の居場所が分からない。警察以外で唯一電話に出た元カノ(=奈緒)に助けを求めつつ、「マンホール女」のアカウントをSNS上で立ち上げ、ネットを通じて場所の特定をお願いしてみるのだが・・・!?

 

 ハリウッド映画だと「気づいたら棺桶に生きたまま入れられてた」とか「電話ボックスから出られない状況」とかの<1シチュエーション>作品が時々あるんだけどー邦画ではほとんどないんじゃない!?めちゃめちゃリサーチした訳じゃないから皆無とは書かないけど(笑)。しかも今作は原作なしのオリジナル!!日本映画としては興行的にかなりリスキーではあるけど、製作に踏み切ったその姿勢に筆者はエールを送る次第^^。勿論、筆者がこういう変わった設定の映画が好きなことは書くまでもない(笑)。    

 中島くんが狭い穴の中で色々大変な目に遭う<脱出系サスペンス>・・・と思いきや、更に想定外の展開になるのが今作のミソ(ネタバレするので書けない)。そのためにかなりのツッこみ所が生じているのが難点だが(苦笑)、普通~に観てて、楽しめる作品。SNSの功罪もきちんと描いているところも評価したい。

 

 続く2本目は前田哲監督作「ロストケア」。老人42人を殺害した介護士(=松山ケンイチ)と、彼を取り調べる検察官(=長澤まさみ)のバトルを描いているのだがーこれは単なるサスペンス、スリラーというジャンルを越えた<社会派サスペンス>!!中山七里原作の映画「護られなかった者達へ」は生活保護制度のヘビーな現状を描いていたが、今作は認知症を患った家族を家庭で介護する現状と介護ケア業界の実態をテーマにしている。少子高齢化の現代ニッポンが抱える闇・・・。

 これは誰もがいつかは向き合わなければならない事象で、当然筆者にも考える事が多々思い浮かび、観終えて気持ちがド~ンと重くなった(苦笑)。あえて粗筋を書かないので是非観てほしい。特に中高年の方々には。

 長澤まさみ松山ケンイチはこれが初共演だが、中でも長澤の泣きの芝居は巧かったな~。前田監督の演出は正攻法ながら心象表現として複数の鏡を使ったり、あえて壁のない黒バックのセットで撮影する等、細かな演出が印象深い。

 

 今作が公開当時、大して話題にならなかったのが残念だが「鬼畜」(児童虐待問題)と「護られなかった者達へ」、そして「ロストケア」の3本は令和を生きる日本人はマジで観て欲しいエンタメテイストの社会派作品だ。