其の528:久更!で「ローリング・サンダー」

 約1か月ぶりの更新・・・です。やっと諸々落ち着きましたわ^^。
 そうそう、先日人気漫画の実写化「銀の匙」(注:「銀のさら」ではない)を観ました。無理矢理“胸きゅん”シーンとか“過剰な劇的盛り上げ”を排した作劇で好感を持ちました。学生時代に“ドラマティック”なことなんて、そうそうないし(笑)。
 久々の更新なので、さんざん考えた結果、牧口雄二監督の「戦後猟奇犯罪史」(タイトルでおわかりの通り、もち東映作品)にしようと思いましたが止めて(笑)米映画「ローリング・サンダー」(’77)を!近年ようやくDVD化したのを記念して書こうと^^。B級アクション映画ですが・・・これも<カルト>だなぁ!


 空軍将校レイン少佐(=ウィリアム・ディヴェイン)と戦友・ジョニー二等曹長(=トミー・リー・ジョーンズ)はベトナム戦争から米・テキサス州へと帰国した。だがレインは7年に及ぶ過酷な捕虜生活によって心に大きな傷を負っていた。帰郷したレインに思わぬ事態が待ち受けていた。妻ジャネットは夫の出兵中、寂しさの余り地元の州警官クリフと恋に落ち、赤ん坊だった息子もクリフになついている状況。そんな家庭崩壊寸前の中、町をあげて行われた歓迎イベントでレインは<捕虜生活7年分を換算した銀貨の山>と<真っ赤なキャデラック>を贈呈される。
 そんなある日、レインの家に突如4人の男たちが押し入ってきた。一味はイベントの様子をTVで見て、彼に送られた大量の銀貨を狙って来たのだった。彼らは銀貨の隠し場所を明かせないレインの右手を砕いた上で銀貨を強奪。逃走する際、妻子をも射殺する!!入院したレインは失った右手に義手を装着。その2本爪で銃に弾が込められるようになるまでリハビリを重ねた結果、レインは復讐のための戦闘を開始したー!!



 一時期、ハリウッドで流行った“ベトナム後遺症映画”の一本(「帰郷」や「ディア・ハンター」とか「ランボー」もそうだね)。この作品を語る上で欠かせないのは、今作の原作・脚本(ヘイウッド・グールドと共同名義)をポール・シュレイダーが担当していること!

 このブログ読んでる<映画オタク>なら、彼が「タクシードライバー」(’76)の脚本書いてることは言うまでもなく思い出すでしょう(「タクシー〜」も“ベトナム後遺症映画”の1本)。「タクシー〜」といい、後に監督・脚本を務めた「ハードコアの夜」(’79)といい、“精神的闇を抱えた主人公の地獄巡り”が初期のポール・シュレイダー作品の傾向なので、「ローリング・サンダー」にもそれが顕著に表れている。
主人公が手を潰された後、逆襲に転じるのは彼が「任侠映画マニア」の性か、あるいは脚本作「ザ・ヤクザ」(’74)からの流用か?!・・・そう考えていくと、基本同じアイデアを延々形を変えてやってると言えなくもない(苦笑:でもね、人間そんなに引き出しがあるわけじゃあないから許してあげよう^^)。

 監督はB級アクション映画の匠(ホントか?)、ジョン・フリン(1932〜2007)。彼の代表作と言えば今作と、やっぱり「組織」(’73)だろうなぁ!筆者はシルベスター・スタローン主演作の「ロックアップ」(’89)も嫌いじゃないけど(笑)。当初は今作がポール・シュレイダーの初監督作候補だったそうだが・・・脚本の権利を売ったら、あっちゃこっちゃのスタジオに回って、結果フリン(不倫ではない)の登板になったらしい(で、ヘイウッド・グールドがリライト担当として雇われて、元の脚本を大分膨らませたそうな)。

 <いま現在の目>で映画を見ると、割とテンポはゆっくりだし、俳優陣のアップも多い。で、当たり前だが建物やクルマは古いし(懐)、ヒロインとかは“ノーブラ”!いやぁ、さすが70年代(笑)!!で、最大の見せ場・クライマックスは一転、早いカッティングの超ハードな銃撃戦(ネタバレするんで詳しくは書かないけど)^^。この作風、空気感がもろ70年代。いや〜、たまらんなぁ^^

 一方、俳優陣に目を向けると、主人公演じたウィリアム・ディヴェインロバート・アルトマンの「ギャンブラー」(’71)やヒッチコックの遺作「ファミリー・プロット」(’76)、ポール・ヴァーホーベン大先生の「インビジブル」(’00)他に出演しているらしいが・・・筆者はまるで覚えてない(苦笑)。妻子を殺されて燃えに燃える「マッドマックス」と違って、今作では醒めた表情で静かな怒りの炎を燃やす主人公を好演しとります。やっぱり、これが彼の代表作だろうな。あと、TVに写ったせいで賊に狙われるとはーやっぱりTVになんぞ出るもんじゃあない^^!
 その分、大ブレイクしたのはトミー・リー・ジョーンズだよなぁ(書くまでもないが今作ではめちゃ若い)!いまじゃ日本のCMで“宇宙人”やってるし(笑)。若き日のジョーンズのシリアス演技は必見!ちなみにイーストウッドの「スペース・カウボーイ」(’00)でディヴェインと久々の“再共演”しとるらしいのだが・・・ディヴェインの顔はわからんかったなぁ(汗)。粗筋には書かなかったけど、ヒロイン・リンダに扮したリンダ・へインズは、パム・グリア主演の「コフィー」(’73)に出ているみたいなんだけど・・・これも覚えてない!しゃあない、「インビジブル」と「コフィー」のDVD暇なとき見直すか(苦笑)。

 
 こういうゴツゴツした肌触りのアクション映画は・・・近年ありませんなぁ。時代が時代と言われればそれまでかもしれないけど。なにかとCGと合成に頼っちゃって、派手でぱっと見は凄いんだけど、痛みを感じないんだよねぇ・・・。今作やサム・ペキンパー諸作にある“匂い”を持った映画をまた観たいんだけどなぁ〜。


 そういえばジョン・フリンで思い出したけど「エクスターミネーター」やジャッキー・チェンの「プロテクター」の監督、ジェイムズ・グリッケンハウスっていまなにやってるんだろ!?一昔前はニューヨーク市大で教えてると読んだ記憶があるのだが?