其の673:奇々怪々!乱歩地獄「盲獣」

 11月になりました。2018年もあと2か月!「平成」も残り半年!!

 ・・・半月ぐらい死ぬ程働いたので(日帰り地方出張もあり)心身共に疲弊した中、ふと思い出した作品が「盲獣」(’69)でした(なんでやねん)!原作はご存知、江戸川乱歩。監督は「くちづけ」、「兵隊やくざ」シリーズ&「スチュワーデス物語」の増村保造放送禁止用語連発なので、テレビじゃ音声オフにする以外は放送出来ない<カルト映画>です(当ブログのお約束^^)。


 モデルの島アキ(=緑魔子)は、自身のヌード写真を展示する個展会場で、彼女をモデルにした石膏裸像を撫でまわす異様な男を目撃する。数日後、自宅にマッサージ師を呼んだアキは男にクロロホルムをかがされた上、誘拐されてしまう。彼女が意識を取戻すと、そこは目や鼻、唇、乳房や手足等のオブジェが壁に無数に並べられ、巨大な2体の女性裸体像が置かれた異様な倉庫の中だった。この部屋の主にして犯人の蘇父道夫(=船越英二)は先天的の盲人。彼は女体を題材に"触覚"で感じる芸術作品を創るべく、母親(=千石規子)に手伝ってもらって写真が評判になっていたアキに狙いを定めたのだった。道夫はアキに彫刻のモデルになって欲しいと懇願する。激しく拒絶するアキ。だが翌日、奇怪な密室で一晩過した彼女は、彫刻が完成次第、釈放する事を条件にモデルを引き受けるのだが・・・!?


 出演者はあらすじに書いた上記3人のみ!お話の大半は、いかにも乱歩な変態チックなセット内!原作とは誘拐されて以降の展開が全然違うんだけど・・・まぁ、色々と凄い映画よ(笑)。ちなみに明智小五郎は出ませんので御注意。
 原作を脚色する際(大御所・白坂依志夫が担当)、ウィリアム・ワイラー監督作「コレクター」(’65)を念頭にしながら、フランス映画「顔のない眼」(’60)もプラス。もっとも脚本第1稿にはスプラッター描写もあったが、増村の指示で変更されたそうで。こうして映画はサイコホラー的な原作をヒロインの心情の変化を綴った異常性愛映画(?)となった。
 今作<1番の見所>はなんといっても男が「アトリエ」と呼ぶ異様な室内!壁一面に大量の体のパーツが並び、超巨大な女の裸体オブジェが2体も置かれとる(フェリーニの映画みたい^^)。出演者が少ない分、予算の多くをセット費用に回せたのかもしれませんな。増村から「壁のオブジェをエクスタシーの表情にしたい」と提案された美術の間野重雄は、各部位、各パーツにどのように襞感を付けるか思案したという。それにしても量も大きさも凄いから・・・作った方々はさぞかし大変だったと思う(同情)。このセットは観る価値大!
 ヒロインの緑魔子は妖艶なキャラを体当たりで演じて正に適役(&乳出しもあり)。一方、自称・芸術家にして変質者役の船越英二は実際に盲学校に通って表情や動きを研究したそうでリアル且つある意味、目的の為に精神がイっちゃった感じが良く出ていて感心したわ(市川崑監督作「野火」では飢餓に苦しむ兵隊役の為、撮影前に絶食した程の役者馬鹿)。

 江戸川乱歩原作の映画は数あれど、今作はラストのオチのつけ方も凄いし、これは映画好きなら必見の映画でしょう。触覚はないけれど、目で観てビジュアルを愉しむ・・・これこそ<映像芸術>!!興味ある方は実相寺昭雄監督2作品と石井輝男監督の「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」も併せてどうぞ❤


 ・・・今年ほど物心ついてから映画館に行ってない年もない。個人的に観たい映画があまりなかったものだから・・・でも、これは観なさすぎてる。マジでヤバい平成最後の秋。