11/27(月) Porcupine Tree@名古屋ダイヤモンドホール

11/27(月) Porcupine Tree@名古屋ダイヤモンドホール に行って来ました。セットは以下、

Robert Fripp Solo:
01. 即興 (約33分)

約34分

Robert Fripp(gt,laptop)


Porcupine Tree:
01. Revenant 〜 ( Opening:VG のみ、約3分)
02. 〜 Blackest Eyes ( By Steven Wilson、約5分)
03. The Sound Of Muzak ( By Steven Wilson、約5分)
04. Hatesong ( Lyrics by Steven Wilson, Music by Colin Edwin&Steven Wilson、約9分)
05. Lazarus ( By Steven Wilson、Steven ag、約5分)
06. The Beast ( By Steven Wilson、新曲、約17分)
07. Open Car ( By Steven Wilson、約5分)
08. Buying New Soul ( By Richard Barbieri/Colin Edwin/Chris Maitland/Steven Wilson、Steven ag、約6分)
09. Mother and Child Divided ( By Steven Wilson、約6分)
10. Arriving Somewhere But Not Here ( By Steven Wilson、約12分)
11. The Start of Something Beautiful ( Lyrics by Steven Wilson, Music by Steven Wilson&Gavin Harrison、約7分)
12. Halo ( Lyrics by Steven Wilson, Music by Porcupine Tree、約6分)

Encore:
13. Trains ( By Steven Wilson、Steven ag、約5分)

約100分

Porcupine Tree Member:
Steven Wilson(g,vo)
Richard Barbieri(key)
Gavin Harrison(dr)
Colin Edwin(b)

Tour Support:
John Wesley(g,cho)


遂に来ました!Porcupine Tree 単独来日公演初日@名古屋ダイヤモンドホール、行き成り初日がこの狭いダイヤモンドホールで All Standing と言うのもちょっと違和感を覚えますが、まあ、US Tour などでは、このクラスのライヴハウスも結構ありますので、意外と今回の Japan Tour の中で最も Porcupine Tree が本領を発揮し、かつ盛り上がるのはここかも知れません。会場が広くない割には大きなスクリーンがしっかり中央に配置され、ステージに向って右奥雛壇が Gavin Harrison ブース、左奥雛壇が Richard Barbieri ブース、正面にはしっかり Roland の V-Synth が見え、その右にムーグかな。何故か左手前にラックが高く積んでありその上に Mac が載っていましたので、訝しく思っていたのですが、その後直ぐに、Robert Fripp の使用機材であることが判明しました。集客的には250〜300人と言ったところでしょうか、狭いながら All Standing でしっかり埋まっていましたので、基本的にはまだ日本市場で浸透しきれていないこと、初日、かつ平日のライヴであることを考慮すれば、かなり大成功と言えるのではないでしょうか。観客のノリも素晴らしく、それにつられてか、アンコール前の M.C. では、Steven Wilson が「また、来年日本に戻ってくるからね!」と言ってました。勿論、既にある程度のオファーは Creativeman から受けているとは言え、ここで Steven Wilson にそう言わせた名古屋の観客の皆さん、素晴らしいです!

先ずはオープニングアクト、Robert Fripp が開演予定時間の2分前に登場します、いつも通り Les Paul を携えつつ、そのラック右手に座り、徐に Mac 周辺を弄りつつ用意していたプログラミングを動かし演奏スタート、行き成り成る程と納得する、これはまんま Fripp&Eno ですね、どうやら先生、Eno は要らないよ、自分で出来るよ的なお披露目をされたかったようで、その後、意気揚々とたっぷりとサスティーン効かせたフレージングをプログラミングに合わせ、かつ奏でた音もエフェクトを掛けつつアンビエントに音を重ねていきます、結局約33分楽しそうに音を重ね、緩やかなプログラミングが残る中、満足したご様子で大仰に三方にお辞儀をしつつ終演です。ひょっとしたら、当初決まっていた Adrian Blew とのデュオを、自分のソロでやりたいと Adrian に降りるように仰ったのかも知れませんね、勝手な推測ながら、何となく謎が解けたような気がします。

20分ほどで転換を終え、暗転、スクリーンに Deadwing 風の VG が映し出され、Porcupine Tree のパートが始まります。程なく、「Revenant」がメンバーのいない暗転の中静かに、緩やかに流れ出し、それに呼応するように VG が印象的に動き出します。ちょっと流れていた Deadwing の映画版を想起させる音とヴィジュアルに、すっかり気持ちが高まった頃、徐にメンバーが登場!Richard Barbieri と Gavin Harrison がそれぞれの雛壇を駆け上がり、右手前には Colin Edwin が、左手前には John Wesley が着き、そして中央に Steven Wilson が登場し、徐に「Blackest Eyes」の演奏が被ってくる!

「Blackest Eyes」は DVD と同様、アルバム収録バージョンに比べ bpm 落とした形で、ちょっとギターフレーズのモタリ感を感じさせますが、ライヴでこの後の楽曲アレンジと併せて体感すると、ここでは意識的に、狙って躓かせていることが明確に感じ取れます。Porcupine Tree のと言うか Steven Wilson の演出、Fake ですね、明らかに。彼らのライヴは、有りとあらゆる音と光と言葉(歌詞)の中に仕掛けが満載、だからと言ってその一つ一つを明らかにしないと本質が楽しめないと言ったものではなく、Porcupine Tree とライヴに参加した観客の個々との間でそれぞれにパーソナルな楽しみ、結果としての個々の体感が形作られ、そこで初めてライヴに参加した観客数分の個々のライヴが完成すると言った印象です。それを実感した時の高揚感、至福感は計り知れず、その結果、個々の観客がそれぞれの形、想いで Porcupine Tree、その多くを担っている Steven Wilson へ畏敬を抱く訳で、今、世界中の音楽ファンから、最も先鋭かつ刺激的な音をまるで魔法のようにもたらす音のマジシャンとして捉えられている理由は個人的にはその辺りに存在すると見ています。

曲間を余り置かず続けて「The Sound Of Muzak」へ、ここでは「Blackest Eyes」で引っ掛けを作っている為、割とあっさり流しますが、そのせいもあってか、John Wesley のサポートワークが光ります、サイドでアコースティックの音色でのカッティングを刻み、エモーションをサウンドに被せるようなコーラスを加えます。よく Porcupine Tree の形容として Technical Rock と言う、かなり違和感のある言葉が使われることがありますが、それを一般に取られがちな”演奏能力の高さ”とするのならば、バンドのメンバーではない、ツアーサポートメンバーである John Wesley が最も当て嵌まるという印象で、その形容の的外れ具合はかなりのものではないかと思いますね。

続けて懐かしい「Lightbulb Sun」からの「Hatesong」、John がギターから外れ、コーラスでのみサポートの形、ここで行き成り光るのは、Gavin Harrison! Colin Edwin の印象的なベースランニングに、挑みかかるように、次々とフィルを展開させ、スキップを交えながら構築していく凄まじきリズム空間には、慄然とせざるを得ません!そんな刺激的な演奏を受けたシナプス全開状態の中、ふっと引けた音響空間に琴サウンドを絶妙に流し込むのは、Richard Barbieri、これ聴いてて正常な精神状態でなど居られないと思った刹那、Steve Wilson のカオティックでいて、かつ鋭いワウを掛けたギターソロがそのまま狂ってしまえと言わんばかりに襲い掛かって、畳み掛けてきます。この素晴らしい刺激的な音楽空間こそ、まさに Porcupine Tree の本領発揮と言ったところではないでしょうか。

狂わせた(笑)かと思えば、癒すとばかりに続く曲は「Lazarus」、勿論、Steven Wilson はアコギに持ち替え、Richard の浮遊感漂うメロトロンサウンドの合間を軽やかに縫うように爽やかなギターサウンドを優しげなヴォーカルを伴なって展開させます。この辺のメリハリの付け方、エレキとアコ、美と醜のコントラストの音像表現はこれまた見事の一言に尽きますね。

何と M.C. では「コンバンハ、ミンナニアエテ、トテモシアワセデス?What's?」と日本語を行き成りかます Steven、続けて「次に新曲をみんなに聴いてもらおうと思う、長い曲だよ、もう新譜をレコーディングしていて、これは Side-2 か Side-4 になる予定だ」と振り、新曲を演奏します。この新曲がまた素晴らしい限り!導入部はアラヴ旋律を使用しつつ Colin のベースリフと Gavin のスキッピングドラムでカオティックに進行、サウンドの肌触りは Tool より?を感じさせる。この曲も Fake が満載、John のギターはディレイの奇数波を左側スピーカーに、偶数波を右側のスピーカーに振るような形で、その効果はモロに精神に働きかけるかのよう、そしてこの曲はとても信じられないが、どうやら 8 ビートで進行しているようだ。初めに聴いていて、全く頭が取れないので、「まさか、8分だったりして、それじゃあマンマ、ポチャのチェンジアップだよなぁ」とか思って8分で取ってみると合うのです。聴いてると変拍子バリバリに聴こえつつも実は 8 ビート、それを Colin と Gavin がポリリズミックに変拍子バリバリ風にリズム展開させ、聴き手に Fake をかましているのです。その他、演奏は勿論、詩と言うか詞の内容も刺激的かつ印象的、後半は、転調し、静かに静謐に締め括る約17分の大作!既にまた新たな地平を目指して進み出している Porcupine Tree、世界最新鋭、最先鋭の恐ろしさをまざまざと見せつけてくれます。

更に畳み掛けんばかりに、激しいギターリフにより導かれる「Open Car」、激し過ぎるほどに激しい曲冒頭から、サッと音空間が開き Steven の印象的なヴォーカル、John がハスキーコーラスを被せ哀愁の音空間を構築し、そして激しい展開に戻る、その音像の転換がまたその激しさ、その切なさに相乗効果をもたらし、聴き手の感情、精神状態を激しく揺さ振る。

再び M.C. を取る Steven「次の曲は、随分昔の曲なんだけど、Recordings って Archive に入ってる Buying New Soul という曲を演奏するね」と「Buying New Soul」の演奏へ、再びアコギに持ち替え、アンニュイな雰囲気を醸し出すヴォーカルを伴なって緩やかに進行、こういうシンプルな曲になると John の素晴らしいサポートカッティングとコーラスが見事なまでに浮かび上がってくる、間奏の John のソロも音色含め完璧そのもの、本当に素晴らしいサポートミュージシャンですね。

曲間を置かずに続けてインスト曲「Mother and Child Divided」へ、曲の狂気感を煽るような VG が見事、地獄の業火を受けたような車輪が回り出し、様々な家族の写真が映し出されては消えていく、ダミアンを象徴するかのような不気味な子供を伴なった母親との写真が浮かび上がっては炎に包まれていく、曲の進行と映像のシンクロの仕方が異常に冴え渡って、これまた知らず知らずに惹き込まれ、高まる高揚感、シナプス全開状態。

更に続けて「Arriving Somewhere But Not Here」、これまた VG が素晴らしく、アコースティック風に作った清々しいサウンドが展開する中、光が収束するように集まっていき、そのまま街を流れる車の動きを時間を早め、光速時の時空の流れを象徴するかのような映像が、街を、高速道路を、トンネルを空を駆け抜けていく。そして音楽の盛り上がりに呼応するかのように激しく光を放ち、一瞬の静寂の中、何時しか宇宙に飛び出す、素晴らしき音と映像のコラボレーション、John の八面六臂のサポートギター、コーラスワーク、Richard の映像に合わせるのではなく、映像を引っ張り出し、筋道を付けるような Key ワークにもう脱帽。

続いて「The Start of Something Beautiful」、もう怒涛のたたみ掛けは止まりません。不気味な花の実が虫に食い荒らされ、無常感を漂わせる VG をバックに、遣る瀬無さを吐き捨てるような Steven のヴォーカルが進行していく、何時しかその残った実から昆虫らしき生物が生まれ、ストーリー性を持って VG が展開していく、不気味な、気味の悪い始まりが徐々に美しいものに結実していく様子を、Porcupine Tree の見事なオーケストレーションが音像で表現し、VG で補完する。

「最後の曲を聴いてくれ、本当にありがとう」の Steven の言葉を契機に「Halo」の演奏が始まる。「God is Power, God is Proof, God is Fashion, God is Fame, God gives Meaning, God gives Pain」の印象的なフレーズが、Steven のヴォーカルと VG 上のテクスチャーがエキセントリックな音像の中、シンクロした形で投げかけられていく、最後の最後まで、観客の中に様々な音楽的仕掛けを投げかけ続け、本編の幕を閉じる。

当然、一斉に起こるアンコール要請の拍手の中、メンバーが楽屋から現れ、アコギを携えながらの「ドウモアリガトウゴザイマス」の Steven の日本語 M.C. から嬉しげに「来年、日本に戻ってくるからね」と高らかに宣言し「Trains」へ、限りなく美しく、どん底のように切なく、全ての情感を顕わにしつつ、Steven のヴォーカルと他のメンバーの繊細な演奏によって紡がれ、観客は涙を湛えながらじっとステージ上の彼らを見据える、素晴らしいライヴでした。


Porcupine Tree のメンバーとスタップの皆さん、関係者、そして、この素晴らしいライヴの場に共に居合わせた観客の皆さんに限りない感謝を捧げます、ありがとうございました。また、次回の、Porcupine Tree のライヴでお会いできることを切に願います。


何事も(怒りの以下略)さんより TB 頂きました、ありがとうございます。



n.p. Porcupine Tree「Deadwing」