スモーク
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2005/03/02
- メディア: DVD
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で、「スモーク」。ウェイン・ワン監督、ポール・オースター脚本、ハーヴェイ・カイテル、ウィリアム・ハートら出演。煙草屋の店主を中心に、妻を亡くした作家、いわくありげな黒人少年、店主の元恋人などの織り成す、ニューヨークのブルックリンを舞台にした群像劇っす。
見終わった直後の印象は、「あれ、終わり!?」という感じ。各自のエピソードは一応それぞれ解決を見るし、オーギーの語るストーリーのところではクライマックスだと感じてはいたものの、思った以上にささやかな終わり方だった気がする。そこで思う。この映画は、上流から時には交差しつつも別々の流れで進んできたそれぞれのエピソードが下流で一つのところに収斂するというよりは、あみだクジみたいに横のつながりはところどころあっても結局それぞれ別の線として進んでいく劇なんじゃないかなと。というか、一本のドラマというよりはエピソードの集合といったような雰囲気の作品と言った方がわかりやすいか。だから、それぞれのエピソードは魅力的なんだけど、俺は収斂するドラマという先入観を持ってみてしまったせいで、どっか肩透かしを食ったような気分になった。もう一回見たら印象が結構変わりそうな気がする。個人的には、ラシードとルビーの話がラストにもう少し加えられてたらまとまりがよかったかなと感じるのだけど。
でも、全部バラバラなわけではなくて、そのあみだクジを辿るように、人々の間で受け渡される何かが確実にある。それは具体的にはラシードの金であったり、オーギーの写真や逸話であったり、それこそ煙草であったりと、色んな形を借りてあらわれるけど、その受け渡されるものが嘘から出たものであろうが過ちから生まれたものであろうが、そんなことは問題ではないのよね。それは「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」にもあらわれてると思う。そう考えるとこの映画の、『間違いだらけの真実の物語。』っていうコピーはなかなかうまいなー。
あとね、この映画見てるとやっぱり、煙草を吸いたくなってくる(笑)。登場人物がことごとく煙草をスパスパ吸ってるわけだけど、その絵がすごく自然だし、特にハーヴェイ・カイテルが吸ってる様子なんかいかにも美味そうに見えるのね。彼の煙草を吸う時の苦々しいけれどもコクのある(?)表情が、この映画のトーンを大部分形作っているような気がする。
ネットでこれのレビューをちょっと見たら、最後のスタッフロール部には賛否両論あるようで。俺はどっちかっつうと否定派。あの話はオーギーの語りで充分だと思うし、ない方がラストに締まりがあるかなと。それまでの流れを抜きにしてこの映像単体で見たら、いい味なんだけどね。