読了本二つ
『サルトル』読了。評伝なので気楽に読める。というかすでに知っていることが多い。(とは言えそれはサルトルの評伝は割りとよく読んでいるということであり、実はサルトル自身の著作ってあんまり読んでないんだよな)。知っていることが多いだろうということはうすうす読む前から気付いていたけど、これは「以前別の本で読んだなあ」という確認を当該の本を読むことで確認するというなんとも倒錯的な事態なんだが、僕はこれをよくやってしまう。完全に未知の世界が開けてしまいそうな読書に対する恐れみたいなものもある。サルトルが己を孤児としてあらわすことをうけての、著者のサルトルの父方の系譜探りがスリリングで良い。
『パリ感覚』読了。68年の意義を認めつつ、68年以前への郷愁が行間から漂っている。そしてそのように書ける立場とは、僕がもう絶対占めることのできない立場でもある。当たり前のことを確認する。85年に出版された本だが、随所にルペンの名が出ていて、後のフランス暴動に至る諸矛盾というのはすでにこの時期から見やすい現象としてあらわれていたことを知る。
素敵な発言メモ
飲みながら読む「アートの仕事」。都築響一のインタビューは面白い。発言の抜き書き。
- (「ポパイ」、「ブルータス」を振り返って)
カタログはカタログだけど、もののチョイスって、人間の考え方を代表するものだと思うんだよね。「なんでコレじゃなくて、コレを選ぶのか」ってことに、その人がすごく出るから。
神様、僕もいいチョイスが出来ますように。
- 有閑なコンセプチュアル・アートにふれて
「明日も新聞配達で3時に起きないといけないけど、がんばろう」みたいな、ちょっと希望を持たせてくれるほうが、大事だと思うわけよ。頭だけのお遊びのネガティヴなものじゃなくて、ポジティヴな気持ちにさせてくれるのが、本当のメジャーなアートだと思う。
これって微妙で、市井の人の突拍子もない逸脱アートって確かにあるけど、たいがいの人の「ポジティヴ」なものって箸にも棒にもかからないものが多くって、下手すりゃ浄水器や健康食品の「ポジティヴ」になっちゃう。フツーの人の抱える「ネガティヴ」の方が実りが多いような...という問題。
- 杉本博司のピントをぼかした世界貿易センターの写真が5万ドルで売れているが、チンパンジーのミッキ君が撮ったクレムリンのピンボケ写真がそれに似ていると言う。それだけだったらまあ「ピカソの絵って子どもにも描けるんじゃないの」っていうつまらない話なんだけど、都築響一の凄いのは、ミッキ君の写真を杉本博司に見せて、
「俺よりちょっとボケ味がきついな」
という発言を引き出してくるところだ。
今日買わ(え)なかった本
1.『ブック・アートの世界』(水声社)中川素子・坂本満
芸術書売場を冷やかしに行って遭遇。
2.『妄想はどのように立ち上がるか』(ミネルヴァ書房)フィリッパ・A.ガレティ・デイビッド・ヘムズレイ編
タイトルに魅かれます。
3.なぜか講談社学術文庫しか入荷しなかった。
文芸文庫待ち。
4.bk1や紀伊國屋BookWebとかでデータ上がってるけどまだ未入荷なもの
(1)『使えるヘーゲル』(平凡社新書)福吉勝男
要は平凡社新書が未入荷って事なんですが。『BRICs 新興する大国と日本』とか『ジプシー』も気になるところ。
(2)『ジョイスのパリ時代』(みすず書房)宮田恭子
これ欲しいなあ。
いずれにしても明日は完全休配なので入手できるのは来週以降になるな。
これから出る本
1.『女という快楽』新装版(勁草書房)上野千鶴子
新しいまえがきを収録。7月下旬刊
2.『小林秀雄の永久革命』(アーツアンドクラフツ)佐藤公一
思い切ったタイトルだなあ。6月下旬刊
3.東京大学出版会7月の新刊のうち興味を引くもの
(1)『ゲーデルと20世紀の論理学Ⅰ ゲーデルの論理学』田中一之編
4巻シリーズだっけか。今年はゲーデル関連の書籍がいっぱい出るんだろうなあ。
(2)『受難の意味 アブラハム・イエス・パウロ』宮本久雄・大貫隆・山本 巍編
今回も合宿をしたんだろうか?(『聖書の言語を超えて』後書き参照)
他にも『社会格差と健康』とか『統合失調症』とかも気になる。
http://www.utp.or.jp/bd/category/korekaraderuhon/