eliyaの日記

2008-10-05

[]高校生にもわかる金融危機 14:47

授業で大学一年生に向けて金融危機の話をします。一応授業そのものはミクロ経済学で、金融危機とは関係ないので、金融のいろはから。初歩から話しているニュースってあまりないと思うので、日本語訳をアップしてみます。


1. いったいなにが起きているの?

今、金融市場では信用収縮とよばれる事態が発生しています。信用収縮とはなにかを理解するためには、金融市場の性質について少し学ぶ必要があります。

金融市場とは

りんごやプラズマテレビのような普通の市場では、お金を払って、モノを買います。でも、金融市場とは、お金のマーケットです。お金が必要な人が金融市場に参加するのですが、お金を払ってお金を買うわけにはいきませんよね。実際には、金融市場では、今のお金と将来のお金を交換しているのです。要するに、お金を借りる、ってことです。「将来の」ってのがキーポイントです。りんごを買うときは、お金とりんごを即座に交換するので、明日八百屋さんが夜逃げするかも、なんて心配をする必要はありません。でも、金融市場では、貸した相手に逃げられると困ったことになります。金融市場では、お互いの信用が大切なのです。

金融市場は他の市場より脆弱だ

りんごやテレビとちがって、信用は一晩でなくなってしまいます。人間はパニックに弱い生き物です。株式の暴落、倒産するはずのない優良企業の倒産、などで簡単にパニックになります。そうなると悪循環です。パニックになるから、他の人からお金を取り戻して、手元においておきたい。みんな同じことを考えるから、どんどん市場からお金の貸し手がいなくなります。それを見ていっそうパニックになって、もっと必死にお金をかき集めようとするけど、それで市場からいっそう貸し手がいなくなって・・・。この悪循環のことを信用収縮といいます。信用収縮は、今のお金の価格、つまり金利が急上昇することによって確認できます。

二十世紀初期までは、10年おきにパニックを繰り返していました。現在では、銀行には政府の保証(とそれに伴う規制)がついています。でも、今回の金融危機は規制から漏れていたヘッジファンドや証券会社から発生してしまいました。

追記

金融市場についての補足を書きました。

そもそも、なんのために金融市場ってあるわけ?なんか私の役に立ってるの?

http://d.hatena.ne.jp/eliya/20081015/1224052597

2. 70兆円(イラク戦争の戦費+アルファ)も払って米国政府は何がしたいの?

この信用収縮のきっかけは、住宅価格の下落で金融機関が大きな損失を蒙ったからです。その損失を政府が補填することで、金融機関を健全にして、信用収縮を止めたいのです。


3. もし法案が否決されたらどうなってた?

誰にも確かなことはわかりません。でも、経済学者は、1929年に発生した世界恐慌と今の事態はよく似ていると考えています。世界恐慌では、信用収縮が実際に多くの企業の倒産に結びつきました。多くの企業が倒産している状態では、なかなか相手を信用することもできず、信用収縮は加速します。さらに事態を悪化させたのは、金融機関、特に多くの銀行が営業を停止したことです。普通、企業のお金のやり取りは、銀行口座を通じて行われます。その銀行が営業を停止したため、健全な企業ですら受け取る予定のお金が受け取れず、資金繰りに詰まって続々倒産しました。その結果として起こったのが経済活動のメルトダウンです。若年失業率は40%に達し、10,000の銀行が営業を停止し、株価が80%下がりました。

あなたがたにとっては、

  • 30人の生徒のうち、12人が卒業後職につけません。
  • アルバイトを見つけるのはすごく大変になるでしょう。
  • 車を買うとか、起業するとか、お金を借りなくてはいけないことは全部あきらめましょう。
  • 学生ローンを借りている人は、おそらく来年から借りられなくなるか、金利がすごく高くなります。
  • 両親の退職資金は、恐慌前の1/5になります。

4.本当に世界恐慌並みの事態になるの?

たぶん、大丈夫です。当時と異なり、現在は世界中の政府(日本以外?)が現況を真剣に受け止め、世界恐慌の再来を避けるためにあらゆる努力をしています。でも、この金融救済法案で一丁上がりってわけにはいかないかもしれません。米国が新大統領になってからが本番という人もいます。


5.そんなこといったって問題を起こしたウォール街に税金を払うのはおかしい!

まったくそのとおりです。でも、君たちや世界経済の将来の方が、たった70兆円の(そう、たったです)税金の公平性より大事です。もうちょっと落ち着いたら犯人探ししましょう。もちろん、金融規制は根本的に改正する必要があります。

沢村俊介沢村俊介 2008/10/16 00:48 eliyaさん こんばんは。
はじめまして。

素朴な疑問です。
たぶん、世界中の“お金の総量”は減っていないと思うんです。
燃してしまうわけではありませんから。
ということは、儲かっている人もいるわけですよね。
どんな人が儲けているのでしょうか?

KYKY 2008/10/16 01:07 過去の人が儲かっています

kokorohamoekokorohamoe 2008/10/16 02:24 というか、そんなに大事な決済機関が、投資機関と同一機関であることが問題だし。さらにいえば、その決済期間兼投資期間が、安いインターバンクレートで金を借りたあげく、投資に回す。という借金経営のバブル大回転をしてもよいなんて問題外の規制緩和だったと思うのですが・・・。


潰れる銀行は潰してしまい、政府が一時的に新規に銀行業務を行って直接 実体企業に投融資したり、決済代行すれば。銀行を潰して、実体企業は平気という状況もできなくはないし。そちらの方がたとえ、よりお金がかかるとしても。信賞必罰からいって、潰れるべき物はツブした方がよい。とおもわなくもないです。思うだけですけど。

eliyaeliya 2008/10/16 03:10 沢村さん
はじめまして。
基本的にはKYさんの言うとおりです。住宅価格が下落して銀行が損失を蒙っているってことは、銀行は高い価格で買いすぎたってことです。バブルのブームで売り抜けた人は、現在の価格よりも高い価格で売れたってことなので、儲けています。

でも、「損した人と得した人」っていう枠組みで現在の危機をとらえるのは誤解を招くと思います。現在は、信用収縮によって金融市場が麻痺しているのが最大の問題です。金融市場が麻痺すると、みんな困ります。
http://d.hatena.ne.jp/eliya/20081015/1224052597

eliyaeliya 2008/10/16 03:38 kokorohamoeさん
現在は、信賞必罰と世界恐慌のリスクにトレードオフがあります。どちらによりウェイトを置くかはその人の価値観によるでしょう。僕は、平時では信賞必罰を大事にしています。経済学はインセンティブの学問です。でも、世界恐慌のリスクに比べたらウォール街での信賞必罰なんてどうでもいいと思います。特に、信賞必罰を大事にしたフーバー大統領が世界恐慌を引き起こしたことを考えると。

通りすがり通りすがり 2008/10/16 16:18 ちなみに、金融機関に資金を入れれば恐慌を回避できるというのは、ここ数十年の経験でしかないんですよね。大恐慌のときも株の買い支えくらいはやったけど無駄だったようです。

eliyaeliya 2008/10/16 16:42 通りすがりさん
ここ数十年の経験は、大事だと思います。

jaggingjagging 2008/10/16 18:25 人口爆発を抑えて人間を安定飼育するのが難しいように、
金融危機を抑えて信用を安定維持するのは難しいのでしょうね。

でも本質は同じなのかも知れないなと思います。

eliyaeliya 2008/10/17 01:15 人口爆発は超難しい問題ですね。将来の世代と今の世代の権利の配分、ジェンダーそれに貧困が絡まっていて、僕は非専門家としてふれたくありません。

金融市場の秩序維持は、人口爆発ほどではないですが難しい問題です。規制でがちがちだった以前の日本や、規制がゆるすぎた現在のアメリカを見ると、正しいバランスって難しいのだろうなあと思います。

   2008/10/17 07:10 信用収縮というのは、実体経済の額に近づいてきていると言う事でしょう。
今次金融恐慌が起こる前(2007年)に世界金融資産は実体経済(6600兆円)の約4倍に相当する、2京2000兆円に達していました。
レバレッジや金融の証券化などがこのバブルに拍車をかけました。

eliyaeliya 2008/10/17 12:31 確かに信用収縮っていうと、金融資産総額が減ってるような印象がありますね。でも、経済学では信用収縮は、貸し借りそのものが止まると言うことなので、金融市場の大きさとは直接の関係はありません。
株価が下がったり、デリバティブの価値が下がれば、金融資産総額は減りますが、取引が止まる必要はありません。

   2008/10/20 00:42 ドラえもんの漫画で説明すると「してない貯金を使う法」ですね
のび太が未来のおこづかいを使って
ドラえもんに「きみがサラリーマンになって四十三歳の夏のボーナスまで一円もはいらないことになる」
と言うのをアメリカ人はやってしまった

eliyaeliya 2008/10/20 10:00 それそれ。ドラえもんはえらい漫画だなあ。

んでも、いい大人のアメリカ人がみんなのびた君なみに
うっかりだってのはちょっとなので、ちょっとお話を修正してみます。

のびた君は、ママに「来年からおこづかいアップするわよ」って言われました。でも、のびた君は今月号のコロコロコミックが欲しいので、してない貯金をつかって、来年のお小遣いを前借りしました。そしたらパパがクビになっちゃって、お小遣いアップどころかお小遣い停止になりそうで呆然としているのが今の状態です。これからお小遣い停止したにもかかわらず前借りは返さなくちゃいけない苦しい期間が始まります。

taityou@8eggstaityou@8eggs 2008/10/21 16:46   資本主義が社会主義に勝っている点があるとすれば、市場にあわないものは退出するのでより効率的な資源配分が期待できるところにあると思います。(会社がつぶれるのが怖いので人間がんばるだろう)
 社会への影響が大きすぎてつぶせない。と、いうのなら、この資本主義の利点を捨てていることであり。つぶれても大丈夫なぐらいに企業規模は抑制しなければならないのではないか。と、思いました。
 独禁法の運用を変えれば実現可能なことに思えますし。

eliyaeliya 2008/10/22 03:16 taityouさん
社会への影響が大きすぎてつぶせない、って理屈が資本主義と相性が悪いのはその通りだと思います。バーナンキの講演によると、これからは大きすぎる企業は政府が監督をすることになりそうです。

kiyokiyo 2008/12/23 20:26 eliyaさん
金融危機で検索していたらこちらのブログにたどり着きました。とても分かりやすくて、素人の私でも現在の状況の一端を垣間見ることができある程度の理解ができました。
それで、ちょっと聞きたいんですが、僕は日本やアメリカの財政赤字を軽くする方法を考えてみました。この考えって誰でも思いつくと思うんですが、どこが駄目なんでしょうか?
【借金解消方法】
国で金融市場ではなく、老人などへ社会的弱者と呼ばれる人たちへの金のばら撒き。並行して0金利政策。まず0金利となれば、これ以上借金は増えることはないですよね。それで大蔵省が紙幣をバンバン刷って超インフレに。現在の10000円の価値を1円にまで落とす(あるいはそれ以上)。たとえば100兆円あるとする借金は1万分の一に圧縮されますよね。1000億円ぐらいになるでしょう? つまりそうすれば、借金の返済も楽勝ではないでしょうか? しかも実労働している人に対してはインフレ増加分を保障すると働き続ける限りは、お金には困らないはず。

これじゃ駄目なんでしょうか?

eliyaeliya 2008/12/24 11:30 kiyoさん
インフレで実質借金額を目減りさせる、ってことですね。そういう考えもあります。実際、税制が整っていない途上国では、税金を取る代わりにインフレで間接的に税金を取ることも多いです。日本でも、将軍綱吉がインフレを起こしたり、第二次大戦の膨大な借金が戦後インフレでほぼ帳消しになったりしています。

でも、先進国では望ましくないこととされています。インフレのコストはいろいろありますが、財政赤字をだいぶ減らすような年率数十パーセントのインフレの場合は、最大の問題は将来見通しが不確かになることです。インフレ率の水準が高いときは、インフレ率が不確かになることが経験的に知られています。今の日本のインフレ率は0%プラスマイナス1パーセントくらいですが、たとえば、インフレ率を平均50パーセントとすると、それからプラスマイナス20パーセント動いてもおかしくないでしょう。
日本のような先進国では、安定した経済を前提にして、精妙な制度を組み立てています。現在の不況は実質GDPが1から2パーセントくらい落ちているのですが、まるで世界が終わったようにニュースで話していますよね。インフレ率の変動だけでその十倍成長率が変わってしまうのでは、経済は大混乱に陥ると思います。