2008-10-15
■[経済学] そもそも、なんのために金融市場ってあるわけ?なんか私の役にたってるの? 
いなばさんのブクマをきっかけにして、すごい勢いでアクセスが伸びています。先日のエントリーは僕の学生向けの授業メモを翻訳したので、経済学のキソのキが欠けています。金融市場の役割は大事なので補足します。
経済学の目的は、モノやサービスを、一番必要な人や、一番活用できる人にあげて、社会の無駄がないようにすることです。金融市場も同じで、とりあえずお金が今いらないひとから、今すぐお金を必要とする人にあげるために存在します。
将来より多くのお金を返してもいいから、今すぐお金が欲しい人がいる。
たとえば、たかし君がgoogleを超える素晴らしい検索エンジンのアルゴリズムを考え付いたとしましょう。でも、検索サイトを開くためには強力なサーバーが必要です。サーバーの元手くらい世界最高の検索エンジンなら数年で軽く稼げますが、たかし君はまずサーバーを借りるお金が必要です。世界中からアクセスが殺到することはわかっているので、巨大なサーバが必要になります。巨大で安定的なサーバーを借りるためには億単位のお金が必要です。(googleはすでに300億円以上サーバーに投じています。)
たかし君には億単位のお金はありません。どんなに優秀なエンジニアだとしても、それだけ自分でためるには10年かそれ以上かかるでしょう。もし300億円ためなくてはいけないのだったら、一生働きづめでも無理でしょう。たかし君は億万長者になるチャンスを逃しますが、世界の損失でもあります。googleより効率的な検索エンジンがあるなら、みんなハッピーになるのに、たかし君にお金がないばかりに実現することができません。
これはコンビニをはじめたいと思ったおじさんや、新しい液晶工場を作りたいと思っている企業でも同じです。
いつでも「今の」お金が余っている人はいる。
お金の貸し手というと、銀行を想像するかもしれませんが、銀行は預金を通じて消費者からお金を借りています。結局、主要な資金の出し手は私たち普通の人です。私たちは、万が一に備えて貯金をするし、引退後に備えた貯蓄もします。引退資金は、引退したときに確実に手元にあれば、働いているときは別に他の人が使っていてもかまいません。もちろん手元資金に余裕がある企業もお金の貸し手です。
金融市場は、今すぐお金が必要な人と、お金を使うのは後でいい人を結びつける
金融市場は、今すぐお金が必要なたかし君と、引退するまでとりあえずお金を使うあてがない普通の消費者をつなぐ役目を果たします。貸し手としては別にタンスに置いておいてもいいわけですが、借り手としてはそれでは困るので、「将来あなたが必要になったときには、お礼をつけて返しますよ。」っていうわけです。それが金利です。
金融市場があるから、タンス預金より有効なお金の使い道があって、引退資金をためている普通の人は得をします。たかし君は当然ハッピーです。コンビニをはじめたいと思ったおじさんや、新しい液晶工場を作りたいと思っている企業も得をします。最後に、無関係な消費者も、最高の検索エンジンや、近くの新しいコンビニから利益を得ます。金融市場は大事です。
追記
この記事についてのはてなブックマークの議論もすごく参考になるので、読んでみてください。
- クルーグマン・ノーベル経済学賞受賞
- ポール・クルーグマン祭リンク集(と池田信夫氏の批判について)
- eliyaの日記 - 高校生にもわかる金融危機
- ひとぅスクラップ - そもそも、なんのために金融市場ってあるわけ?...
- Japan: Financial crises and financial markets
- src’s note - 気になるその他メモ
- KG blog - おはなし
- 諏訪耕平の研究メモ - 経済が分からない(追記)(追記)(追記)
- 金融危機を理解する
- raitu Lifelog - bookmarks for the day
- 世界金融不安の解決に、日本が国債借金問題で使う「政治操作」とや...
- 昨日の風はどんなのだっけ? - 2008年10月15日のニュースヘッドライ...
- 6018 http://tbn2.blog50.fc2.com/
- 4899 http://www.golgo31.net/
- 4789 http://b.hatena.ne.jp/hotentry
- 2416 http://b.hatena.ne.jp/
- 2191 http://d.hatena.ne.jp/
- 1967 http://www.hatena.ne.jp/
- 1057 http://reader.livedoor.com/reader/
- 591 http://b.hatena.ne.jp/entrylist?sort=hot
- 570 http://homepage1.nifty.com/maname/
- 533 http://b.hatena.ne.jp/hotentry?
どの記事もとても分かりやすく、感銘を受けましたのでコメントさせていただきます。
僕は経済学科出身で、大学ではスティグリッツ系譜の藪下先生から経済の基礎を学びました。時を同じくして「クルーグマン教授の経済教室」を手に取り、理論に留まらない事例を勉強させてもらい、僕もクルーグマンのファンになりました。
知識レベルや経済(学)への関わり方などはeliyaさんには到底及びませんが、僕もクルーグマンのノーベル経済学賞受賞はうれしく思っています。
また覗かせていただきますね。
今後も期待しています。
それにしても、日本も又聞きや想像なんかじゃなくて、しっかりとした学問の流れを知ってる人が増えて欲しいものですね。
本当ならeliyaさんくらいの知識がある人がテレビに出たり評論をしてしかるべきと思うのですが…。
素人甚だしいのですが面白かったです。
がんばってください。
jaggingさん
まともな経済学者なら、みんな僕が書いた記事くらいの理解は少なくともあります。まともなマクロ経済学者なら、おそらくもっともっと深く。でも、日本のマスコミで話される経済学は残念な水準にとどまっています。おそらくメディアにでるためには経済学の理解、それをわかりやすく話す能力以外の何かが必要なのでしょう。
経済学の理解とは何も関係ないところで決まっているんじゃないでしょうか。マスコミにしれみれば経済の話なんて嘘を混ぜてデフォルメして煽らないと売れないネタに過ぎないのではないかと。
それにマスコミの経済記事がひどくたって、別に実害はないんでは。何か叩きたいのはわかりますが。
僕は大きな害があると思います。最終的には、経済政策は政治力で決まるので、世論に依存します。世論とマスコミが、経済学のキソのキを知らないようでは、まともな経済政策は望めないでしょう。日本のバブル処理は、公的資金注入が政治的タブーだったから長引いたと主張する人もいます。
全くありえないですね。ありえない状況があるかのようなデマを流せるメディアや学者がいるとしたら、何か別の狙いでもあるんでしょう。もしそこまで経済学部卒がどうしようもないという例外的な状況なら経済学部の卒業や経済学の学位を取得する基準を極めて高くして「品質保証」をしたらじゃないですか。そうすればブログで幼稚な意見を書く院生や程度の低い経済学の研究者も減るんじゃないですか。それを世論に押しつけるなんてあまりにも頭が変です。
日本国民のうち大卒者の占める割合を調べてみてください。きっとあなたが考えているより少ないと思います。あと、大卒者のうち経済学部/商学部卒の人も調べてみてください。もし、日本国民のうち経済学部卒の人が15%を超えているようなら教えてください。
経済学の目的は、モノやサービスを、一番必要な人や、一番活用できる人にあげて、社会の無駄がないようにすることです。金融市場も同じで、とりあえずお金が今いらないひとから、今すぐお金を必要とする人にあげるために存在します。
です。公的資金注入は経済学のキソのキではないです。
「一番必要な人」・「一番活用できる人」・「社会の無駄」。こういうことを「経済学」系の「キ」が上から目線で教えたがっているのを見ると、経済系の学部や院が続けてきた卒業者乱発の悪影響の甚大さが伺えます。
日本国民のうち経済学部卒の人は何パーセントでしたか?
たぶん相当な根拠があって言ってるんでしょうから、マスコミと世論の関係や「経済学の基本のキも知らない」マスコミとやらについて数字をあげて説明してくださいな。eliyaさんはご存知ないと思われますが、マスコミには「経済学者」や「エコノミスト」といった経済の「専門家」が多数登場するんですよ。そういう事実とご自分の発言の関係をしっかり数字をあげて説明してもらえますかね。
>マスコミにしれみれば経済の話なんて嘘を混ぜてデフォルメして煽らないと売れないネタに過ぎないのではないかと。
よく考えたら、おっしゃるとおりマスコミ関係者の経済学理解水準は関係ない気がしてきました。彼らは視聴率と広告収入を最大化するために、視聴者が理解できる言説を流すわけで、どんなに経済学の知識がある人がマスコミのまわりや内部にあふれていても、もし視聴者が経済学を理解しないのなら、彼らの言葉は「受けない」のでメディアには現れません。
それを踏まえると僕の「世論とマスコミが、経済学のキソのキを知らないようでは、まともな経済政策は望めないでしょう。」
ってのは余計な言葉がありますね。大事なのは世論、視聴者あるいは有権者の経済学理解で、それだけです。なるほどー。付き合ってくれてありがとうございました。勉強になりました。
マスコミを叩いて経済記事の質をあげようっていうのは、彼らが確信犯的にミスリーディングな記事を書いている、あるいは経済学を無視するコメンテーターを選んでいるとすれば、一番売れる記事を書く代わりに社会に役に立つ記事を書けっていうのと同義なわけで、筋が悪い方法に思えます。話題になるコメンテーターがよいコメンテーターならば、経済学ブログがよくやるような穏当な批判はむしろ逆効果な可能性があります。もしやるならテレビ局に電話かけまくるくらいじゃないと。
それに、利益をあきらめて社会に貢献しろ、っていうのは経済学的ではありません。
でも、彼らのうち多くが「できたら社会にプラスになる記事が書きたい」と思いながら、単に知識不足から誤った記事を書いているのなら、批判はとても有効です。それってデータ次第だよな。多分会社にもよるでしょう。
実際はどうなんだろう。マスコミ関係者の人とかこのブログ見てないかな。
eliyaさんが説明している経済学の目的、資源配分の効率化(こんな表現でいいのか?)はなるほどと再認識しました。まさに、それが世界の富を増やしていると思いますし、なければ私たちは飢餓に陥ってしまうでしょう。さらに、私達は職業選択の自由を保証されているにも関わらず(自由なことをしているにも関わらず)、衣食住、さらには娯楽のサービスを受けています。これも経済学の資源配分のおかげですね。経済学万歳。
また、経済政策は世論によって変わるものであるから、一般大衆の経済知識は大切であるというeliyaさんの主張にも同感です。まともな経済政策の実行(議論にも)には知識を持った世論が必要です。最近、テレビを観ていると経済的問題の原因と結果の安易な結びつけによる嘘や、目的と手段の混同を平気で電波に流している報道をよくみるようになりました。一般大衆が経済に興味を抱き始めたと解釈すれば喜ばしいことですが、安易な報道によって間違った結論、つまり政策が選択されてしまうで気がかりです。eliyaさんのようなブログはきっと一般大衆の経済知識向上のきっかけになると思います。頑張ってくださいね。また拝見させていただきます。
教科書的な経済学の定義は「希少な資源の配分に関する学問」です。この定義は正確だけど、経済学を学んだ人しか味がわからない定義だと思うので、僕はだいぶ簡略化あるいは限定してます。特に、効率的なってのを入れた点です。経済学の90%は効率性となんらかの関係があると思いますが、すべてではないので、厳密には不適切です。あ、Genzinさんは経済学の味を良くわかっていらっしゃると思います。
もともとこのブログは経済学に好意をもって、多少勉強したことのある人向けにはじめたので、今の展開はちょっと予想外です。でもまあせっかくなので、しばらくは「やさしい経済学」路線でいこうかなと思っています。経済学に関するよくある質問とその標準的な答えはネット上のどこかにあるべきだと思います。
それに、pedestrianさんがおっしゃったように単行本や新書では確かにあふれていますが、ウェブ上のリソースは十分ではないと思います。やさしい経済学が対象とする人は、もともと経済学に時間とお金を注ぐほどの興味を持てなかった人なので、経済書コーナーにいくら書籍があふれていても手に取ることはあまりないでしょう。ウェブページの方が敷居はずっと低いと思います。