eliyaの日記

2008-12-28

[]ケインズ経済学のお勉強 その4 16:38

このエントリーは先日のエントリーの続きで、「世界で一番シンプルなマクロモデル」を解いていきます。


何らかの理由で、完全雇用を実現する価格より高い水準で価格が固定されていると仮定します。つまり、実質貨幣需要が貨幣供給を上回るので

¥frac{M}{P^e}<s¥Large(L+¥frac{M}{P}¥Large)

となります。ワルラス法則から、財市場で上記と同値な条件を表現ることができます。財市場では、完全雇用下の供給量が需要量を上回るので、

L>(1-s)¥Large(L+¥frac{M}{P}¥Large)

となります。このとき、生産量は需要によって制約されます。したがって、生産=需要=Cとなりますが、生産量が減少することによって労働需要量も減って、消費者の収入も減ります。財需要関数のなかの賃金額Lも制約されて、生産量Cになります。結局、財市場では

C=(1-s)¥Large(L+¥frac{M}{P}¥Large)

が成立します。これを生産量について解けば、

C = ¥frac{1-s}{s} ¥frac{M}{P}

となります。実質貨幣残高が1パーセント伸びれば、総消費つまりGDPが(1-s)/sパーセント伸びます。乗数効果です。

この状況は、完全雇用水準では人々が供給される以上の貨幣を持ちたがっているとみなせます。価格調整は不可能と仮定されているので、完全雇用を達成するためには、貨幣供給を増加させる必要があります。


これは、おそらくケインズが一般理論で述べていた有名な一節と呼応します。

失業が発生するのは、言うならば、人々が月を求めるからだ。欲望の対象(貨幣)が生産不可能かつ需要を抑えることができないとき、失業が発生する。ドル札は事実上単なる財であることを一般に納得させ、ドル札工場(つまり中央銀行)を公共の管理下におくことでしか解決できない。


これが、このモデルの中心的なアイディアです。さすがに古典だけあって、僕の下手な翻訳でさえ格調高すぎてわかりづらいので、あらためて言い換えてみます。

財市場と貨幣市場は個人の予算制約を通じて不可分に結びついています。個人は予算を貨幣と財に振り分けるので、貨幣の過大需要があるときは、財の過小需要があることになります。つまり、財市場の不均衡によって生じる失業を解決するためには、貨幣市場を均衡させればよいことになります。何らかの硬直性で価格調整が不可能ならば、数量調整するしかありません。こうして、お金を刷ることで財市場の不均衡、つまり失業を解決することができます。


あとこまごました補足。

モデルの問題点
  1. 金利については何も触れていません。しばらく後のエントリーででてきます。
  2. 将来の扱いが非常にあいまいです。人々の期待を正面から扱うと、まったく違う結果がでてくるかもしれません。ここから有名なルーカス批判につながります。
  3. 価格の硬直性は仮定されていますが、その原因は不明です。また、このモデルではクルーグマンの巧妙なモデル化で賃金水準と一般物価水準の区別は排除されていますが、実際には違います。特に実証上の証拠にあふれる賃金水準の硬直性に比べ、一般物価水準の硬直性は怪しくなってきます。

「乗数」について

経済ブログでよくみかける「乗数」の正体*1がこれを読んでやっとわかりました。「乗数効果」というのは、特定の変数の関係を示すわけではありません。もし二つの経済変数に関係があって、ある(マクロ)変数が1パーセント変化したときに、ほかの変数がxパーセント変化する場合、「乗数効果がある」といいます。xは1でも、1より小さい数字でもかまいません。政府支出を変化させたときのGDPへの影響が一番多く使われますが、このモデルのようにマネーサプライとGDPでも使われますし、「国際金融乗数」なんてのもあります。

*1:少なくともクルーグマンが「乗数」という言葉で意味すること。