2011-03-08
■日本ではライフサイクル仮説は妥当しない? 
ライフサイクル仮説みたいなたいそうなものを持ち出さなくても、現役世代は老後のために貯蓄し、老後は貯金を切り崩しながら生活すると仮定するのはごく一般的だと思います。この仮定に疑いを持つ経済学者を見たことありません。この仮定に従えば、年を取ればとるほど貯蓄額は下がることになります。
ただ、少し気になる記述をネットで見つけました。
1400兆円の個人金融資産のうち1000兆円以上を60歳以上が保有し、その保有額が死ぬとき最大になることだ。
藻谷 浩介 (ここから)
もしこれが文字通りの意味で、データから示されるのならとっても面白いです。一部分だけが正しいとしても、さまざまな非自明な結論が導けます。政策インプリケーションも大きいでしょう。騙されたと思って買ってみよう。
■イェンゼンの不等式(Jensen's inequality)の経済学的解釈 
経済学にはイェンゼンの不等式という不等式が使われることがしばしばあります。「イェンゼンの不等式より以下が成立する」みたいにさらっと論文や上級テキストでは書いてあります。初学者がイェンゼンの不等式を調べてみると、数学的な説明ばかりで混乱する人もいるかと思います。(学部時代の私)経済学的な解釈を書いておきます。
u(c)が狭義凹関数(strictly concave)の時、 E(u(c)) < u(E(c))が成立するというのがイェンゼンの不等式(Jensen's inequality)です。したがって、E(u(c)) = u(c1)となるようなc1を見つけた時、c1<E(c)が成立します。それが確実性等価です。これの経済学的解釈はいくつかあるので、以下に列挙します。すべて同じことを表現しています。
- 期待効用は期待消費の効用より小さい。
- リスクがあるときの期待消費は、期待効用と同じだけの効用をあたえるリスクなしの消費より大きい。
- 期待効用はリスクあるいは分散に依存する。
- 消費の期待値を一定として、分散を小さくしていくと、確実性等価は消費の期待値に徐々に近づき、期待効用は高くなる。リスクがないときは定義により確実性等価=消費の期待値=実際の消費、である。
テイラー展開との関係
通常はuは狭義凹関数ですが、First order approximationでは、効用関数を一次の項までで展開します。したがって、uが一次関数(線形関数)となり、線形関数は狭義凹ではないので、Jensen’s inequalityは成立しません。具体的には、E(u(c)) = u(E(c))となります。このとき、確実性等価と消費の期待値は等しく、リスクがない状態と類似した状態になります。特に、期待効用が分散に依存しなくなります。これは効用関数を一次で近似したからなので、二次までで近似すればこの問題はなくなります。
concave ではなく convex (凸)だと思いますが。ご確認ください。