初めてのベトナム人医師

最近体調がよくない。日本人向けのクリニックに行ってみたが改善しない。それをベトナム人に相談したら、ある医師を紹介してくれた。ベトナムの医者にかかったことがなかったので不安だったが、これも経験だと思い、紹介してくれたベトナム人のさらに友人のベトナム人(日本語が話せる人)の付き添いで、その医師を訪れた。

そのクリニックは、街道沿いの古ぼけた一軒屋である。内部の作りは特に他の商店と変わりはない。幅3メートル、奥行きが10メートルほどの空間に医師用のパーティションが奥に設けられているだけの構造。入り口に小さな机が置かれて、愛想のない受付嬢がちょこんと座っている。気がつくと彼女は白衣らしきものを着ている。その他には壁ぞいに4脚、診察を待つ患者用の椅子が置かれているだけ。実に質素なつくりだ。夕方7時ころに私たちが到着すると、雨のせいか他の患者は多くなかった。おばあさんと中年の女性が2人いるだけ。

医師は初老の男性で、冗談好きの快活な人だった。それなりに上手な英語を話してくれたので、実は医師とはほとんど英語で意思疎通ができた。聴診器を当てて、お腹の音を聞いていく。昔懐かしい温かみのある診察だ。それが終わるとおもむろに机の引き出しを開けて、自分で薬を包み始めた。それをポンと渡してくれて診察終了。診察料+薬代で、120,000ドン(630円)お金もその場で払った。領収書なんてどこにもない。やれやれ税金はどうなっていることやら。あとはこの薬が効いてくれることを祈るのみだ。

ベトナムで健康保険はあることはあるらしいのだが、医師が嫌がって、現金で治療費を全額払ってくれる患者を優先しがちだと聞いたことがある。所得を捕捉されるのがいやなのか、それとも手続きが面倒なのか。120,000ドンは、金持ちのベトナム人にとってはたいしたことはないが、月に100万ドンしかもらっていないような貧乏人にとっては、かなり痛いかもしれない。(それでもまったく払えない金額ではないけれど)

医師が面白いひとだったので、診察の後もなんだか爽やかな気分だった。人情味のある、昔懐かしい感じのするクリニックだった。