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elm200 の日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2009-06-20

[]梅田望夫氏をめぐる騒動について


最近、梅田望夫氏がネットで何を言っても叩かれる、という現象が目立っている。いちばん最近は、梅田氏の「オープンソース」という用語の使い方がおかしいんじゃないかという批判。あまりに多くの人が発言しているんで、いちいちソースのリンクは出さないけど・・・。この件について、私なりの感想を書いてみる。

一言で言うと、「なんでみんな騒いでいるのかわからん」という感じかな。確かに梅田さんはいまは技術者じゃないから、こまかい部分で事実と違うことは言っているかもしれない。だけど、彼の発言を自分なりに考えてみるに、大きな分脈のなかでふとつぶやいたいくつかの言葉に過ぎないんじゃないかな。つまり、たいして重要じゃないということ。ところが、彼の発言の大きな分脈を無視して、言葉尻を攻撃している人が多すぎる。私には、単に彼が嫌いで叩いているようにしか見えないのだが、その憎悪の源についても私は理解できない。

ひょっとしたら梅田さんがアメリカシリコンバレーに住んでいることと関係があるのかもしれない。梅田叩きに奔走する日本人たちの心の奥底に「やっぱりアメリカには勝てねーや」というアメリカやシリコンバレーに対する劣等感があるのかもしれない。かれが「ベトナムサイゴン在住(笑)」なら、「ふーん」という感じでみんなスルーしてたんじゃないか。

カナダに以前4年間住んで、細々とプログラマーをやっていた身からすると、梅田氏の英語圏と日本語圏の文化の違いについての指摘は、しごくもっともで、英語圏在住のまともな日本人ならだいたい同意するんじゃないかな。

そもそもみんな英語圏の内情を理解してるんかな。(まあ、僕だってたいして理解してないけど(笑))梅田さんは日本語のウェブと英語のウェブの両方をかなり深く知っている稀有の日本人には間違いない。みんな英語圏のことがわからないなら、黙っていればいいのに。「へーそういうこともあるんかなー」と思っていればいいのに。比較対象の英語のウェブもきちんと理解してないのに「日本にはニコニコ動画というものがありましてー」とか口から泡を飛ばして、日本のウェブの擁護に走るって、単にコンプレックスの表れじゃないの?そこまでムキにならなくたっていいじゃん。

外国はアメリカだけじゃないよ。むしろ、これからの日本にとってより重要な外国は中国かもしれない。中国のウェブは例によってハチャメチャで言論統制が目立つけど、結構、中国人独自のサービスもがんばっているみたいよ。というわけで、世界各国いろいろやっている中で、たまたまアメリカのシリコンバレーにいた人が「英語圏のウェブはこうで、日本語圏のウェブはあーでありますな」と呟いたとたんに袋叩きにされるというのは、理解に苦しむ。いいじゃん何を言ったって。日本人たちにスルーする余裕がなくなっているのかな。

梅田さんの「英語圏の知的エリートすごすぎる」発言は、まったくその通りだと思うよ。この事実の帰結について考えている人が少なすぎるのだが。英語は世界の数多くの言語のひとつに過ぎず、ネイティブスピーカーは4億人くらいしかいない。インドとか第2言語として英語が流暢に話せる人たちを全部足しても10億人くらいか。でも英語がなぜすごいかというと、それが世界の政治経済を語るときの言語であるという点だ。国連IMF世界銀行といった重要な国際機関のほとんどは欧米に本部を置き、そこでの公用語は事実上、英語になっている。世界の秩序は英語話者が決めているということ。日本人が日本語しか話していなければどんなに優秀な人でも、この「世界秩序を作る」というプロセスに参加できないということ。英語圏のエリートは、レトリックじゃなく本当に「明日の世界をどう作るか」ということを日々真剣に考えざるを得ないので、切磋琢磨の真剣さが違う。英語圏の Twitter では、イラン大統領選挙に関する真剣な議論で盛り上がっているそのとき、日本語圏の Twitter ではお台場ガンダムが一番の話題となっていたのが、象徴的だ。

こう考えると、たしかに、日本語圏で英語圏と同じ知的切磋琢磨をやるのは難しいのかもね。梅田氏も半分わかってて、やっぱりダメだったかと思い、「残念」ということになったのかもしれない。しかし、このままネットで知的エリートが輩出されず、英語の話せる日本人も少ないということになれば、「世界秩序を作っていく」という作業に日本人が参加する部分が本当に少なくなってしまう。言ってみれば、日本人は、英語圏の人々に政治経済的には管理される民族になりますがよろしいでしょうか、ということなのかも。梅田氏はそれを望んでいないのだろうが、彼に反発する人たちは、英語圏の人たちに難しい話は任せて、自分たちは「サブカルチャー」に浸りながら、楽しく生きていきたいと考えているといったら言い過ぎだろうか。

正直、これも悪い取引ではないのかもしれない。日本語圏はひたすらサブカルチャーを掘り下げ、開拓発展させて、この面で世界中のオタクたちの尊敬を集めるリーダーとなる。それでお金も稼げたらなおさらいうことなし。

なんか書いているうちに結論が変わってきた(笑)。

中国の台頭は、21世紀前半の最大のイベントだけど、世界の政治経済の枠組みが英語で作られていくという現実を変えるとは思えない。だから、そういう世界に飛び込みたい人は日本人であれ何人であれ、英語圏で博士号でも取って、英語話者として世界の知的エリートのコミュニティに突入していけばいい。日本語は、日本列島で話されるローカル言語として、独自の文化(とくにサブカルチャー)を育み、世界の文化の多様性に貢献すればいい。

だから結論は単純で、もしあなたが「世界を動かす」ことに関心があるなら、英語を死ぬほど勉強して英語圏でがんばりましょう。日本語しか知らないのなら、それはあきらめて、日本独自のものを伸ばすことに注力しましょう、ということかな。まあ別に日本人が無理に世界の枠組みを作らなくてもいいしね。多少、日本にとって不利なことはあるかもしれないけど・・・。

KoshianXKoshianX 2009/06/21 20:40 いえ、逆なんですよ。梅田さんが叩かれてるのは英語圏についての認識ではなく、日本のOSSについての認識があまりにもひどいからです。
以前からMatzさんを「日本唯一のオープンソースプロジェクトリーダー」と言ってみたり、まるで日本のオープンソース運動が皆無であるかのような発言をしてるから叩かれてるんです。

その他については同意します^^;
英語人口の多さを考えれば日本語圏より才能がたくさん集まるのはしょうがないですよね。

ogijunogijun 2009/06/22 02:44 それは事実にしても、単なる言い間違いとか勘違いを訂正される以上の反応が起きてるようには見えますね。なぜこれほど激しい反応が起こるのか、ということ自体が興味深いです。

elm200elm200 2009/06/22 07:06 KoshianX さん、どうも。
>以前からMatzさんを「日本唯一のオープンソースプロジェクトリーダー」と言ってみたり
http://www.shinchosha.co.jp/foresight/web_kikaku/u138.html
「しかし日本人でたった一人だけ、世界中の人々が使うソフトウェアをオープンソース方式で開発したリーダーがいる。島根県松江市在住のまつもとゆきひろ(本名・松本行弘、一九六五年生まれ)である。彼が構想し、いまも日夜開発を続けるプログラミング言語「Ruby」は世界中に広がり、利用者は百万人にまで膨れ上がろうとしている。」
のことですかね。たしかにこれは明白に誤りだし、ひがさんのような現場でこつこつオープンソースプロジェクトをがんばっている人がカチンと来るのは確かだなー。この点に関して梅田氏は訂正なり言い訳なりすべきでしょうね。ここらへんの話が降り積もって、日本の OSS 活動家たちに反感を持たれるに至ったという背景は理解できました。

これから先は推測ですが、まあ、アメリカから見るとそう見えてしまうということなのかな・・・。こういうこというと怒られるかもしれないけど、現状、やはり、オープンソースプロジェクトは、質・量ともに欧米が圧倒的にすぐれているのは確かだろうし。もちろん、日本に存在しないというのは明らかに間違いでしょうが。実際 Ruby 以上に成功したオープンソースプロジェクトが日本にありましたっけ?日本人が作ったライブラリの一部のファイルとか、デバイスドライバとか、それが何百万もコピーされて世界中に存在するということはあるかもしれませんが・・・。

KoshianXKoshianX 2009/06/22 15:54 俺の知る限りだと、grubなんかは日本人作でいまやx86 Linuxの標準ブートローダですよね。
w3mやEmacs-w3mも意外と海外の愛用者も多いようですね。Wanderlustも英語のログが割と流れてた記憶が。
うちの日記でも紹介しましたが、X Window SystemでTrueTypeフォントを使えるようにしたX-TTも日本人の手によるものだったはずです。今は別のものに取って代わられましたが、先駆者ではありました。

ざっと見渡しただけでもこれくらいの成功事例はあるんですよ。
ただ皆さんがおっしゃるように、OSSの場合国籍はほとんど重視されない上に、commiterの国籍も様々なので、作者がどこの国籍かとかあんまり意味がなかったりするんですよね。
gitも作者はLinusさんですが、今のメンテナは日本の方ですよね。でも誰も日本人だなんて意識ししてない。
むしろLinuxくらい有名にならないと作者どこのだれよにならなくて知られてないというのはけっこうあるんじゃないかなと思いますねえ。

ogijunogijun 2009/06/23 16:33 そういった個別の事例を出し始めるともちろん枚挙に暇がないのはたぶん皆わかっているのですが、一方でやっぱ質量ともにアメリカの方が圧倒的、ということをちゃんと肯定して書いてる記事は酒井さんのくらいしか見かけなかったような気がしますね。

bobbybobby 2009/06/30 12:24 コメント、有難うございます。

>日本語圏はひたすらサブカルチャーを掘り下げ、開拓発展させて、この面で世界中のオタクたちの尊敬を集めるリーダーとなる。

最近思うのですが、いまのリレーショナルデータベースやSQL構文の構造は、欧米的な合理主義的観点からはとても良いとおもうのですが、日本の企業文化をシステム化にするには向いてないのかもしれません。だれか日本人専用の、ボトムアップ指向、後付けや刷り合せが効率よくリレーションできる、まったく新しい構造のデータベースを作ってくれないですかね。

otsuneotsune 2009/07/08 22:21 >一方でやっぱ質量ともにアメリカの方が圧倒的、ということを

LinuxのLinusはフィンランド人だし、PythonのGuidoはオランダ人だし、オープンソースソフトを公的機関で導入するのが盛んなのはヨーロッパや南米だったりするから、国籍とか国民性でどうこう言う視点がそもそもそぐわないんじゃないかなぁ。

TJTJ 2009/07/19 20:19 僕は梅田さんが結構好きなんです(笑)、どうして最近よく叩かれているのかがわからなかったのですが、このエントリーで理解できました。

>「しかし日本人でたった一人だけ、世界中の人々が使うソフトウェアをオープンソース方式で開発したリーダーがいる。

こういう表現って英語ベースでは一般的なように思います。ようするに松本さんをより強調して紹介するが故の表現ではないのかな。誰かを紹介するときに one of the best~ っていうことってしょっちゅうですよね、別に本当にベストじゃなくても。
ちょっと大げさに言うことでその人を持ち上げる的な感じ。
聞いてる方も ああそうなんだ〜って感じですよね。そこを本当にそうなのか?という突っ込みはしない気がします。

la dolce vitala dolce vita 2009/08/05 22:05 すごく面白いので連続読みしています。
私も騒動のとき似たようなことを思ってこんなの(↓)書きました(自分のブログの引用ばかりですみません)。
http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/06/post-199.php

梅田さんが叩かれるのは、今の日本の一部で起っている愛国主義的な風潮に真っ向から対立している(ように見える)からだと思います(+アメリカへのコンプレックス。 たしかにベトナムやシンガポールだと若干叩かれにくいかも、笑)。
今は「他国から学ぼう」的なこと言うと、何でも叩かれるような風潮があります。

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