Hatena::ブログ(Diary)

elm200 の日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2009-07-11

[]日本的経営が社畜を生んだ理由


社畜とは、会社に強い忠誠心を持ち、私生活を犠牲にして、会社での労働を第一に置くような価値観をもつ従業員を揶揄する言葉だ。「社畜論」については、日本では定職を持たず、その後、オーストラリア修士号を得て、いまはシンガポールで会社勤めをする海外ニートさんのブログが面白い。(アクセスすると音が出るので気をつけてね)

先日、私は、「異なる文化をもつ人たちと働くということ」、「残業は恥だ」という日本の労働環境を批判するエントリを続けて書いた。私はかつてカナダのローカル企業で2年半くらい働いたし、その後も、韓国中国ベトナムなどに住んで、現地の人たちの働きぶりを観察する機会を持った。

とにかく、日本の職場の雰囲気や考え方は、海外の職場とは著しく異なる。しかも、北米(カナダ・アメリカ)の職場と日本以外のアジア(韓国・中国・インド・ベトナム)の職場の雰囲気は当然異なるものの、それでも日本のそれに比べると、両者は近いのである。つまり、世界で日本だけが突出して、特異な労働環境を持っているのだ。

その違いを言語化してうまく説明してくれている本を見つけた。その名も

アジア発 異文化マネジメントガイド

アジア発 異文化マネジメントガイド

著者の河合隆司氏は、長年、中国やアセアン諸国で、日系企業などに「異文化マネジメント」を教えてきた専門家である。アンケート結果から構成した、「アジアのマネージャー」対「日本人ボス」の架空のクロストークが非常に面白い。社畜がいわゆる日本的経営から直接派生するものであることが伺えるからだ。以下、長くなるが引用する。

「未来の描き方について」というテーマで、アジアのマネージャーは次のように述べる。

「期待・目的を明示してほしい」


目標数値だけでなく、達成する上でなすべきこと(requirements)、何をしてほしいのか(expectaction)、進もうとしている方向や目的(purpose)を言ってください。ハウツーや細かい手順はもういいのです。


日本人はゴールをもっていないと、諦めている人もいます。


私たちマネージャークラスであっても、何も言われないで自分でゴールを見つけることには慣れていないのです。


また社長は企業文化を浸透させて、ミッションの共有化をさせることに集中すべきですよ。


これに対して、日本人ボスは次のように答える。(クロストークなので、当然話がかみ合っていない)

「社長のつもりで考えなさい」


はっきりした指示を出す工夫はしたいと思う。しかし指示が来るまで待つのではなく、自分は何をすべきか考えるのがマネージャーの仕事だと思う。物事の全体像を俯瞰し、一段高い視点から判断できるようになってほしい。自分の狭い責任範囲にこだわり会社全体の視野を見過ごさないように。


部門全体の利益、動きに敏感になって、幹部と一緒に会社を引っ張る牽引役になってほしい。


経営者の立場に身をおいてすべての判断をしてほしい。


いやあ、すごいな。こういう日本人ボスっているよね。海外ニートさんなら、典型的社畜として切って捨てられるだろうな。あと、IT 受託開発のお客さんって、大抵こういうことを言っているような気がする。

・「経営者の立場に身をおいてすべての判断をしてほしい」
日本的経営の本質を突いている。従業員一人一人が経営者のつもりで会社に参加すること。質問するのではなく、察せ。技は教えてもらうのではなく盗め。なぜ社畜たちが自分たちの地位が低くても、周囲に経営者視線で、過酷な長時間労働を押し付けてくるか理解できる。

・「自分の狭い責任範囲にこだわり会社全体の視野を見過ごさないように」 
日本企業が「責任分担」を軽視するのはこれが起源だったのか。各人の責任範囲というのはあってなきが如し。いざ緊急事態になれば全員総出で対応するのは当然、というわけだ。本当の緊急事態ならまだしも、客のちょっとした気まぐれ程度の要求にも同じように対応するから、「付き合い残業」が減らないのだな。

日本人ボスは「24時間会社のことを考えろ。経営者の立場に身をおけば、自分のやるべきことは見えてくるだろう。だからあえて細かい指示を出す必要はない」と考えているのに対して、アジアのマネージャーたちは「自分は会社の中で一機能を果たすのに過ぎない。よりよく機能するためには、上司が明確なゴールを設定する必要がある」と言っているのだ。

ちなみに欧米企業でもマネージャーの考え方は、アジアのマネージャーたちとほぼ同じである。彼らにとっては、上司からの命令が全てであり、会社全体のことはあまり考えない。そして、自分の責任範囲だけを果たせば十分だと考えている。

一見、日本人ボスのいうことは、経営者にとっては理想的にも見える。ただ問題なのは、「経営者の立場に身をおく」というのが、単なる精神論に終わってしまう可能性が高いという点だ。そもそも、組織のヒエラルキーの下の人間には、組織全体を俯瞰できるような情報が与えられていない。その中で「経営者のように行動しろ」と言われれば、無限の長時間労働を以て応えるしかないのではないか。

また、地位の低い社員たちは、報酬が少ないのに、報酬の高い経営者と同等に働けということ自体に無理がある。終身雇用年功序列制度では、若いころは仕事はきついが給料は安く、中高年になって仕事が楽になるにも関わらず給料が高いという形で従業員を報いる。もし終身雇用制度が崩れたら、若い人たちが重労働する動機がなくなってしまうのではないか。

やはり、この日本人ボスのような考え方は、終身雇用・年功序列制度の中でだけ、有効であったのではないか。残念ながら、外部の価値観の異なる人たち(専門家や外国人など)と協同作業をするのに、この考え方ではうまくいかないのではないか。

(おまけ)ソフトウェア工学的に日本的経営を見る


欧米的な経営(アジアもそれに準じる)では、各従業員の部門の責任および相互のインターフェイスは、明確に定義されている。各従業員や部門は、クラスのような形でモジュール化されていて、実装は隠蔽されている。そして、多数のモジュールが疎結合することによって、全体が機能している。

日本企業では、各従業員や部門の責任および相互のインターフェイスが明確に定義されておらず、モジュールのプライベート変数を互いに参照しあっている。つまりモジュールが密結合している。このことが、業務フローの見直しやアウトソーシングの妨げになっているのではないだろうか。

ソフトウェア工学では、疎結合は密結合より望ましいとされている。疎結合では、インターフェイス部分で一定のオーバーヘッドは生まれるが、その代わりモジュールを独立したパーツとして取り扱うことが可能なので、コードが単純化され、保守性が向上する。つまり、コードを書き換えることが容易であり、仕様の変化に対して強くなるのだ。

ここらへんの話をもっときちんと考えると面白いかもしれない。

774774 2009/07/11 23:04 和魂と洋才と「会社」の仕組み
http://workhorse.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-2bbf.html
和魂と洋才と残業したい人々(上)
http://workhorse.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-bac7.html
和魂と洋才と残業したい人々(下)
http://workhorse.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-207d.html

更紗更紗 2009/07/12 07:30 人事管理すらアウトソーシングする時代に日本企業の擦り合せ型は対応できないでしょうね
まあ解決方法は思いつかないんですけど

通りすがりの社畜通りすがりの社畜 2009/07/12 12:55 日本企業の考え方は基本的に経営層輩出のためのスキームですよ。一般社員や中間管理職に「経営層と同じことを求める」のは、それ自体が予行演習であり、幹部候補生の抽出過程なわけです。
経営層にならない人や通常業務においては非効率的な部分もあるでしょうが、まあ覚悟の上でしょうね。

通りすがり通りすがり 2009/07/12 18:28 日本でプログラム工学が発達しない理由もまさにこれで、
責任分担が明確になっていない、もしくは
責任分担表では確かにこうなってるけど、経営という一段高い視点から俯瞰すると
その分担表では収まりきらないことのでみんなで決める
というような仕事の方法で仕事をしている
ミスが起きたときに損害が低く抑えられるという点がいいところではあるが、
環境が変化したときに損害(手に入れられるはずだった利益を含む)は非常に大きくなる

ttakaottakao 2009/07/12 20:14 そうですかねー、ちょっと違うように思いますよ。
数社、転職してますけれども、日本の会社で「経営者になったつもりで」なんて聞いたことないです。しばしば「ひとつ上のランクから見てほしい」とはいいますけどね。ま、建前の議論はどうでもよくて大事なことは日本ではいろんな建前をいろいろ言いますが、所詮、会社全体のことなんて誰も考えてないし、なんとか責任を他人に押し付けようとしか思ってないでしょう。だから「ここは俺の責任でやる」っていうプロフェッショナリズムが皆無。
残業は逆で、社員を減らし派遣を減らし、本当は訴えないといけないくらい人がいないのが今の現実です。
もう、つきあい残業やってるどころじゃないです。死人、鬱病、バンバン出ている現実を見ましょう。

さて上で通りすがりの人がいってるのはまったく違ってると思います。責任分担は明確です。いつもなすりあいですよ?
それよりも「プログラム工学が発達しない」のは、プログラマーがバカにされ、いいプログラムを書いても誰も評価しない。売った人が偉くて、インプリする人はクズなんです。だからゼネコン構造。こんな世界で誰がコンピュータサイエンスなどの進歩に貢献するものですか。結果、メジャーなソフトウェアは全部、輸入品が現実です。

加納加納 2009/07/13 00:44 >「自分の狭い責任範囲にこだわり会社全体の視野を見過ごさないように」 

ってのはときたまいるような気がしますね。
ただし、似非SIer、例えば二次受けSIer限定なのかもしれません。
SIerでどっか限定してたら仕事になりませんし。

そういえば、最近「社畜」の存在を見ないなぁ。
-「本当に」いない
-もはや自分が見ないことにした
-自分がまんま「社畜」
のどれだろ。

最近は給料低下傾向が明らか(去年と同じということは下がってるのと同じ)
なので、明らかな社畜は少ないと思うのですがね。

今いる会社がおかしいのかな(苦笑)
コンピュータ系の会社だけど「会社のため」っていうのは
「文系」の社員だけだ。事務とか営業とか。

技術系社員はそもそも会社に来てなかったりするし。

あまり関係ありませんが、ひとつ上の人は自分が書いたのかと
記憶を疑ってしまいました。。。

relax_arelax_a 2009/07/13 17:39 「IT 受託開発のお客さんって、大抵」というが、「大抵」って言葉には理由ないよね。愚痴なの?

ゆきゆき 2009/07/13 21:58 >「自分の狭い責任範囲にこだわり会社全体の視野を見過ごさないように」



「自分の責任回避にこだわり社会全体の視野を見過ごさないように」

と日本人ボスへ投げ返したいですね。

マックイーンマックイーン 2009/07/14 11:18 我々は日本人だから
日本型経営の長所も短所も知っていますよね。
まあ短所ばかりを指摘してしまいがちだけれど、
長所もたくさんあります。
で、隣の芝生は・・ってな感じでアジア的、アメリカ的経営の長所ばかり伝わってきますが、
当然現実は短所もあるでしょう。
そもそも国民性も日本人だけ世界的に異質ですし。

しかし終身雇用が社畜を支える屋台骨だったことは間違いありませんね。
バカな経営者どもがアメリカ的経営の良いとこ取りをした結果、日本型経営の良さは失われてしまいましたね。
資源も土地すらもない日本を支えていたのは終身雇用をエサに奴隷のように働いてくれる社畜だったのかもしれません。

みはらしみはらし 2009/07/14 19:59 一人一人が経営者の立場になって考えて欲しい。。某外資系企業のフランス人上司が言っていました。
>欧米的な経営(アジアもそれに準じる)では、各従業員の部門の責任および相互のインターフェイスは、明確に定義されている。各従業員や部門は、クラスのような形でモジュール化されていて、実装は隠蔽されている。そして、多数のモジュールが疎結合することによって、全体が機能している。
も行き詰まってきているのだと思います。日本式でもうまくいかないし欧米式でもうまくいかない時代が来ていると思いました。
(と私は外資系的経営を見て思った次第です)

nonamenoname 2009/07/21 03:47 >組織のヒエラルキーの下の人間には、組織全体を俯瞰できるような情報が与えられていない。

この突っ込みはいいところをついている、と思いました。


>経営者の立場に身をおいてすべての判断をしてほしい。

ある程度の権限が与えられている、という前提で言えば、
これだけだと
次期経営者を全社員の中から育てる、という風にも
自分の仕事を押しつけて楽しよう、という風にも
取れますね。
権限を与えていない場合は、言い方はきついですが
経営者が社員に甘えすぎでは?と思われても当然、
という感想を持ちました。

kenshokensho 2009/08/03 12:37 >「社長のつもりで考えなさい」

言いたいことは分かるけど今の制度下ではフェアじゃないですよね。

全員が社畜スタイルを強制されるのではなくて、

・経営者志向の人
・専門職(プロフェッショナル)志向の人
・ただ生活できればいい人

など、個人の希望する働き方をフェアな契約で選択できるような社会がいいな。

ククリットククリット 2009/11/07 01:06 はじめまして
>>774さん
馬車馬さんの話はいつもミクロ視点に欠けてませんか
漠然とした精神論しか語れない管理職を思い出させるので私はあまり好きでないです

>そうですかねー、ちょっと違うように思いますよ。
私はCa**n系列のITソリューションに居ますけど、広い視野に立ってとか責任分担をあやふやにするような価値観は良く聞きますよ。
個人個人が仕事をマネージメントするって気持ちも希薄で、まだまだ社畜文化花盛りって感じがします。
情報も報酬も判断材料も与えずに漠然とイメージで「広い視野に立て」ってのは私にはその時点で「経営者の視点に立て」と大して変わらないと思いますね。
そんなことを要求するならそれなりの地位と待遇を寄越せと。

mamanmaman 2009/11/26 09:23 nonameさんの意見に賛成です。結局、どちらともとれる発言を今の経営者は言うんですよね。
そして失敗したとき、都合のいい解釈を選択して「私はこういうつもりで言ったのに…」と逃げを打ちます。
最低です。

>権限を与えていない場合は、言い方はきついですが
経営者が社員に甘えすぎでは?と思われても当然

本当に同感!
社長として会社をどう動かすかの指標をだす義務を怠ってるんですよね。
A、B、Cという部署があって、Aという部署をのばしBとCを縮小しますと発表したら、
当然BとCの部署からは批判を受けると思います。その批判を受けたくないんですよね。
さらに言えばBとCの部署の人が「それなら退職します」と言われたとき、会社都合の退職にしたくないんですよ。
残業も同じですよ。経営者が「残業してほしい」と言えば残業費が発生するので、「全体を考えて」とかで無言で残業を強要してるんですよ。
自分のことだけでなく会社全体を考えることについては悪い事ではないと思います。
しかし、それに寄っかかった経営者の傲慢が多すぎです。

botbot 2010/01/22 20:48 アジアのマネージャーが単純化しているのに対し、日本人ボスは体裁を言っているんですね。
単純化は強力ですが、体裁の拘束力も重要だと思います。

エギヲエギヲ 2010/02/09 00:23 経営視点を求められる割には、日本にはサラリーマンばかっかで、起業家、経営者が少ないのはなぜだ?

エギヲエギヲ 2010/02/09 00:23 仕事で経営的名視点を求められる割には、日本にはサラリーマンばかりで、
起業家、経営者が少ないのはなぜだろうか…。

権左衛門権左衛門 2010/02/11 11:08 「社長のつもりで考えなさい」というのは、
自分の会社の事を=社長=として考えると
【責任のなすりあい】。。。という事がうまれる余地を生むかもしれませんが

【地域】の中の会社の社長
または、=長い時間の積み重ねの中で成立している会社=
という存在の中での【社長】として考えろ!!!という事になると
【責任のなすりあい】と言うのは難しくなってくるのでは。。。?

つまり、【会社】が健全発展するかどうかが
【地域全体】の=幸せ=に直接関わってくるという事になると
【責任のなすりあい。。。】という事をしていられなくなるのでは。。。?

もっとも、その様な【感覚】は、
いくら教えても=情報や権限=を与えても
【素質】がない者には、到底判らないし

下手をしたら情報や権限を与えたら【判ったようなふりをして】
自分の【利益】だけしか求めないという結果になり
ひいては、【会社】の存亡も危うくなる。。。という事になってしまうのかもしれません。。。

その様な弊害を極力除くためには
【株式会社】等にして
【株主の利益・意見】と言う物を入れる必要があるのでしょうが。。。

去年のあまりにも【株主の利益】を求める事で
=金融恐慌・リーマンショック=等を招いた事を思うと
之からは、
【理想主義的】かもしれませんが
かつての=日本式株式会社=と言う物を検討する事も必要なではと思います。。。

小僧小僧 2010/08/30 18:18 たぶん、上司と部下の両者の言い分はどちらが正しいか、白黒付くものではないような気がします。
例えば、完璧にミッションを明確にしまうと、組織全体が「お役所仕事」になってしまい、将来は衰退していくかも知れません。

私なりの解決法として、「経営者コース」と「従業員コース」に分けると良いのかも知れません。
指示通りのルーチンワークが得意な人もいれば、創造的な仕事が得意な人もいますし、
経営者視点で見れる人もいれば、従業員視点で見れる人もいると思うのです。
個人の意見と、上司の判断で、従業員それぞれに良い方向でキャリアアップが出来るシステムがあればと考えます。

・・・というのが理想なのですが、現実は厳しくコスト削減(とくに人件費削減)で、従業員満足の実現より現状維持が精一杯の企業が殆どではあるかと思いますが。

はてなユーザーのみコメントできます。はてなへログインもしくは新規登録をおこなってください。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/elm200/20090711/1247288309