Anthology vs. Archives:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、18日目。


Day 18: Jonas Mekas

Thursday Jan. 18th, 2007 12 min. 5 sec.

Anthology Film Archives,
what is it? Today I'll
give you a special tour,
I'll show you the
Cathedral of Cinema--

Anthology Film Archives
それは一体何か?今日は
特別な旅を提供しよう。
映画の大聖堂--
をお見せしよう。

「Anthology Film Archives」とは不思議な名前である。普通、「映像博物館」とか「映像資料館」と日本語に訳される。確かに、1970年に開設した時の「宣言manifesto」には「the first film museum exclusively devoted to the film as an art」と書かれていて、映像博物館と言ってもよい意味合いはある。また近年デジタル技術の進歩によって、さまざまな分野で歴史的資料等の電子アーカイブ化が進められ始め、アーカイヴ、アーキヴィスト(Archivist)という言葉も流通し始めているので、「あのアーカイヴか」と思われる節もある。

しかし、「Anthology Film Archives」という名称のポイントは「Archives」以上に「Anthology」にこそある。70年の「宣言」と並ぶ文書に「THE ESSENTIAL CINEMA Repertory Collection」がある。そこでは、Anthology Film Archivesは「THE ESSENTIAL CINEMA」を選び、収集し、できるかぎり最適な状態で保管し、できるかぎり最善の状態で見られることを目指すという、映画界のエスタブリッシュメントに対する批評的な位置づけについて書かれている。つまり、いわゆる商業主義的な映画に対する批評がそこには含意されている。

その「ESSENTIAL」、「本質」を見極める批評的な眼によって、「美しい花を見分け摘んで花束を作る」ような、生きた人間的な仕草、ヴィジョンが、「Anthology」という言葉には籠められているはずだと私は強く感じている。そして、批評的な意味で、本質的な映画だけが、本当の映画の大聖堂としてのAnthology Film Archivesに保護され生かされる。したがって、時としてメカスは本質的な映画をcinemaと呼ばずに、filmsと呼ぶ。

なお、今日のFilmでも紹介されているが、79年にマンハッタンに移設して現在にいたるAnthology Film Archivesの建物には、上映用の劇場が二つ、参考図書室、フィルム保管区画、複数の事務所、ギャラリー等が併設されていて、フィルムだけでなく、参考図書室には膨大な紙資料(世界中の映画関連の定期刊行物や書籍)も収集、保存されている。全体の雰囲気は博物館や図書館からはほど遠い、システマティックなアーカイブに対する批評そのものであるような有機的な迷宮のようである。膨大な「記憶」への引き出しが新旧多様に設けられている。紙の図書カードも健在のようだ。

また、Anthology Film Archivesに収蔵される「本質的な映画」は、「new independent/avant-garde films 」、新しい独立映画、前衛映画、あるいは実験映画であるといわれる場合があるが、「独立」、「前衛」、「実験」は単純には定義できない。評価の軸自体が時代状況によって変化しうるからである。ただ、メカスは以前から例えば完全に産業化しているハリウッド映画(cinema)には批判的である。