朝、家を閉め出された


札幌、快晴。無風。気温零下数℃。空気はやや冷たい。

今朝も白樺の白さに目を奪われる。

頭上から大気を割く音が聴こえてきた。思わず見上げると真っ白な飛行機が南西方向に向かっていた。北にある丘珠空港から飛び立った小型旅客機だろうと思った。美しい。

昨日、正体不明の縄製のポットのようなものを記録したが、ひとつ嘘、事実誤認があった。同じ物が二つと書いたが、実はもうひとつは全く異形だった。なんと蓋付きだった。他人の家の庭にカメラを向けることに躊躇していたせいか、目には入っていたはずなのに、ちゃんと観察していなかった。それににしても、中には何が入っているのだろう。もしかして、カラス除けになるような薬だろうか、などと想像した。

タンポポ公園のエゾノコリンゴの樹には太ったツグミカップルが二組飛来していた。雀より一回り大きい。盛んに歌っていた。

車道は乾き切っていた。春、四月の景観。

トウキビ畑の根雪の表面がダイヤモンド・ダストのようにきらきら輝いていた。

***

散歩から戻ったら、閉め出されていた。慌ててうっかり鍵を持たずに散歩に出た後で、娘が外出してしまったのだった。妻は用事で実家だ。私は鍵はおろか、携帯電話もお金も何も持っていなかった。家のすべての扉と窓にはちゃんと鍵がかかっていた。どこからも入ることができない。まだ朝飯も食ってない。今日は会議もいくつか入っている。やばい。泥棒のように色々試したが無駄だった。仕方なく、隣家で電話を借りて、なんとか出掛けた娘に連絡を取ることができて、至急帰宅するよう要請した。娘が帰るまでの2時間余り、寒空の下、体が冷えないように、ちょっと気になっていた家の前の氷と化した根雪をツルハシで割り、家裏の物置に通じる固くなった根雪をスコップで掻いた。やれやれ。また腰が重たくなった。

私はどこに?I Wish I Knew:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、57日目。


Day 57: Jonas Mekas

Monday February. 26th, 2007
6 min.

At Mars bar,
1st Street & 2nd
Avenue, good old
friends meet
for a drink.

マーズ・バー
古い親友と会い
飲む。

古きニューヨークの最後のダイブ・バーとして有名な、今にもつぶれそうな、どこかなげやりな風情が好ましいマーズ・バー。止まり木のようなカウンターに三人の男が言葉すくなにグラスを傾ける。一人が今や懐かしい古めかしいジュークボックスで選曲している。するとコルトレーンのバラッド"I Wish I Knew"が流れ出す。甘く切ないサックスの音色が店内に満たされる。そんなに語ることはない。酒を酌み交わしながら、脳裏に蘇る過去を現在に重ね合わせる時間が三人の中で並行して起こる。別々の想起だが無関係ではない。お互いに深々と感じ合っている。言葉はもう要らない。ときどき乾杯するだけでよい。メカスのささやくような言葉に驚いた。「私はどこにいるんだ?分からない。」(涙腺がゆるむ。)

"I Wish I Knew"で検索していたら偶然思いも寄らないページがひっかかった。菊地成孔が作詞、編曲した同曲を木津茂理が歌う。ピアノは南博
I wish I knew(木津茂理)