ハイフンの誤用


校正中の原稿。本来は「Jonas Mekas, 1922–」と左右スペースなして半角ダッシュを使うべきところに、左右にスペースを入れてハイフンを使っている。

欧文組版上は、人物の生年の範囲、引用した頁の範囲、時間の間、複数の人名や地名の間を表すには、左右にスペースなしで「−」(半角ダッシュ、en dash)を用いるのが基本中の基本であることを最近再認識した。洋書を手当たり次第に数冊チェックしてみたが、そのルールは厳格に守られていた。どの本でもきちんと左右にスペースなしで「−」(半角ダッシュ、en dash)が使われていた。日本語では倍角ダッシュを使うのが基本ルールのようだが、日本語の本を手当たり次第に数冊チェックしてみた限りでは、実際には倍角ダッシュ波ダッシュ、そしてハイフンとまちまちであった。今まで私はそういう場合に、上のように、迷いながらも結局は悪い意味でいい加減に「-」(ハイフン)で代用していた。

記号としてのダッシュの概要はこちらで。

小林章著『欧文書体 その背景と使い方』(asin:4568502772)の61頁から62頁にかけて、半角ダッシュ(ダーシ)の使用法に関する詳しい解説がある。その中でなるほどと思ったのは、ハイフンとダッシュの明確な違いを示す次のような例だった。

Brown–Smith theory(半角ダーシの場合:ブラウン氏とスミス氏との二人が共同で唱える説)
Brown-Smith theory(ハイフンの場合:ブラウン=スミスという姓を持つ一人の説)
Barlin–Baden-Baden(半角ダーシとハイフンの併用の場合:ベルリン市とバーデンバーデン市との間)