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記憶の彼方へ

2008年03月17日

表(テーブル)は罫線が少ないほど美しい‽

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年末から年始にかけてある論文を書いているときに、自分で縦と横の罫線を引いて作った表にものすごく違和感を抱いた。色々と試行錯誤したが、違和感は解消しないまま、締め切りが来て、やむなくそのまま提出した。実は印刷会社の方でうまく修正してくれるだろうと甘い期待をしていた。しかし、戻ってきた校正刷りの表は私がワープロで作った表そのままだった。二回の校正をしているときにも、ずっと悩み続け、そもそも事象の分類に根本的な問題があるのではないかとまで考えたが、結局解消しなかった。

その後、書体や組版のことを調べ始め、色々と細々したことを気にして見るようになったせいか、ある時ふと日本語の本や雑誌に見られる表は基本的に私が作った表と同じであることに気づいた。つまり、縦と横の罫線がいわば律儀に全部引かれているのである。実際に三冊の本から典型的な表を挙げてみよう。これはあくまで組版上の問題であり、本の内容の評価とは全く関係ないことを念のためにお断りしておく。

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そこで欧文の場合はどうなのか気になって、ちょうど手元にあったイギリスの組版バイブル『ハーツ・ルール』の邦訳『オックスフォード大学出版局の表記法と組版原則』とアメリカの『シカゴマニュアル』で調べてみた。驚いた。縦の罫線がない‽ 横の罫線も少ない‽ しかもすっきりしていて美しい‽ 『オックスフォード』では「タテけいはなるべく省略する。たとえ上と下のヨコけいは多くの場合、残されるとしても、そのほかのヨコけいは最小限に用いる」というルールが銘記されていた(174頁)。省略できるものは省略する。余分なものは削ぎ落とす。省略の美学とでも言えようか。これだったのかと思った。今までも多く目にしてきたはずなのに、ちゃんと認識していなかった。

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オックスフォード大学出版局の表記法と組版原則』175ページ

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The Chicago Manual of Style 15th edition, p.503

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The Chicago Manual of Style 15th edition, p.509

罫線をできるだけ使わない表がこんなに美しいとは。気づくのが遅すぎた。

fuzzy2fuzzy2 2008/03/18 03:02 日本で表を組む場合、一般には最初の例のように縦横ともに罫線を表示します。特に、外側の線を太く、内側の線を細くするケースが目立ちます。
その経緯については三上さんの今後の記事に期待していますが(笑)、少なくとも日本語ワープロ専用機が開発される前の公文書に原型があると考えています。日本語ワープロ専用機の罫線機能はそれ以前に存在していたニーズによって付加されたものと認識しています。(たしかJISの機械製図にも、同様な表組の記法が規定されていますが、一般の公文書等でも使われている記法でした)
もしも出版社に欧文式の表組で原稿を送付し、かつ特別な指定を行わない場合には、最初の例のように縦横とも線を引く形式に直されることもあると思います。

PhoenixPhoenix 2008/03/18 08:56 理科系の書籍を担当することが多いのですが、執筆者は海外の学術誌に英語で論文を出す
ことが多いこともあって、つけられる表には三上さんのお写真のように、できるだけ罫線は
少なく組んでいることが多いですね。どれだけ線の数を減らせるかと競っている感じです
(多くの研究者が TeX テフ/テック を使っているからかもしれませんが)。
昔の活版時代と違い、レイアウトは比較的自由に設定できるので、「少ない罫線の方が
美しい」と出版社が決意したところでは、罫線は少なくできると思います
(カラーをうまく使えば罫線自体も不要かもしれません)。

PhoenixPhoenix 2008/03/18 09:14 追伸:現状でも縦線を全部取って表を組んで、最上部の罫線だけ少し太くしておいても、
ほとんど支障はないかと思います。ただ内容によっては、たとえば1ページ大のスペースを使って、
一見表の形式をとりながら、実際はなかに文章や項目をたくさん盛り込んでいる場合も
多いので、ケースバイケースかもしれませんが・・・

elmikaminoelmikamino 2008/03/18 11:23 fuzzy2さん

私は「日本語ワープロ専用機が開発される前の公文書」のスタイルと闘っていたんですね(笑)。さもありなん。面白いです。


Poenixさん

「表」も含めて、鈴木一誌の「ページ」の思想に刺激されて、空間を仕切る「敷居」の有り様という問題に逢着しています。鈴木氏も言及しているジェラール・ジュネットの『スイユ テクストから書物へ』の「スイユ」もフランス語で「敷居」の意ですが、日本は建築では見事な敷居の文化を持っていたのに、印刷出版の世界ではそれが充分に活かされてこなかったように感じています。ページさらにページが集積する本という一種の建築空間の内にどんな仕切りをどう配置するか。あるいはどんな敷居の束として本は出来上がっているか、そしてこのようなウェブ・ページの「ページ」で何が出来るか、興味は尽きません。