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三上のブログ

2011年11月13日

ガンジスの女の青い月

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マルグリット・デュラスの『ガンジスの女』(La Femme du Gange, 1973)の冒頭で女が歌う「ブルー・ムーン」が聞こえてくる場面は素晴らしい。


 旅人だ。

 広場を横切る。

 横切られた広場。

 旅人は川に沿っていく。なにも見ていない。歩む。進んでいく。川の泥の土手に騒がしく鴎が飛び交っている。川の水位はとても低い、海からそれほど離れていないのだろう。海鳴りが聞こえ始める。

 旅人は通り過ぎた。

 旅人は突堤を通っていく。海辺の家の前を通り過ぎる。

 遠くから女の声で、非常に小さく口ずさまれる歌。『ブルー・ムーン』。一九三一年のブルース

 旅人。まだ歩き続けている。(亀井薫訳、15頁〜16頁)


まだ観ぬ同名の映画(1972年)の中では、ジェラール・ドパルデューが「 ブルー・ ムーン」を口ずさんでいるらしいが、そもそもこの場面にふさわしい歌声は誰のどんな声だろうか、と声の記憶をまさぐっていた。ビリー・ホリデイ(1915–59)の灰汁の強い声ではないな。チェット・ベイカー(1929–88)の「ブルー・ムーン」を聴いてみたかったが、私の知るかぎり彼はこの曲をカバーしなかった。自分でもちょっと意外なことに、物憂く甘ったるい歌声のエルヴィス・プレスリー(1935–77)の「ブルー・ムーン」(1954)がなぜかふさわしく思えてきた。


D

Blue moon,

You saw me standing alone,

Without a dream in my heart,

Without a love of my own.

Blue moon,

You knew just what I was there for.

You heard me saying a pray for

Someone I really could care for.


Oooo, ooooo, oooooo, ooooooo

Without a love of my own

Blue moon,

You saw me standing alone,

Without a dream in my heart,

Without a love of my own.

Oooooo, oooooo, ooooooo

Without a love of my own

Blue moon...

Bluue, whaaa

Without a love of my own.

Oooooo, ooooooo

mmmmmmm


日本では長らく未公開だったマルグリット・デュラスの映画『ガンジスの女』(1972年)は2009年に初公開されたが、見損なった。


参照

鴨々川の錦鯉

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ニシキゴイ錦鯉, Japanese carp, Cyprinus carpio carpio)。左岸にはイロハ紅葉野村楓、蝦夷紅葉右岸には銀杏北海道札幌市中央区南8西3、鴨々川(かもかもがわ)

神遊び、毛遊び

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このアルバムは、2008年1月に宮古島市西原で録音された、当時平均年齢九十歳のおばぁトリオ、高良マツさん、長崎トヨさん、村山キヨさんが歌う神歌が元になっている。現地の多くの人の協力を得て行われた録音への立ち会いをはじめとして、その後の編集、そしてアルバム製作の全般を担った久保田麻琴氏は、沖縄WEBマガジンryuQのインタビュー記事のなかで、宮古の神歌について、「神歌は沖縄民謡島唄とも違う深い響きがあります。天に捧げられる歌の強い響きと云っても良いのではないでしょうか」と述べている。また、現地での録音にまつわる次のような大変興味深いエピソードを披露している。


 宮古島の西原地区の高齢の方々に唄っていただくということで、出来るだけ近場で録音を行いたかったのです。地元のひよどり保育園の園長先生が協力的で、場所提供や演者との間のコミュニケーションなどに多大な助力をいただきました。

 しかし何より、おばぁ達自身の決断が無かったら最初からありえないことでした。平均年齢90歳の3人の歌い手は、6時間以上も床に座って唄い続けてくれました。

 薄暗くなって、神唄をひととおり唄い終わった後でも、「これを唄わなければやめられないさ」と云い、(彼女らいわく)“若い男女のロマンスの歌”といって毛遊びの歌で楽しくしめてくれたのが、素晴らしく印象的でした。

 「沖縄・宮古の神歌」(久保田麻琴と沖縄を結ぶ30年)(沖縄WEBマガジンryuQ、2008年07月29日)より


「神遊び」の最後が「毛遊び」で締めくくられたという、アルバムを聴くだけでは分からない、生身のおばぁ達の途方もなくおおらかなエロスとユーモアが伝わってくる痛快な話である。


参考までに、このアルバムに付された小冊子に掲載された二人の宮古民俗研究者による宮古の神歌に関する解説からごく基本的な知識に関する部分を引用しておく。


 宮古島には実に一千以上の御嶽(ウタキ)がある。御嶽は神々が君臨する聖なる場所、集落によって様々な神々を配置して造られていった。集落では年間を通して少なくとも三十以上もの行事が展開される。神歌は御嶽で展開される神祈りの場で歌われ踊られる。その神歌は集落によって相違があり展開の仕方も様々である。神歌は集落で祀る神々を唱える、崇べる、鎮める、供物をひろげ祈りを告げる、等々の事柄が盛り込まれる。しかし、神歌は御嶽だけでなく様々な場で展開される。各家々での御願、集落の人々の集まる場、こうした所では神アシビ(遊び)が主体をなす。カミアシビには霊魂を鎮める祈りが歌われたりする。島の英雄を歌い上げる、悲しい運命を遂げた人の死を悼む等々と、そのジャンルは豊富である。

 佐渡山安公「宮古島と神歌」より


 古代、世界各地では暦のほとんどが太陰暦だった。日本もその例にもれず、明治5年12月まで太陰暦(旧暦)が用いられていた。沖縄の伝統的な行事や祭祀は、現在でも旧暦にのっとって行われている。

 沖縄県宮古諸島の各集落の伝統的な信仰生活は、ウタキ(御嶽)・ムトゥ(元)という聖域を中心に実施される儀礼を窺うことにより、その大要を知ることができる。宮古島市西原もその例外ではない。御嶽は普段でも男子禁制の地である。聖域であるウタキやムトゥなどにはカン(神)が鎮座する。その御嶽の神に向かい、唱えたり歌ったりする歌謡を広義の意味での「神歌」という。西原には村落レベルの御嶽が九つあるが、それらの御嶽などで唱えたり歌ったりする「神歌」や家庭で歌われる「神歌」が存在する。

 上原孝三「沖縄県宮古島市西原の神歌」より


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