小林東さんとの対話

先日十年ぶりに訪れた釧路の‘This Is’で小林東さんと交わした対話の記録。小林東さんの乾いて温もりのある声と陰影に富んだ語り口に魅せられて耳を傾ける度に、それまで気づかなかった大切なことに気づくということが起こっている。



舞踏家大野一雄(1906–2010)の気配が色濃く漂うThis Isで、大野一雄を敬愛する九州の花師中野正三さんに花を生けてもらえたらどんなに素敵だろうという願望を語ったら、小林東さんは大野一雄が踊った釧路湿原ヤチボウズ(谷地坊主)をあしらった作品なんか、いいかもしれないね、二階の百歳座で華道展を開いてもいいし、と応えてくれた。



2005年大野一雄99歳の誕生日に大野一雄宅でジョナス・メカスに出会った時のことを伺う。大野一雄が亡くなる直前に病で急逝した写真家吉田隆一(1952–2010)の『Dancing Kazuo Ohno』(2011年)を見せていただく。小林東さんがThis Isを始めた理由(「人生の一頁」)について伺う。大野一雄百歳にちなんだ二階の小劇場「百歳座」の設立(2006年)の経緯について伺う。2009年1月21日(大寒土方巽の祥月命日)から一か月間開催した細江英公鎌鼬』40周年展について伺う。




細江英公の写真集『胡蝶の夢』(2006年)、大野一雄が舞踏家になるきっかけを作ったアルゼンチン生まれのスペイン人フラメンコ舞踏家ラ・アルヘンチーナ (La Argentina, 1890–1936) の初来日公演(1929年)を録音したSP盤4枚(8曲)と彼女を特集したカタログ『LA ARGENTINA』(New York, 1935年)を見せていただき、SPをCDに焼いた8曲を聴かせていただく。カスタネットの音、ラ・アルヘンチーナの歌声が濃霧のようなノイズの彼岸から明瞭に生々しく聞こえて来た。「ただ古いから好きとかいいとか言うんじゃないんですよ。これも正にライブなんです。今ここにラ・アルヘンチーナが現れているんです」という小林東さんの言葉が深く印象に残った。



吉田隆一写真集『Dancing Kazuo Ohno』(かんた、2011年)をパラパラする。