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書き抜き帳

2007-07-13 「ばらいろの雲」ジョルジュ・サンド作 杉 捷夫訳

 「ええ、ええ、」と、思わずカトリーヌはさけびました。「おぼていますとも、わたしはおまえをエプロンの中へ入れてあげたよ! おまえはわたしの小さなお友だち、ばらいろの雲です。今その文句が私にはわかります。かわいい小さな雲さん、おまえは少し気ちがいだよ。せっかく花のさいている、わたしのりっぱなリンゴの木を折ったじゃないか。だけど、わたしはおまえをゆるしてあげる! ほんとに美しいばらいろで、わたしはほんとはおまえがすきです!」

 雲は答えました。「わたしではありませんよ、カトリーヌさん、せっかく花のさいているおまえのリンゴの木を折ったのは。それは雷ですよ。わたしの胸の中にすまっている悪者で、こいつのおかげで、わたしは気ちがいにさせられてしまうのです。しかし、ごらんよ、おまえが親しみをこめてわたしをながめる時には、わたしはこんなにやさしく静かじゃないか! いつか、氷河のてっぺんへ来てみないかい? それは、人の言うほどむずかしくはないのだよ。それどころか、とてもやさしいよ。おまえがその気になりさえすればそれでいいのさ。それに、わたしがついているからね。おまえが足をふみはずしたら、わたしの上に落ちるさ。いたくないように、わたしが抱きとめてあげるよ。あすおいでよ、カトリーヌ、夜があけたらすぐにおいで。わたしはひと晩じゅう待っているからね。おまえがこなければ、わたしは悲しくて、大つぶの涙を流しますよ。そしたら、一日じゅう雨がふりますよ。」


ー中略ー


 「ええ見ましたわ、おばさま。おばさまとおなじくらい、じょうずに糸をつむいだ夢を見ました。ですけれど、わたしのつむいだのは、かわいそうに、わたしのばらいろの雲でした!」

 「いいかい、おまえに教えておくが、わたしはずっとむかしに、わたしのばらいろの雲をつむいでしまったのだよ。ばらいろの雲は、わたしのでき心、わたしの気まぐれ、いわばわたしの不運のことです。わたしはそれをじぶんのつむ竿にかけたのだよ。仕事が、美しいりっぱな仕事が、わたしのかたきを細い細い糸に仕上げ、もはやかたきをかたきと感じないほどになりました。おまえもわたしとおなじようになればいいのだよ。雲が心の中を通りすぎるのを防ぐことは、おまえにはできないけれど、勇気をたくさん、たくわえておけばいいのさ。雲をつかまえて、すいてやるがいい。つむいで、つむいで、おまえのまわりにも、おまえの胸の中にも、嵐を起こすことができないようにしてやるのさ。」


ばらいろの雲がばらいろの雲であるためのもの、についても決して忘れたくはないし忘れてはいけないことなのだろうけれども。と、だいぶオトナになった今だからこそしみじみ思いもするわけではあるが。でも、勇気をたくさんたくわえておく、ということは確かに大事なことにちがいない。とはあらためて思う。てゆーか、絶版なのは知ってたけどAmazonのリンクページさえないことに驚愕。これだから「子どもの頃に読んだ好きな本」ってなかなか手放せないんだよなー。てゆーか、とっておいてよかったよまったく。