BITCOINの費用対効果に関する考察

昨日のクローズアップ現代においてBITCOINが取り上げられていた。BITCOINに関して思うところあるので実に1年ぶりにブログを書く。

BITCOINはサトシ・ナカモトなる人物によって投稿された論文に基づいたピアツーピア型の決済網及び暗号通貨である。

昨日のクロ現においては、BITCOINのギャンブル性の高さ、マネーロンダリングや麻薬取引の温床となっている点など、ネガティブな側面を中心に取り上げられていた。
(ただ、番組で取り上げられたことで関心を集め、かえってトラフィックを増大させてしまったWinnyの例もあり、果たして番組制作者の意図が視聴者に伝わったかどうかは不明だが、これはまた別の話。)

番組においては不用意に射幸心をあおることを避けたためか、BITCOINのもっとも肝心な点が報道されていなかった。
それは「計算リソースを対価にBITCOINを得ることができる」という点である。パソコンで計算させ続ければ小遣いが稼げる、ということである。

本記事においては、多くのBITCOINのマイナー(計算を行うことでBITCOINを得る者)が使用しているグラフィックボードであるRADEON HDシリーズを例にとり、もっとも費用対効果に優れたモデルを選出することを目的とする。

図はRADEON HDシリーズのグロスの演算能力(GFLOPS)と、BITCOINの計算における単位である1秒間のハッシュ生成数(Mhash/sec)を比較したものである。
計算においては【スペック一覧】DirectX 11対応GPU仕様一覧表 - PC WatchおよびMining hardware comparison - Bitcoin Wikiを使用した。
GFLOPSとMhash/secの傾向はおおむね一致するといえる。また、グラフィックチップの世代ごとのゲーム用APIに対する最適化はマイニングにおいてはあまり影響しないと思われる。

図は単位価格あたりの演算能力を比較したものである。価格は1月20日における価格ドットコムの各エディションの最安値を使用した。
ハイエンド向けセグメントとエントリー向けセグメントにおいては値が低く、ミドルレンジにおいては値が高い傾向にある。
これは、ミドルレンジビデオボードが費用対効果において優れたいわゆるスイートスポットであるという、ゲーマーの世界における通説と一致する。
これは、ハイエンド向けが歩留りにより単価が高いこと、エントリー向けがビデオチップそのものよりもボードの生産コストが全体の価格に占める割合が高くなることが要因といえる。
この図においてはRADEON HD 7770GHZ EDITIONが最も費用対効果に優れていることを示している。

ではこの7770を使用した場合、どれだけの日本円が稼げるのか。
1.34Ghash/secで24時間計算した場合の対価を0.001BTC/day(話題のBitcoinを専用ASICで採掘したりアレコレして思ったこととか【コラム】 | TeraDas)、1TBCあたり98900円(http://satoshinakamoto.jp/?lang=ja)とした場合、1か月あたりの対価は471円。
対して7770の価格は8180円であり、これに加えて24時間計算させるためには電力もかかる。
つまり、現実的に考えてもとは取れないのである。

加えて、現在の計算の主流はグラフィックボードではなく専用のドングルやクラウドを使うことらしい。また、この専用ドングルを個人輸入して転売するほうが儲かるという話もあるようで、「いかなるギャンブルも結局は元締めが最も儲かる」という今更言うまでもない結論に至ったところで本文を締めたいと思う。