お知らせ
・第十四回文学フリマで「骨の折れる電子書籍」を販売しました。
・TVブロスの『ジョージ・ポットマンの平成史』特集記事に寄稿しました。
・竹内道宏監督、笹口騒音ハーモニカ主演の『新しい戦争を始めよう』に出演しました。
・世界初の新技術「AR水嶋ヒロ」の開発に成功しました。
・特撮ドラマ『神話戦士ギガゼウス』に出演しました。DVD発売中。
2010-06-17
「ドブスを守る会」について考える。
皆さんきちんと他人を馬鹿にできていますか? ちゃんと誰かを見下して自尊心を保ててますか? この世知辛い世の中、「あいつよりはマシ……」そう思わないとやっていけません。
だから、テレビに出てきた一般人の顔を馬鹿にするし、グラビアアイドルに「チェンジ」と言い、原宿のファッションスナップを嘲笑する。そうしなきゃやっていけないもんね。すぐに過労死よ。
でも……いま、重大な危機が訪れている。大変! 大変! 私たちが毎日享受している「他人をバカにする」自由が剥奪されるかもしれないんだ。
今、Googleの検索ワードランキングである一般人の名前が上位に昇ってきている。その人物は「ドブスを守る会」というものを主宰し、ネット上に作品をアップロードしていました。その作品に問題があるとして2ちゃんねるやTwitterで非難の的になっているんです。
首都大生「雑誌の撮影です。写真撮らせてください」→ブス詰め合わせ動画としてネットに晒しあげる
首都大生が 「ドブスを守る会」 と称して一般女性を動画撮影・公開
東京大、首都大生が女性をドブスと罵り執拗に付き纏う動画をうp→炎上
首都大生の「ドブス写真集」動画が騒動に 大学は事実把握、「大変遺憾」
内容を簡単に説明するとこう。「ドブスを守る会」の人間が街の通行人に「写真を撮らせてください」と声をかけていくというもので、「ブスを守る活動をしているんです」と話してその反応を撮影し、編集してYoutubeにアップロードしていた。もちろん、本人は嫌がってました。
件の動画自体は集中砲火を受けたことからすでに削除されています。モザイク入りの修正版がアップされているけど、ここではリンクしない。だって人の作品を勝手に加工して公開するだなんて、アーティストに失礼だよ。それにすごく下品だし。
一聴しただけでわかるけど、かなりえげつない企画。ここでの問題点は主に二つあります。名誉毀損であること。肖像権の侵害であること。ここら辺を中心に批判がなされているんだよねー。
どうも私にはこの騒動が他人事には思えなくて、いろいろと考えてしまっています。だって私たちは普段、様々なものを馬鹿にしています。有名人であったり、誰か知人であったり。そこには嘲笑を含むようなネタだって当然入ってきます。芸人にだって他人を馬鹿にしたような笑いはたくさんあるよね。それが一歩間違えると「ドブスを守る会」みたいに集中砲火を受けて死んじゃうかもしんない。
そこで「ドブスを守る会」とおんなじように他人を馬鹿にしたり傷つけたりしてるけど、オッケーとされてる表現について考えようかなと思う。私が思いついたのは以下の四つ!
(1)伊集院光のブスいじりネタ
(2)根本敬の一連の仕事
(3)サシャ・バロン・コーエンの『ボラット』
(4)chim↑pomの「ピカッ」騒動
以上の四つからなにがOKでなにがNGかを考えていきたいなーって感じです。
(1)伊集院光のブスいじりネタ
伊集院光は地上波のテレビ番組に出ているときは人畜無害なキャラだけど、深夜のラジオでは毒舌を全開にして軽快にトークしています。彼の話す内容のなかには「ブス」をネタにしたものは多いです。ブスを主題にした投稿コーナーだって、時々設けられてる。
ここでネタにされるのは主に「ブスを自覚していないブス」、もしくは「オシャレを気取っているブス」。ブスのくせにブスを自覚せず、まるで自分がオシャレさんかのように振舞うブス……その滑稽さや憎たらしさについて、大いにネタにされている。
これがOKな理由は何だろう? まず、明確に攻撃される一個人はいない(芸能人は別だけど)。みんなの頭のなかにある共同幻想──各々の人生ですれ違った、むかつくブスたち──がネタにされている。傷ついた人を目の当たりにして思わず湧き上がる「悲しい気持ち」がここにはない(悲しいよねー、ほんとに。特に自分が好感を持っていたりする人だと)。「ドブスを守る会」にはある。
それに深夜のラジオ放送ってところもある。単純に聞く人数が少ない。好きな人だけ聞いてよ、っていうのはマイナーなメディアの強みだ。ネットだと一度注目されるとたくさんの人がわらわらと集まってきて「これはひどい」と憤る人が現れる可能性もぐんぐん上がっていっちゃう。
そして、伊集院は「ブスを自覚しているブス」には優しい。とても優しい。「ドブスを守る会」は無差別だし、優しさなんて存在しない。えげつなさしかないよ、ここには。
(2)根本敬の一連の仕事
根本敬は漫画家です。でも、文章もたくさん書いている。そのなかにはルポルタージュと呼べるようなものもある。根本が出会った変な人の行動を、根本なりの視点でまとめたもの。ネットで使われる「ウォッチ」って言葉や行動様式が近いかもしれない。
食堂の中年女性に寄生する大学生、電波な内容のビラをばら撒くお婆さん、国際梅毒にかかったと言い張る韓国人。
根本は絵で、文章で、その生態をレポートする。不謹慎だと言えます。対象をバカにしているし、読者もその視点で作品を眺める。根本と読者には、悪意のある共犯関係が結ばれている。
ここでは伊集院とは違い、対象を明確に設定している。書かれる人間は確かに存在するし、当人が読めば酷く傷つくかもしれない。これがOKなのはなぜだろう? 実はよくわかんない。でも、考えてみる。
一つは描かれる対象が常人とは隔たった存在だからかもしれない。根本が題材にする人たちは、読者とは何かが違う、独特の思考・倫理空間にいると思わせられる。端的に言えば異文化人であり、根本の著書を読むことは異文化を知ることでもある。相手を少しでも理解しようという思いが、そこにはあるのかもしれない。いや、単におっかなびっくり、知的好奇心、ゲスな出歯亀根性の可能性も大いにあるけど。でも、実際に変人と触れ合うことになる根本にはその精神はあるんじゃないかな。対して、「ドブスを守る会」は単に相手をブスと突き放し、バカにして笑う根性しかないじゃん。
それともう一つあるのは、絵や文章で加工していること。それによって一つの芸になっていること。だから作品として受容できる。何だかよくわかんないけど近くにいるかもしれない変な人たち。それを知るための根本敬というテキスト。
(3)サシャ・バロン・コーエンの『ボラット』
サシャ・バロン・コーエンという人はイギリスの芸人さん。『ボラット』はその人のネタをまとめた映画。コーエンさんが「ボラット」というカザフスタン人に変装して、アメリカ文化を何も知らない外国人のフリをしてドッキリを仕掛けていく。これが見ててアハハ、ネタバレして本人安心、のような単純なドッキリじゃ、もちろんない。
コーエンが仕掛けるドッキリとは例えばこうだ。ガンショップに訪問。何も知らないフリをして店主のおっちゃんに色々質問する。「ユダヤ人を撃ち殺すにはどの銃が最適?」……おっちゃんはニヤリと笑って一つの銃を勧めてしまう。視聴者はそれを見ておいおい、おっちゃん何やってんだよ、って笑う。ドキドキする。
終始こんな調子。そして、ドッキリだというネタバレはない。この1シーンには色んなものが攻撃されていて、もうよくわからない。けど、そこに何となく社会的メッセージを見出すことはできる。まだまだ差別って根深いんだよー、みたいな。差別を成立させてしまう環境やら何やらが攻撃されてる。それをあぶり出してしまうコーエンはカッコいいな、とも思えたりするかも。
しかし、私にはもう一つあることを考えてしまう。それは日本と海外という距離。もし、コーエンと似たようなネタを日本でやったらどうなるだろう? ものすごい批判にさらされるような気がする。コーエンが批判に耐えてやり切ったのか、それとも海外がネタに寛容なのかはわからない。例えば、こんな光景を見たりする。外国人が顔出しで何かネタをやっていたらネタだけを見てもらえるのに、日本人が顔出しでネタをやっていると、容姿が馬鹿にされたりする。外国人だから、外国で行われているから批判が和らぐというのはどうもありそうだ。
(4)chim↑pomの「ピカッ」騒動
チンポムは現代アーティスト。渋谷のネズミを剥製にして黄色くピカチュウ風に着色した『スーパーラット』って作品が代表作らしい。ネット上では「ピカッ」が話題になった。広島の空に飛行機雲で「ピカッ」と落書きし、不謹慎だと騒がれた。批判が集中したことを受けて、チンポムは原爆団体に謝罪。その後も関係者と交流を続け、『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』という書籍にまとめました。炎上はしましたが、今も作品を作り続けています。最近だと美術手帖の『新世代アーティスト宣言』っていう特集で、トップバッターとして紹介されてたよ。
彼らが今もアーティストとして活動を続けられている理由はなんだろう? それは「やり切った」ことだと思う。工藤キキさんなんかは謝罪したことを「カッコ悪い」って言っていたし、私もちょっとそう思ったけど、でも、集中砲火を浴びながらもひとつの形として作品を完成させた。この姿勢は評価できると思う。
それともう一つ重要なのは、なんか社会的メッセージを読み取れそうなところ。渋谷のドブネズミとポケモン、広島の空と漫画的な擬音、なんのかの結びつけて色々言えそう。実際、チンポムの作品をネタにああだこうだ言っている評論家はいるし、そういった人たちが騒動のときに擁護にまわった。
「ドブスを守る会」にはやり切る根性と、守ってくれる仲間がいなかった。才能を擁護してくれる人が。
以上をまとめあげると、何となく線引きが見えてきたような気がする。誰かを攻撃する、傷つけるネタはどうやったらセーフになり得るのか?
(A)被写体を直接攻撃しない。もしくは絵や文章で加工する。
(B)あんまり日の当たるところではやらない。
(C)社会的なメッセージを読み取れるかのような感じにする
(D)多くの人が直接関係ない場所にいるであろう人を対象にする
(E)批判されてもとにかく最後までやる。
以上のポイントを抑えれば良いのではないでしょうか。「ドブスを守る会」に適応すればこうでしょうか。
ブスを題材にしていることを一切伏せて、むしろこれが新しい美だみたいなメッセージを出しつつ、あんまり人の来ない個展とかで写真を発表する。こんな感じかなぁ?
というわけで、「ドブスを守る会」さん! 今の姿勢を貫いて、心が折れるまで作品を作り続けてくださいね。もう折れてるかもしんないけど〜。
- 2714 http://www.google.co.jp/search?q=ドブスを守る会&hl=ja&lr=lang_ja&gl=jp&tbs=lr:lang_1ja,rltm:1&prmd=nl&source=lnt&sa=X&ei=evsZTKfyM4vfcayUyKAK&ved=0CAoQpwU
- 2481 http://togetter.com/li/29756
- 1836 http://www.google.co.jp/search?hl=ja&source=hp&q=ドブスを守る会&btnG=Google+検索&lr=&aq=f&aqi=&aql=&oq=&gs_rfai=
- 1533 http://ezsch.ezweb.ne.jp/search/?sr=0101&query=ドブスを守る会
- 980 http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&aq=hts&oq=&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4RNWE_jaJP310JP310&q=苫米地英人
- 980 http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4GGLL_jaJP352JP352&q=苫米地英人
- 831 http://www.google.co.jp/search?hl=ja&source=hp&q=苫米地英人&aq=0s&aqi=g-s1&aql=&oq=苫米地秀人&gs_rfai=
- 723 http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=ドブス&lr=
- 526 http://www.google.co.jp/search?q=苫米地英人+批判&ie=utf-8&oe=utf-8&aq=t&rls=org.mozilla:ja-JP-mac:official&hl=ja&client=firefox-a
- 406 http://www.google.co.jp/search?sourceid=chrome&ie=UTF-8&q=ルッキズム






