映画と人とわたし

2018-07-14

工藤栄一監督「十三人の刺客」1858本目

1963年の作品。
2010年版を見て「こりゃ苦手だ」と思った経緯があったのですが、古いものなら好みかも?と思って借りてみました。

登場人物のみなさんが大変魅力的ですね。
土井老中は若き日の丹波哲郎。極悪で愚かな殿様を演じた菅貫太郎って誰だろう?と思ったら、「田園に死す」で現在の「私」を演じてたらしい。(あまり覚えてない、、)十三人の刺客片岡千恵蔵だの嵐寛寿郎だの里見浩太朗だの(可愛くてアイドル俳優って感じ)、キリッと締まっていて本当に素晴らしい俳優さんたちです。

ただ、この映画にあまり入って行けないのはやっぱり、侍の秩序ってのに共感できないからなんだと思う。
十三人全員がたおれることなく仇討ちが成功したところで、その後みんな自害せざるを得ないんだろうし。変なことをいうと、完全な避妊方法が存在しなかった時代には人の命が”いくらでも生まれるもの”と感じられてたんだろうか。とか思ってしまう。
でも、歌舞伎っていう閉じた世界の役者たちが女も男も演じる歌舞伎よりは、この映画のほうが、侍たちのリアルな忠義心とかが伝わってきて、美しいとは思う。美しいと感じる気持ちだけが先走って、侍礼賛とか散る美学とかの方には行きたくないもんだけどな・・・。

十三人の刺客

十三人の刺客

2018-07-13

是枝裕和 監督「三度目の殺人」1857本目

役所広司が画面にいると、安心するような嬉しいような気持ちになる。
きっと面白い映画だから、きっと悪い映画じゃないから。(ただ、無意識のうちに、悪いようで善意の人なんじゃないかと期待している)
そして、福山雅治が彼の弁護人。相変わらず爽やかだけど、ベテラン弁護士の貫禄も出てきたなぁ。老けたと言ってもいいんだけど、この貫禄は役者としてとてもいいと思います。
広瀬すずは、若いのにほんとに情緒が豊かで、いつ見ても素晴らしいですね。

しかし・・・捉えどころのわからない映画だな。
「藪の中」みたいだ。煙にまかれたような。これをそのまま「謎めいてる」とか「人間の二面性を描いて」とかカッコいい感想なんか書かないぞ。是枝監督、どこに向かってるんだろう。

ドキュメンタリー映画ドキュメンタリーふう映画にも恣意性はある。監督はそれをいかに排除するかを探求してる方だと思ってた。で、多分、裁判にもシナリオがあって演出もある。裁判は映画だ、ノンフィクションふうのフィクションだ、と暴きたかったのかな。騙されてあっちこっち右往左往しながら、自分なりに咀嚼して飲み込もうとする観客は、この映画の福山雅治弁護士だ。と言いたかったのかな。

監督が大監督とか名監督になっていくとき、彼の視点はだんだん高くなっていく。人間を俯瞰して見られるようになるのはすごい事だけど、神の視点に立ったつもりにはなってほしくないな〜。

三度目の殺人

三度目の殺人

村川透 監督「蘇える金狼」1856本目

1979年の作品。
思い出してみると、この頃ってはちきれそうに豊満な女性の裸が表紙の漫画雑誌とか、ふつうに置いてあったし、その中では多分女性は押し倒されれば誰にでも抱かれていたんだろう。そういう時代の、バイオレントでセクシーで強欲なくせにセンチメンタルな、男のファンタジーです。(面白いっちゃ面白いんだけど、今の時代には通用しない)

松田優作が、あまりに経理の事務員に見えなさすぎて、なんて言ったらいいか・・・。
日焼けしすぎ。目つき悪すぎ。髪型不自然すぎ。気配悪すぎ。
でもワルっぷりが板についてて本当にカッコイイです。
この映画の一番魅力的な部分は、日本を代表するカッコイイ悪役俳優がカッコよく勢揃いしてるとこですよね。
佐藤慶成田三樹夫小池朝雄、それに千葉真一岸田森、etc.etc.
イヤラシイし根性セコイし、でもやっぱりなんかカッコイイ。
たまにこういう映画も見たくなっちゃうんですよね〜。

蘇える金狼 4K Scanning Blu-ray

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マイケル・カーティス 監督「ミルドレッド・ピアース」1855本目

1945年の作品。
先日見た西部劇「大砂塵」は1954年なので、それより9年前です。ジョーン・クロフォードこの時39才?(諸説あるそうです)。主婦から起業して大成功しているバリバリの実業家ですが、娘に甘くてスポイルしている。真面目で誠実な前夫と真逆の、金遣いの荒い没落貴族の今の夫が殺されていると警察に通報があり・・・。

大どんでん返しといっても、この映画の中で、人を恨んだり恨みを買ったりしそうなのは被害者と本当の犯人くらいなので、意外ではありません。それより、同様のテーマを撮っても映像の印象が監督によって違うのが面白いなぁと思います。(ちゃんと細かく見るのは私には難しいのですが)ミルドレッドが気丈でまっすぐだからか、映像にダークな感じがしません。夜の場面が多くて全体的に黒が多いのに、なんとなくホームドラマみたいに清潔。
ゴーン・ガール」みたいなひねくれた筋の映画や、無駄なくらい二転三転四転五転する映画を見すぎているので、プロットに意外性はないんだけど、なんとも吸引力のある映画です。

娘を演じたアン・ブライスの演技力もすごい。ワガママ娘はまだしも、まあまあ嬉々として酒場で踊る場面の明るいわびしさとか。「名子役」とか呼ばれてた俳優っぽいなと思って英語版のwikiを見たら、実際子供の頃からラジオドラマとかに出てたそうで、この映画のときまだ16歳。その後日本で誰でも知っているような映画にはあまり出てないみたいだけど、今も存命で89歳だそうです!

ミルドレッドのところで家政婦時代から働いている、黒人メイドが可愛いですね。声がリンダ・ルイス(すごく声域が広いシンガー)みたいで、くるくるとよく働く。

昔の映画、特にこういう白黒映画って、画面エフェクトを見逃さないようにしようとか思わず、ひたすら筋を追って見入っていられる居心地の良さがありますね。(この間見た「ニンジャバットマン」と真逆だな。あっちも好きだけど)

2018-07-11

永井聡 監督「帝一の國」1854本目

面白いっちゃ面白いけど、なんで平均点がこんなに高いのか、ちょっとびっくりしてる。
いい部分は、若い役者さんたちが生き生きしてて皆いい演技。永野芽郁マドンナ的存在って感じはしないけど、天然な感じは悪くないなぁと思います。でもキャラクターをデフォルメしすぎてて、もう少し現実に寄せた方が10年後に見てもちゃんと面白かったんじゃないかなと思う。東郷菊馬とか氷室ローランドとか。
いくらなんでも選挙から次の選挙へすっ飛びすぎ。そこまでしてダイジェストを見たい事情は、私にはないです。原作のマンガを読んでる人は、どうしても最後まで描き切って欲しかったのかもしれないけど。
ううむ。。。

帝一の國

帝一の國

2018-07-08

ジョージ・スティーヴンス 監督「シェーン」1853本目

1953年の作品。
西部劇といっても、少年と通りすがりのイケてるガンマンとの”友情”がテーマだし、カラーで絵がきれいなので、「大草原の小さな家」を思い出します。(20年後のテレビシリーズですが)
やたらと、シェーンとお父さん、シェーンと少年が、顔を見合わせて微笑むという場面が出てくる。何だこの、あまり見たことがないほどのハッピーファミリー感は?これは、ラストシーン(知らない人いないと思うので、ネタバレだけどそのまま書きます)でシェーンカムバック!と少年が本気で叫ぶための道のりのひとつなんでしょうね。

風景は、大草原の端に雪を被った山脈が見えて、これはアリゾナ州ユタ州サボテンだらけ。だいぶ気温が高い)じゃないなということがわかります。ワイオミングなんですってね。
おきまりの悪い権力者と、強いガンマンがいて、やがて決闘に至るのは西部劇の王道ですが、保安官は「遠くにいるからあてにならない」と流されて登場しないまま終わります。シェーンの正体も明かされないまま。(わかったところで、定住に憧れた通りすがりのガンマン、だけで十分な気もする)

シェーンが立ち上がるのは最後の最後だけ。それまではずっと、優しい通りすがりの小作人として微笑み続けて、最終決闘では当然、あっさりと、きれいに勝ちます。この映画の中心は情緒なんだな、やっぱり。途中激しいケンカの場面もあるけど、予定調和的。「道」のジェルソミーナが確実にかわいそうなのと同じように、美しく勝って美しく消えるシェーンは確実にカッコ良く感動的。男が考える感動の世界の典型だなぁ。

という訳で、思いのほか、さわやかな気持ちの残る映画でした。西部劇は苦手だと思って避けることが多かったけど、この映画は食わず嫌いだったなーとちょっと反省です。

スティーヴ・クローヴス 監督「恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」1852本目

1989年のアメリカ映画。およそ30年前だ。。。
当時この映画を見て好きだった記憶があって、ずっとまた見ようと思ってました。
当時はまだまだ小娘で、ラウンジジャズを演奏する大人な世界にポーッとなっただけだったのかもしれません。
ミシェル・ファイファーが綺麗でセクシーで、(ベイカー・ボーイズはもう少しカッコよかった気がしてたけど)やっぱり素敵。

ベイカー・ボーイズが実はブリッジズ・ボーイズで、ジェフ・ブリッジズにボーという俳優の兄がいることは、どっかで聞いたことくらいはあっただろうけど意識してませんでした。背中を丸めてピアノを弾いてるときだけは、似てるなと思った。彼らピアノ本当に弾いてるみたいだよね。

ストーリーは、出会って別れて。束の間のアンサンブルの輝き。という、普遍的で美しいけどよくあるテーマ。
でも、輝いてる瞬間が本当に素敵だからいいのです。この時のミシェル・ファイファーとジェブ・ブリッジズは本当に魅力的です。二人ともいい感じで年齢を重ねてますよね、この後も。

それにしても、シアトルが舞台なのにかの有名な「スペース・ニードル:がただの一度も映らないのって何でだろう。この映画を撮影してた時には、まだ一般公開してなかったのかしら。と思って調べたら建築1960年代シアトル万博で建ったそうです。その後何度か増改築が行われたそうだけど、この映画の撮影時期に工事をしてたという情報は見つからなかった。
だいたい、シアトルにこんな小洒落たピアノバーがいくつあったっけ・・・?全部高級ホテル内にあるのかなぁ。
いずれにしろ、マイクロソフトがまだ無名で、アマゾンは影も形もなかった頃の静かな港町だ。もはや古き良き時代と呼ばれるんでしょうね・・・。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 監督「BIUTIFUL ビューティフル」1851本目

スペイン語圏がいかに広いか、いかに優れた映画監督がいるか、最近実感しています。私の目につくところにもっともっと現れてきてくれたらいいな。

冒頭からハビエル・バルデムが怖い。でも怖いのは顔だけで(w)、この映画は監督もあちこちで語っているように、スペイン「生きる」なのです。ハビエル(ウスバル)は怒ってるんじゃなくて苦悩しているのです。余命宣告を受けたらどうする?を表現するのに、1952年の日本でリアルに思えるのが初老のサラリーマンなら、2010年のバルセロナでは麻薬の密売人の中年男なんだ。世界中どんな人にとっても重い、苦しい、宣告です。

個人的な考えだけど、黒澤明の映画のタイトルが「死ぬ」じゃなくて「生きる」なのは、「死ぬ」だとなんか暗いからとかではなくて、余命が定まったところであと少しの時間をどう「生きるか」が大事だから。
この映画でもウスバルは、何を子どもたちに残せるかを考えて、必死に生きます。何もかもうまく行くような映画を作る監督ではありません。何を読み取るかは観客に任されています。任されても、この映画はなかなか複雑で(いつもだけど)、やっぱり2回は見ないと・・・。冒頭とエンディングは繋がって(重なって)いるし。死者と話ができることも、一度では理解できなかった。そうか、彼はお父さんとも話ができたのかな。

スペイン中国からの不法移民がこんなにいるのか。多分リアルなものを描きたい監督だから、いるんだろうな。そういうのを斡旋する人たちも、麻薬の密売をする人たちも、たくさんいるんだろう。
それにしてもウスバルは、あとわずかの時間の中で愛し合ってる元妻と、病気のせいで「できない」ことが残念だった。何もしなくても話し合って分かり合えるほど器用な男じゃないから。

だけど「奇跡の映画」以外の世界では、死は静かに確実に必ず来る。残される人たちのことを真剣に考えても考えなくても来る。自分が愛されていたかどうか、元妻にも子どもたちにも、本当のことは必ず伝わってる。だから大丈夫なんだ、お金や立派な何かを残せなくても。
「自分が育てているつもり?天地万物子どもたちを育くむのよ」
シャーマン的な女性(この人の存在感すごいですね)の、この言葉が達観していて好きです。
彼女に「何もかも家族に話せ」と言われても、結局何も話せず、生にしがみついて、もがいたままだったけど、彼女からもらった不思議な「石」は渡せたみたいだしね。
成仏しろよ・・・(だから映画だってば)

ゲイビー・デラル 監督「アバウト・レイ 16歳の決断」1850本目

エル・ファニング(ちょっと猫背、可愛い)が心は男の子という役をやる映画だとは知ってたけど、その母がナオミ・ワッツ、祖母がスーザン・サランドンかぁ。歴史・・・。

以下ネタバレあり>
祖母がレズビアンカップル、シングルマザーの母は父と思われる男の兄弟とも寝ていて、レイの父親がどっちかは明確にはされない。設定の色々が現代的で複雑だけど、母が女同士で付き合うことは受け入れても、自分の娘が男の子になることは受け入れがたい。兄弟と寝ていた彼女をいつまでも憎み続ける元ボーイフレンド。人々の道徳規範は昔からなんら変わっていなくて、この映画にとんがったところは何一つないです。

割合、この時代にありそうな題材だし、いい俳優がたくさん出てるけど、可愛いエル・ファニングをもってしても俳優パワーで押し切る映画ではない。割と地味なのです。でも、いろんなごちゃごちゃが最後には緩やかに混ざり合って、やがて融合していけそうな予感がしてよかったです。

2018-07-07

水崎淳平監督「ニンジャ バットマン」1849本目

これは何だったんだろう?
中年女性(私)が一人でガラガラな夜の映画館に見に行くような映画だったのか?
私といろんな趣味の合う人(その人もいい年齢の女性w)から勧められて、あえて前知識なしで挑戦してきたのですが。
・・・答えはYesだな。こういう過剰でサービス精神ありすぎで、てんこ盛りでうるさくて疲れる映画は、基本的に、好きだ。
監督はあれか、「ポプテピピック」か・・・。
そして脚本は「髑髏城」etc、劇団☆新感染中島かずき
ニンジャや日本の街並みの造形が、日本のアニメみたいなテイストだなと思ったら、オール日本スタッフで作られた映画なのね。最先端の日本のクリエイターたちが逆輸入した「日本」。
キャラクター紹介のときのキメの場面で静止して墨字の日英表記で名前を紹介するのは、カブキの見栄の感覚。
訳も分からず、みんな城を建てていて(どこで材料調達するんだよ!)、それが全部動き出して合体するのは、ロボアニメ育ちの感覚。
今敏の作品が好きで、この映画には彼のような過剰さや愉快さが見られるんだけど、今敏作品にある青くささや、スコーンとくるカタルシスはない。代わりに、新感染のお芝居のゴテゴテとしたゴージャスさ、確実に盛り上げるプロ根性、ポプテピピックみたいな訳のわからなさの累積があって、なかなか興味深いです。

Marvelの映画とかあまり見たい私でも、バットマンの基本キャラたちは説明がなくてもわかる。これが有り難かったです。

この新旧ジャパニーズテイスト満載の無理無理なバットマンを、海外特にアメリカの人たちはどう受け止めたのか?初動は「Rotten Tomatoで観客100%」という記事があるけど、今見たら45%だった。熱狂的に待ち構えてた人には高く評価され、そうでもない人は0、というのならいいことだ。少なくとも、私が見た印象では、「可もなく不可もない」と言われるようなおとなしい映画ではなかった。これを中学生くらいで見たアメリカフランスやタイや南アフリカの人たちが、ずっと覚えていて、大人になってからすごいアーティストになったりしたらいいな、と思います。

印象に残った絵:セシリアの目がすごく綺麗。空に版画みたいな波波のもようがある表現が素敵。もしかしたらこの映画、劇場で1回限りで見るより、買って家で10回も100回も見て細部まで楽しむのがいいかも。

ジャン=ピエール・ダルデンヌ 監督「サンドラの週末」1848本目

小さな会社で、うつで会社をしばらく休んでいた女性が、復職するかどうかを他の社員の投票で決める。もう一つの選択肢は、自分たちへの特別ボーナス。・・・この設定自体はおかしいし気持ち悪い。前より安い賃金復職するか特別退職金をもらうか、彼女自身が決めるというのが一番ありそうな選択肢だ。
民主主義の皮を被って、雇用者が自分の判断から逃げてるだけ。

この映画ではマリオン・コティヤールが最初から最後まで悲痛な表情で同僚たちを説得して回る。君の復職に投票するよ、あるいはどうしても必要な金だから投票できない。人によってお財布事情は違うし、良心の持ち方も違う。どの判断も正しい。

このテーマ、高校生くらいの子たちに実験的にやってみてドキュメンタリーを撮って「日本賞」で受賞するならわかるけど、フィクション映画でこれをやる気持ちがわからない。映画として本気でやるなら、雇用人がこんな馬鹿な方法を考えついた狡さも引きずり出してほしかったです。あまり評価できないので、点はつけないことにします。

サンドラの週末(字幕版)

サンドラの週末(字幕版)