映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

イングマール・ベルイマン監督「野いちご」1358本目

この映画は3年前に見たけど、テレビでやってたのでもう一度見てみました。
一回目はこんな感じ:
http://d.hatena.ne.jp/enokidakeiko/20130308/1362753096

今回は、「わからない」という感じは全くないです。一度見てるからだと思うけど、それは筋を知ってるからというだけじゃなくて、この世界になじみができていて、前より素直に入っていけるから、かもしれない。
自分が、人を避けて年をとって、名誉はあるけれど誰からも愛されなくなっていて、若い頃の温かい、あるいは苦しい思い出を胸の中に抱えている、ということが想像しやすくなってる。
主人公に共感まではできないけど、「野いちご」が、単に清純な少女というより、自分が口をつけなかったおいしい果実という意味を持つことも、今回は、感覚としてわかる。
「永遠と1日」みたいな感じもあるけど、あっちのほうが生々しいな。

今回素直にこの世界に入れたもう一つの理由は、認めるのが怖いけど、自分がこの3年ですっかり「老い」っていう実感がわかるようになってきたこと。現実の日常生活にもうなんの変化もないから、一番輝いてた頃のことばかり思い出して暮らしてる、という状況が、少しわかるようになってしまった。それは、どこも悪くなくてもあちこちの調子がでなくて、死が近づいてるって感じること。この作品はまったく、監督の晩年の作品などではなくて、89まで生きた監督の弱冠39才のときの作品、っていう事実が、なんだか信じ難くて笑える。