映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

デイヴィッド・フィンチャー監督「ゾディアック」1880本目

ジェイク・ギレンホールの名前を見つけると、(ああこれは、ジェイク・ギレンホールが出る系のミステリアスなサスペンス映画だな)と期待が高まるようになってきました。パブロフの犬的。
でもこの映画は、ちょいと違っていたかもしれません。前のめりなゾクゾク感や、異世界がすぐそばにあるようなスリルはいつも通りなんだけど、フィンチャー異世界よりも、人間の中にある底知れない怖さにご執心な監督という印象があります。この映画で描かれているのはとにかく人間。なかでも犯罪者自身ではなく、ミステリーに憑りつかれた人々に注目しています。
あれ、それってフィンチャー監督自身にも似てませんか?

「ゾディアック」っていうタイトルはだいぶ前から耳にしていたけど、実際に起こった事件だったんですね。語感がいいし天体関係の用語って意味を知ってもガッカリすることがないし、腕時計の商品名にしてもおかしくない。

<以下、見る前は知らないほうがいい結末情報>
いいところで一気に失速してしゅん、と終わってしまうのですが、こういうアンチクライマックスも監督好みなのかな。モヤモヤとまではいえないけど、消化が悪い感じなのは、犯人像がわからないまま終わるからかな。
でもゾクゾクさせてくれました。ありがとうデイヴィッド、ありがとうジェイク。

ロバート・ダウニー・Jrとかマーク・ラファロとか、目を引くキャストも良いけど、ジェイクの彼女〜妻を演じたクロエ・セヴィニーがいいなぁ。眼鏡がないと、クール・ビューティって感じじゃないかと思うんだけど、眼鏡が知性だけでなくふしぎとセクシーさを増強してる。同性ながら、こんな女性とムーディなお店でお酒でも飲んでゾクゾクしてみたい気になってしまいます・・・。
以上。

ショーン・レヴィ監督「リアル・スティール」1881本目

ディズニーだから良い子の映画に違いない。
ヒュー・ジャックマンが良い子の映画に出ると、いい人x良い子の映画で、真面目すぎてツマラナイ予感がする。
しかしこの子役の子はいい面構えをしてるな。ダコタ・ゴヨというんですね。覚えておこう。
ロボット・ジムのトレーナー?エンジニア?の女の子もチャーミング。

リアル・スティールってのはリーグの名前だったのね。本物のハガネ、か。いいですね。
ヴァージンとかbingとかsplintとか、映画内CMも派手!
シャドー・ボクシング機能のあるロボットボクサーっていうアイデアがいいですね。
打たせて、打たせて、弱らせて反撃するっていうのも人間のファイトでありそうな戦略、展開だし。
「桃太郎」みたいに結末は最初からわかっていたけど、カタルシスがちゃんと得られる映画っていいわね・・・。
現実とCGの境目も全く感じることがなかったし。「アトム」の顔はまるでフェンシングのヘルメットだし。

試合と一緒にスカッと終わるのも、計算されてて良いのではないでしょうか。

クリント・イーストウッド 監督「15時17分、パリ行き」1882本目

前評判高かったですよね、この作品。この事件の当事者たちに再現「映画」をやらせたってことで。
最近の日本の映画で、ほぼ素人の俳優たちを起用した作品が面白い・・・けどこれはフィクションじゃない!本人たちが実際にあったことをなぞるドキュメンタリーですから!

当人たちの他は、家族や子供時代もみんなプロなんだよね。やっぱりプロはうまいなぁ・・・。スペンサーはもともと無表情な人なんだろうな、ちょっと固いかな〜、と思って最初は見てたけど、さすが幼馴染、3人揃うといい表情がどんどん出てくるんだな。この子たちは、いわゆる優等生では全然ないけど、人柄がまっすぐでいい人間たちだなぁ。お母さんたちもいい。信じてくれる母たちがいたから、彼らはこんなにいい子に育ったんだろうな。
撃たれた人とその奥さんも本人なんだな。違和感なかったな・・・。

なんか、、、子供の頃から戦争ゲームが大好きだった若い米兵って、元日本の敵、ちょっと怖い人たち、という良くない先入観のようなものがかすかにある。でもこういう映画を見ると、正義感の強い素直な若者たちなんだよね。近くにいたら友達になれそうな。

テロリストを演じた俳優さんだけが、ちょっと気の毒というか、辛いんじゃないかしらと思ってしまうけど、見応えのある映画でした。
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