そこに物語があれば

秋田在住、作家志望兼駆け出しエロゲシナリオライターの雑記

エロゲレビュー「Crescendo〜永遠だと思っていたあの頃〜」

振り返る3年間の数々の思い出
卒業という節目に近づくにつれ激しく募る想い
あの時の僕等は純粋だけど臆病で他人を傷つけることを畏れていた
その優しさが逆に他人を傷つけていることも知らずに――
ただただ、この時が悠久の時であれば良いとそうあって欲しいと強く願った
しかし何時かはその時にも終りがやってくる
誰もが経験する出会いそして別れ
卒業という節目に近づくにつれ徐々に強くそして激しくそれぞれの想いは募ってゆく――

「卒業」という人生に置ける一つの大きな節目に対して何かしらの感慨深い思いを抱く人は多いのではないだろうか
今日紹介する、Crescendo〜永遠だと思っていたあの頃〜は、卒業を5日後に控えた主人公達が織りなす青春の最後の1ページを描いた物語だ
「淡い」
これが、本作を表すのにもっとも適した言葉だろう
兎に角ピュアな物語だ
それも、エロゲにありがちな行き過ぎた無垢さではなく、世界観、登場人物共にどこか地に足の着いた純粋さを感じさせる
正直、意外性や盛り上がりに富んだ物語ではない
わかりやすい萌えや笑いもない
本作は、そういったエロゲ的な要素を一切廃して、恋愛という物をただひたすらピュアに描いた物語だ
それも、シリアスな恋愛物語にありがちな甘酸っぱさやほろ苦さを前面に押し出した癖の強い物語ではなく、むしろ、どこにでもありそうなありふれた普通の恋愛を描いている
エロゲというよりは、絵と音が加わった恋愛小説と言った方がしっくりくるだろう
それから、本作はセンスの良さが光る一作でもある
BGMにジャズの名曲を使用しているエロゲなどそうは無い
「永遠だと思っていたあの頃」というサブタイトルも秀逸だ
これは、永遠に続くような気がしていた学生時代の事を指している
永遠だと思っていた時間の終わりを告げる卒業という一つの出来事
これを物語の中心に据える事で、回想シーンが非常に多い本作の構成が、まるで思い出を振り返るかのようなものとなっているのは実に上手い
物語の纏め方も綺麗で全てが上手く噛み合った作品と言えるだろう
それと、本作はテキストのレベルが非常に高い
流行りのポップでテンポの良い文体に慣れた人には堅苦しくてしょうがないだろうが、素晴らしく綺麗で丁寧なテキストだ
余談だが、本作のシナリオライター 水無神知宏氏は、コア層からの人気が非常に高く、一時期は、あの山田一と並び称されていた程の人物だったりもする