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2013-04-14

equilibrista2013-04-14

なぜビットコインは通貨になれなかったのか

日本人の名前だと思うのだが、ナカモトサトシと名乗るハッカーのつくった仮想通貨「ビットコイン」の価格が、乱高下している。背景には欧州危機があり、政府中央銀行に依存しない点が人気を呼び、価格が高騰していたが、高騰し過ぎて今度は「バブル」が破裂してしまった。下記の他にも多数の記事が出ているので、興味のある方は検索いただきたい。


仮想通貨「ビットコイン」、人気急上昇で価値高騰 国際ニュース : AFPBB News

http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/it/2938295/10567730


Virtual currencies: Mining digital gold | The Economist

http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21576149-even-if-it-crashes-bitcoin-may-make-dent-financial-world-mining-digital


さて結局のところ、ビットコインは誰もが使う通貨にはなれなかったし、今後もなれないだろう。残念ながらビットコインは、モダンな通貨としては、致命的な欠陥を抱えている。量の制約*1である。シンプルに説明することは、あまり簡単でないが、この点に今日はチャレンジしたい。


誰もがビットコインを用いる社会で、商売を始めることを考えよう。100BTCを借りてきて、まずコーヒー豆を仕入れる。トラックで運んできて、焙煎して袋詰めして、それらしい売り文句をつけてスーパーや喫茶店に販売するまでの間に、ビットコインが高騰してしまった。商品と引き換えに得られるはずだった300BTCが、150BTCに減ってしまったのだ。これは困る。社員にも100BTCの給料を支払う約束で、事前の目論見と違って大赤字である。こんなにビットコインが変動してしまっては、商売しにくい。


もちろん貸し手にとっても面倒だ。コーヒー商社には将来がありそうだと、一年の約束で100BTCを貸したら、その間にビットコインのバブルが崩壊してしまった。予定通り110BTCは返ってきたものの、それで買える米の量は半分になってしまった。事前の目論見と違って大失敗である。こんなにビットコインが変動してしまっては、貸しにくい。


こうした理由で、かつて我々は金本位制を破棄した。ゴールドの価値は、須く時と共に変わるわけだが、常に動く物差しを使って、将来について目測するのは面倒だからだ。で、代わりに何を用いたか。ここが今日のハイライトである。我々は、貸借をゴールドに紐付けることを中止した。それまでは資産として保管されたゴールドの「預り証」のようなものを数えて、実際の取引に用いていたわけだが、その同じ分だけ、単に中央銀行への「貸し」と思うことにした。


何か循環しているように感じられて、ちょっとわかりにくいかもしれない。実際に循環しているわけだが、我々は紙幣を、中央銀行への「貸し」とした。言い換えれば中央銀行は、単に我々から借りるための組織で、そして中央銀行は貸しやすくて安全だという理由で、その大半を政府に貸す。借りた政府は、例えばコーヒーを運ぶための道路を敷いて、我々自身の暮らしと生産とに供するのだ。この循環にゴールドは介在せず、その本来の役割で—工業向けや装飾品として—しか現れない。


ビットコインもゴールドも、その量にかかる制約は、相対価格に大きな変動をもたらす。他方で「貸し」は一般に、本質的に量から自由*2である。例えば極端には、四月から始まった講義スケジュールが、どうしても新緑のデート予定と重なってしまった。すると「代返しといてやるよ」と友人。これで成立である。ゼロから「貸し」が生み出された。野暮は承知だが、手っ取り早く清算したいと思えば、僕から中央銀行への「貸し」を持ってきて、彼から中央銀行への「貸し」へと振り替える。我々から借りるための組織であるところの中央銀行は、でーんと安定した存在で、いつでも安心して貸すことができる体裁だ。


既にお気づきの方も多いと思うが、この同じアクションを「ビットコインやゴールドにおける流通量を、常に超柔軟に調整している」ように捉えることは、形式的には不可能でない。が、もちろん的が外れている。中央銀行は、要請されれば借り手となることは吝かでないが、デートを予見することも促すこと*3もできず、また直接的な介在を要請されるとも限らない。どうしたって受動的だ。


さて利息は、もっとも安全そうな、つまり返済してくれそうな「貸し」を基準に、その上乗せ分が探られる。この基準を、我々は「円」と呼ぶ。日銀への「貸し」のことだ。だとすれば通貨には、どうしても政府中央銀行が関わらざるを得ないのだろうか。ビットコインの美のひとつであった、「お上」に左右されない気高さを、我々は生み出すことはできないのだろうか。


そんなことはないと、少なくとも僕は考えている。基準となる「貸し」に必要とされる要件は、何よりも安全であることだが、政府中央銀行でなくとも、安全をつくり出すことは可能なはずだ。どうやって?簡単さ、危険の取引を促せばよい。デートに繰り出した浮かれ野郎への「貸し」から、それが返済されない危険を取り除いたとき、そこには安全な「貸し」が残る。実際に我々は、金融市場ではスワップ取引の形で既に、多くの危険を交換している。


ナカモトさん、ここを読んでいるかい?今度こそ本物の通貨を、一緒につくり出さないか。その秘密は、きっとリスクの取引に隠れている。

*1http://bitcoin.co.jp/faq/faq.html

*2:信用からは自由でない

*3:ささやかだが、安く貸すことはできる

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