リバランス頻度とドルコスト平均法

ボートフォリオの、いわゆるリバランスの頻度を変えてテストしてみたところ、細かく実行するほどパフォーマンスが弱かったという話を伺って、「もしかして上げ相場で試しませんでしたか」と反射的に出てきてしまった。「一本調子の相場」と表現した方が、すこしだけ正確だったかもしれない。簡潔に表現する練習は、いつでも大切だ。


株式と債券の2銘柄を、50:50で買うポートフォリオを想定しよう。シンプルな例だが、あとで拡張することは容易である。ある期に株式市場が上昇し、これが60:40になった。ここで、1)リバランスするポートフォリオの配分は50:50に戻る。他方で、2)リバランスしないポートフォリオの配分は60:40のままである。


翌期、再び株式市場が上昇したとしよう。運用成績の優劣は、こんな感じだ。リバランスしない方が勝ち。

50:50 < 60:40

翌期、株式市場は下落に転じたとしよう。運用成績の優劣は、こんな感じだ。リバランスした方が勝ち。

50:50 > 60:40


これだけの話である。ある期に株式市場が下落し、配分が40:60になったケースについても、暗算を試みていただきたい。ざっくり言えばリバランスは、つまり動いた価格が、再び同じように動くとき、負けてしまう。冒頭の問題では、リバランス「頻度」に興味があった。より長期を見て、また短冊の刻み方を変えて、やはり試してみていただきたい。だんだんと見えてくるのは、つまりリバランス頻度によるパフォーマンス差異の観察は、当該スペクトルでモメンタムを測っているようなものだ。


そう思うと、巷で見かけるリバランス調査には、そうした基本的な点を見落としているものが少なくない旨に触れると、即座に「ああ、ドルコスト平均法ですね」と指摘いただいた。そうですそうです本当ですと、首が痛くなるほど頷く。ああ首痛が、ずっしりと重く効いてくる。風呂入ろう。


今日よりも明日をオーバーウェイトするポートフォリオは、おおむね均等に両者に配分する(つまり買いっぱなし)ポートフォリオと比べて、今日よりも明日の方が上昇するときに勝つ。自明である。短冊を細かく刻んだケースについても、暗算してみよう。時間軸に沿って、例えば値段が山のように推移すれば負けるし、V字なら勝つ。それだけである。ドルコスト平均法にかかる「テスト」が、何を調べていることになるのか急に見えてくるわけだが、要するに環境だ。


さて、話が飛躍して恐縮だが、これだけ単純な、暗算で検算できる仕組みでさえ、一旦プログラムとして切り出した途端、つい「テスト」したくなってしまう。ついフィッティングしたくなってしまう。これが我々の性である。「最適」なリバランス頻度や、ドルコスト平均法よりも優れた投資プログラムさえ、僕らは容易に見つけ出してしまう。より複雑なバリエーションを、つい発明してしまう。そんな自分を、見つけないだろうか。


気をつけなよ。あんた俺にカモられてるぜ。