火星へ#3

ジョージWブッシュの演説はこれからのアメリカによる宇宙開発のタイムスケジュールを表明したものとなっている。
概略は国際宇宙ステーションを足がかりに、次のステップとして月を更なる宇宙開発の拠点とすること。そして、今度は月を足がかかりに火星への旅、そして太陽系外へと続く人類による宇宙開発の将来を語ったものだ。
火星について言及したの演説の16分30秒のところ。火星に関してはさらりと流して多くを語ってはいない。
この演説の基調にあるものは、アメリカという国家を築いた自分たちの先祖がそうであったように、未知なる土地への到達を試みる、あくなき挑戦の精神と言う点だ。
また、月に基地を作る利点として、重力が小さい分、より少ない燃料でロケットを発射できる点に触れている。
これは、別の言い方をすれば、同じエンジンを使う場合、月から発射したほうがより大きいロケットを打ち上げることができるということだ。
あれこれ考え合わせると、大統領が語ったアメリカによる宇宙開発は究極の目的として、地球以外の星に人類を送り込み、そこに新たな人間社会を築くことにあるといえると思う。
それはまさに、メイフラワー号に乗り、新天地を目指した人たちの精神を受け継ぐものだ。
壮大な宇宙へのロマンといえると思うが、その一方で、地球以外の場所で人類社会を築くということには、別の大きな意味がある。
その別の意味を私が知ったのは、この大統領の演説よりずっと以前の日本のテレビ番組でのことだった。
その番組とは、NHKクローズアップ現代。1999年1月26日に放映されたこの番組に、アメリカの宇宙飛行士のジョン・グレンとカーチス・ブラウンが登場した。
ジョン・グレンはこの番組の前年の1998年に、77歳という高齢ながら、スペースシャトルのミッションに船長として乗り込み、任務を果たした。
彼はマーキュリー計画の宇宙船搭乗員として、有名を馳せたいわば、アメリカの英雄である。
その彼をして、またもやスペースシャトルに搭乗させたのには、アメリカの宇宙開発に関するプロパガンダの意味があったに違いない。
番組では、高齢ながら再びの宇宙への旅を行った彼に焦点を合わせ、番組タイトルもその当時の流行語であった「老人力」だった。
番組の中で、キャスターの国谷裕子(くにやひろこ)が彼に、「アメリカはどうして有人飛行にこだわるのでしょう」という質問をした。
それに対する、ジョン・グレンの回答は驚くべきものだった。