無題


昔ちょっとあれした男に、あたらしい女ができていまいっしょに住んでいるという話を人づてに聞く。何の因果かおなじころに私も籍をあれするのしないのということがあって、彼のことばをいろいろと思い出したり。そういえば、矢鱈とあれを言っていたなあ、とか。しあわせになるんだよ、てきな。終わった女のしあわせを願うというのは、そうじゃないとあんたが辛いからってだけでしょう。としか思えず、いまは憎悪に似た感情しか持っていない。憎悪。この膿のような感情がなんなのかわからない、たぶん憎悪。そうしないと私がだめだったのかもしれないけれど。
深夜、ドク先生とすこしやりとり。切ない、と先生は言ってくれて、笑い飛ばすしかなかったけれど笑っていないとやっていられないのだとおもう、音楽で繋がった男だから、どの音楽を聞いてもその男に繋がる思い出ばかりで、もう長い間何をしていても心のどこか欝欝として。男との思い出の曲ではなくて、じぶんのすきな曲を聞こう、と選曲したところで、私のすきな曲はどれも、彼のすきな曲なのだった。
彼が何度、私を肯定しただろう。何度、「大丈夫だよ」と言って笑っただろう、だが思い返すと、彼といっしょだったころの私はずいぶん不安定だったようにおもう。