げんきな音楽/夏

連日くそ暑い。窓を開け、カーオーディオからは前倒しの「Laser Rain」。前倒し、というのは、あれが夏のものだとおもっているからで、実際それぞれの曲が夏っぽいとか、LEO今井が夏っぽいとか、多少はあるけれどそれほどではない。なんとなく、あれを買って繰り返し回転させていた日を想起させるからかもしれない。
長野だった。初めて長野へ自走で放浪し、矢鱈興奮していた日、窓を開けると風が入ってきて、地元の風とは違う、湿気た匂いのしない、アスファルトからの照り返しの少ない、青臭いような風。車の少ない国道に、ぐちゃぐちゃしていない景色、ニッポンアルプス山脈のパノラマ、街へ出れば古い商店街。祭りをやるらしき堤燈や神輿。スーパーマーケットに並ぶ見たことのない食べものと、聞いたことのないイントネーションで話す店員、明らかな余所者を疎む、視線。買ったばかりの薄手のブラウス。そういうものが、見えてくる。だからあれは、夏のアルバムだ。
その記憶の中の夏とは、全く違う暑さでもって、私を痛めつける五月の夏日。節電だかなんだか知らないが、エアコンの効いていないスタジオで、慣れない服を何枚も着て暑い辛いと文句を垂れ機嫌を損ねた被写体を撮り続ける。要領が悪くて参る。夜になっても、暑いしね。
ちょっと用事があって、と言っても、ちゃんとした用事などではくて、ただの心の補完なのだけど、水戸方面へ。スタジオ終わりでそのまま出てきたので、暑くて適わぬ。これもなんか、前倒しで、ダンスホールレゲエを聞く。夏の暑い夜は、自然そうなってしまうよねえ。


すごくげんきな、音楽だなとおもった。いま、昼間、エアコンの効いた自室で聞いてみてもあまりぴんとこない。昨夜こんなものを大音量で聞きながら車を流していたなんて、はっきり言ってはずかしいもの。なんで聞いていたのだろう、やはり、夏のせいかしら。