「個人」の探究 河合隼雄

河合さんの主催した研究会の論文集。この中の「武士道に見る個人の存在形態」という論文が面白かった。

江戸時代には「主君押し込め」と言って、家臣一同がバカ殿を幽閉してしまうという事件が結構あったという話。他国だったらクーデターになるんだろうが、「押し込め」というのはバカ殿が頭は冷やして反省したら出してやってそのまま殿に戻れるというのがまた不思議(懲りない奴はそのまま隠居だが)。そして「葉隠」にはいざという時にこういうことができるのが立派な武士だと書いてあるそうで、それがとどめの驚き。

上が死ねと言えば死ぬのも武士だが、上がとことんバカなら刺し違えて死ぬのも武士。体育会系では武士はつとまらないものらしい。雪印のことを軽々しく日本的な体質とは言えなくなった。