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2006-03-30

mixiが2ちゃんねるを駆逐できない理由

J0hn D0e の日誌 - ネットにはサザンクロスシティという居心地の悪い街「しか」存在できないのかというエントリは、銀座のどまん中でなければ無人島に一人に通じる話で、やっぱり同じようなことを考える人はいるのだなあと思った。

それで、これに対する今目に見える対策としては、やはりSNSだろう。特に、FOF(友達の友達まで公開)というアイディアにはなるほどと思わされた。mixiが大盛況なのもうなずける。

しかし、これはどうにも本質的な解決には思えないのだが、そのあたりがised@glocom - ised議事録 - 10. 倫理研第7回:共同討議第2部(2)で議論されていた。


加野瀬:

 共通IDで討議の空間をつくっても、おそらく不満が生まれて匿名空間に流れると思います。実例を挙げれば、2ちゃんねるのSNS板にはmixiのスレッドがアホみたいにあって、2ちゃんねるのことを「悪口で繋がる自由」とおっしゃていた。しかしmixiは顕名で繋がる社会性になっているので、ポジティブなことで繋がるしかない。顕名的な空間だと、ネガティブなことは絶対に許されないわけです。

東:

 そしてネガティブな欲求は2ちゃんねるに流れていく。

ised@glocom - ised議事録 - 10. 倫理研第7回:共同討議第2部(2)

そして、ここからの議論の展開が面白かったので、いくつか発言をピックアップしてみる(以下の引用には、かなり省略があります)。

高木:

 嫌韓のことはあまり詳しくはないのですが、どんどん広がっていると思います。ただこれは必ずしも本気で思っている人たちばかりではなくて、あるときは嫌韓的な発言を2ちゃんねるで行い、mixiでは全然そういうことには興味がないかのように振舞う人がいるということです。こうなったひとつの背景には、日本社会では「マスメディアが情報を強くコントロールしている」という不信感が非常に強いことがあると思います。だからあれだけ嫌韓が盛り上がり、「自分はだまされていたのではないか」と興味を持つ人が増えていく。そのようなマスコミ不信現象に過ぎないのではないかという気がします。国やマスコミが情報を隠すことなく、フラットにあらゆる意見を平等に出していれば、嫌韓のような現象は起きなかったのではないでしょうか。

東:

それは分かります。朝日・岩波的な価値観は戦後日本社会では、あまりにも長く支配的だった。それに対する解毒剤として、2ちゃんねるの果たした役割は大きいと思う。それはまったく否定するつもりはありません。しかし、いまの嫌韓には、最初にあったそのようなチェック機能は少なくなっているんじゃないでしょうか。途中からは単にカスケード的に大きくなっているだけではないか。

東:

そう。『マンガ嫌韓流』の作者は、本当の意味では韓国に関心なんて持っていないんじゃないか、と僕が思うのはそのためです。「韓国について語っている日本のサイト」に関心を持っている人でしかない。繋がりの社会性というとき、僕はここに問題の本質があると思う。

白田:

繋がりの社会性について、その逆を取れば、メッセージの内容をきちんと見ながら討議をするという古典的な討議ルールになります。これは第1部でも触れたように、「誰が」話しているのか、「どのような」場で語られているのかではなく、「何が」語られているかに着目しながら議論を行うということです。このルールによって、近代の社会と科学は成功してきたわけです。

 そして日本にもそういった討議ルールが移植されました。しかし結局定着していません。ただこの討議ルールは、日本ではおそらく教育現場においてのみ形式的に強制されてきたと思うんですね。当然我々は義務教育を潜り抜けてきています。討議ルールが形骸的に維持されているところを何年間かすり抜けて大人になっているわけです。さきほど朝日・岩波的な言論が戦後日本を覆ってきたという話がありましたが、これについてはおそらく皆さんも認めてくださると思います。私もすごくイヤだったんですね。

 学校という現場には言論表現の自由があって、「どんな意見でも言いなさい」と形式的には言われてきました。にもかかわらず、公式な見解としては朝日・岩波的な言論のラインに沿わなければならない。そういう暗黙の強制があった。表面的には近代主義に沿ったかたちで、「学級会では議論をしましょう」「相手の発言を聞いて答えないさい」と言われてきた。「言論・学校教育の中で強制されてきた。その結果、我々はなにを得たのか。それは空気を読むというリテラシーだと思うんです。

白田:

 ということで、今後の課題はまさにこれでしょう。日本のコミュニケーション空間では、2ちゃんねる的な嗤う雰囲気や空気を読む作法が主流であって、内容に関する議論は成立しない。そして全体的にカスケードになっていることは百も承知の上で、その危ない橋を渡り続けるという国民性があり、日本の現代メディア状況がある。こうした状況についてきちんとした文書をつくり、ヨーロッパ人やアメリカ人にも分かるようなかたちで情報発信する仕事をしなくてはならないのではないか。

東:

 その点で、いまの加野瀬さんの「言論の予測市場にほかならないのであれば、情報技術はまさにそれをエンパワーメントする。情報技術を言論空間に導入すると予測市場が活発化するわけで、それは日本の社会性がもともと持っていた空気を読むという振る舞いと大いに一致してしまった。そういうことなのかもしれませんね。

加野瀬:

予測市場というのは、「どうすればマジョリティに入ることができるか」を予測するシステムということですね。それは世間強化システムともいえる。

加野瀬:

コメントスクラムには、空気というか流れをつくる人がいますね。「ここでこれだけの人が批判しているのだから、こいつは悪い奴なんだ」という空気をつくろうとする人です。

白田:

 誰かが傷を負ったとき、そこへ集中攻撃をして犠牲にしてしまうというトレーニングは、みんな小学校・中学校・高校で経験してきているからね。

小倉:

ただ国内ですら、その2ちゃんねるにアクセスしている人は、2ちゃんねるのリテラシーを知っているかもしれない。しかし普段アクセスしていないような人たちはどうか。彼らがふとしたきっかけで白田さんの名前で検索し、悪いことが書かれているスレッドが立っているのを見る。するとそれを信頼してしまう可能性もあるわけです。

加野瀬:

さすがのGoogleも、「ここはこういう場所です」という文脈までは教えてくれませんからね。

高木:

「ここの空気はこういうものです」といった格付けを、サイトごとにブラウザが自動的に表示するようにしてはどうだろう?(笑)

加野瀬:

「ネタ度」と「ベタ度」のゲージがある(笑)・

ised@glocom - ised議事録 - 10. 倫理研第7回:共同討議第2部(2)
  • ネタ度=空気=匿名(繋がりの社会性、言論の予測市場)=ネガティブ=2ちゃんねる
  • ベタ度=討議=顕名=ポジティブ=mixi

という二者が並立して補完しあっている(よじれている)状況をうまく映し出している議論だと思う。

私は、この二者がものすごいコンフリクトを起こしているのに、どちらかが相手を飲みこんでうまくコントロールすることができないという所にネットのアーキテクチャの本質があると考える。そこに行きついていることは日本の先進性と見るべきだと思う。白田氏は「このメディア状況を発信せよ」とおっしゃっているが、これに全く同感である。

そして、気になるのが、東浩紀氏がこれに乗り気でないように見える発言を繰り返されていることだ。

  • これ(引用者注:繋がりの社会性的嫌韓厨の問題の輸出から発生する誤解)を阻止するためにはリテラシーの向上が役立つ。それはそうですが、と韓国やアメリカの人に対して2ちゃんねるのリテラシーを高めろといっても仕方がない(笑)
  • しかし、僕の思うに、彼らは「外交について書いてある日本のウェブサイトに関心がある」だけなんですよ。外交そのものに関心があるわけではない。
  • それ(一次資料にあたらない政治談義)はいわゆる床屋談義であって、本当の意味で政治について語ることとは違う。
  • つまり、日本人はお互い空気を読んでいるだけなんだから、その内容は一切気にするなと発信する(笑)。ひどいなあ。

討論会での断片的な発言を拾いあげて批判するのは良くないかもしれないが、「ブログ嫌環流(環は「環境管理型権力」の環です)でマッシュアップを斬る」という記事で取りあげた、ポストモダンの階層構造論との矛盾がひどすぎると思う。

東氏が主張するような意味でアーキテクチャ層を議論するには、コミュニティ層の多様性の底知れなさはひとつのきっかけになるはずである。「その内容は一切気にするなと発信する」ことは、ダイレクトにそこにつながると思う。「2ちゃんねるのリテラシー」が無化しているものが何なのか、それは東氏の重要な思想的テーマだと思う。

すなわち、「アメリカ」の(西欧的な)「本物の外交」論や「本物の政治」論も、嫌韓厨や2ちゃんねるや「繋がりの社会性」という中身の無い連帯感も、並立する多様な価値観の顕現であることにおいては同等であるはずである。「本物の政治」も「まとめサイト」と同じくひとつのサブカルでしかない、というのがポストモダン的現代なのではないのか。

もちろん、これを発信することの現実的な困難さは理解できるのだが、戦う前から無条件降伏しているようなこのヘタレっぷりには、「洋物が偉い」という無条件の刷り込み、典型的な西洋コンプレックスがあるように見えて、気になってしまう。

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