AdWordsはGマシーンのリアル世界乗っ取りを加速する装置

こうして見るとGoogleは、とりあえずの世界のルールに基づいて情報を評価・整理していく中で、何らかのバイアスをかけたかったらAdWordsを出せ(その代金は俺達の作ったインフラ代だ)、みたいな思想なのかなあ、と思える。「意見広告出すならAdWords」なんていうのは、それほど悪い考えでもないように思うだのけど。

これはAdWordsの思想をうまく表していると思う。

グーグルは、ページランクに代表されるネットの中の論理を集約するシステムについて、一応の完成を見た。そこで足りない部分について、オークションで売買される言葉というものを使って、リアル世界の論理を取り込むのがAdWordsだと言える。

たとえば、iPodという言葉を検索しているユーザにソニーWalkmanAdWords広告を出すとする。おそらく高い値段がついているこの言葉を買うことができるのは、ソニーがたくさんのお金を持っているからだ。ページランクはリンクを集めたサイトを評価する仕組みで、AdWordsはお金を集めた企業を評価する仕組みだ。

その結果、検索結果には、リンクを集めたサイトとお金を集めた企業が並ぶ。AdWordsが無かったら、前者しか表示できないわけで、ある意味では、AdWordsの存在によって、グーグルの検索結果はより多角的な座標軸によって集められた情報を提示していると言えるだろう。

しかし、見方を変えると、これはリアル世界のエネルギーをネット世界に吸い上げるシステムとも言える。

もし、ソニーが広告費によってiPodへのアテンションをいくらか奪い取ることに成功したとしよう。ソニーは、このアテンションに対してユーザの自発的な評価に耐える良い製品やサービスを提供しなくてはならない。それができれば、広告費は一時的な出費ですみ、ある段階からは、ユーザの自発的なリンクによってソニーはアテンションを勝ち取ることができる。

もしソニーにそれが出きないとしたら、ソニーAdWordsのお金を永遠に払い続けることになる。その出費をやめたとたん、ソニーへのアテンションは消滅する。

リアル社会の強者がネット社会でも強者であり続けようとしたら、誘導の無い純粋な価値によってユーザの評価を得るか、グーグルにお金を払い続けるしかない。ユーザの自発的な評価を得られないリアル社会の強者は、そうやって、グーグルにお金を吸い取られて消滅していくことになる。

このプロセスを進めていくことがグーグルにとっての「善」なのではないだろうか。

つまり、AdWordsの焦点は、お金を受け取るグーグルではなく、それを払う側にあるのだ。高い言葉を買う企業は、リアルの勝ち組でネットの負け組である。「そんな会社は消えてしまえ」とグーグル、いや、Gマシーンは言っているのだ。

AdWordsは、Gマシーンの意図を汲んだグーグルが、そういう会社の没落を早める為に用意した仕組みである。