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2016-10-22

渡辺竜王に私心はない!

(2017/01/03 追記)

この記事内の不正の有無に関する見解について私は後日考えを変えました。詳しくは下記の記事を参照ください。

(追記終わり)


将棋のソフト指し疑惑の問題、混迷を深めていて、何が真実かわからなくなっています。しかし、簡単にわかることがひとつ見過されているような気がするので、書いてみます。

それは、渡辺竜王がもし私利私欲で行動していたとしたら、彼にとっての最善の策は、三浦九段との竜王戦をそのまま戦うことだったということです。

渡辺竜王が三浦九段のクロを確信していた可能性は高いと思うのですが、そうだとしたら、竜王戦の最中かその後に三浦九段のソフト指しが露見する可能性も高いと読んでいたでしょう。

もし三浦九段が竜王戦でソフト指しをしたら、順位戦の対局と同様に負けてタイトルを奪取されてしまうかもしれませんが、その対局の棋譜は注目を集めて多くの人に研究されるわけですから、高位棋士も将棋ソフトの専門家もその内容に疑問を持つでしょう。

プロ棋士のソフト指しをどうやって見抜くのかは難しい問題ですが、タイトル戦での真剣勝負の棋譜が最低四局揃って、考慮時間、離席の状況、感想戦でのやりとりも全部詳細に報道されるので、今までよりは解析が進むはずです。

渡辺竜王が自分で動くより、タイトル戦でソフト指しをさせて、それを多くの人の目に晒すことが渡辺竜王にとっての最善の策です。それで直接的な証拠が出てくればいいし、出てこなくても、ソフト指しができないようなルールが制定されることは決まっていたので、誰にもソフト指しができないようになれば、真の実力者は誰かということは自然にわかってきます。

私は、渡辺竜王はそうすべきだったと思いますが、それは野次馬だから言えることです。タイトル戦の中でのソフト指し疑惑が出てくれば、竜王戦どころか将棋界そのものの存続にかかわる問題になります。そのリスクをかけて自分だけの利益を選ぶという選択はできなかったのでしょう。

逆に、渡辺竜王はシロと思っていたけど、疑惑の噂を利用して謀略をしかけたという可能性はどうでしょうか?

シロで複数対局の実力勝負であれば、渡辺竜王が勝つ可能性が高いと思います。もちろん勝負に絶対はないのですが、それは長年将棋界で戦っている彼には当然のことですから、それはリスクとは言えない。謀略がバレた時のリスクと比較すれば、とても割に合う賭けとは言えません。仮に、最近の三浦九段が急速に力をつけていて、「これでは今回は負けるかもしれない」と考えたとしても、羽生さんや森内さんなどの実力者と過去に何度も対戦しているわけですから、その時以上に「これはどんな手を使っても対戦を避けなければ」と思える相手ではないでしょう。

そもそも棋士というのは、負けることへの耐性はできているはずです。羽生さんだって四回に一回は負けています。衆目の面前でバサっと切られて言い訳のしようもなく負けるというみじめな経験を、どの棋士も何度もしてきて今があるわけです。一般人が「負けたくない」という思う感覚で考えてはいけないと思います。

だから、三浦九段のシロクロと関係なく、渡辺竜王が純粋に将棋界のことを第一に考えて行動したという点は間違いないと私は思います。

ただ、彼の行動が全部正しかったかどうかと言えば、いくつか疑問があります。報道が錯綜していて事実関係がわかりませんが、彼が暴走しているという面もあるように感じます。いくらタイトル保持者でも一プレイヤーが運営と一体になって動いたという点と、外部に客観的に示せる証拠をつかむ前に行動したということは問題があるかもしれません。

緊急時ということで、守るべき基本的な原則をこえる選択をしたわけですが、これは、将棋に関係なく多くの人が自分のこととして考えるべき問題だと思います。

AIは多くの人の仕事を奪うと言われていますが、それ以前に技術の急速な進展は、人間の社会における力関係をひっくりかえします。

将棋界は、今回のソフト疑惑騒動が起こる前から深刻な危機にあると私は思うのですが、この危機感の感じ方の違いが今回の問題の背景にあると思うのです。

「ボルトより軽自動車や原付の方が早いけど、ボルトに対する尊敬はゆるがない」などと言いますが、将棋ではちょっと意味が違います。プロ棋士と観客の力関係が逆転してしまうからです。今や、将棋の観戦は、スマホの技巧を片手にして、どちらが「正解」の手を指すかを見守るだけのものになりつつあります。ドラマ性や神秘性が救いようもなく失われていきます。

単純に携帯の持ち込み禁止を決めればいいものではなくて、今後、プロ棋士という職業にどういう意味があるのか、根本から問い直されている時代です。これについてわがこととして日頃から誰よりも真剣に考えていたのが渡辺竜王で、将棋連盟の幹部がその危機感を共有できてないことが、渡辺竜王の暴走につながってのではないか、私はそのように想像しています。

そして、「本当の危機の時、何が絶対守るべき原則で、どこまで踏みこえていいものか」という問いに、今後、将棋棋士だけでなくて、多くの人が直面すると思うのです。

事実を直視して正しい危機感を持てるかどうかは、能力や立場に関係なくて個人差が大きいようです。誰もが渡辺竜王の立場に立たされる可能性はあります。そうなった時、「上がバカだから俺は自分だけを守るよ」と言っていいものか、ということを私はずっと考えています。

ksysyksysy 2016/10/22 22:59 >いくらタイトル保持者でも一プレイヤーが運営と一体になって動いたという点と、外部に客観的に示せる証拠をつかむ前に行動したということは問題があるかもしれません。

ここはまさにその通りだと思うのですがだからこそ

>緊急時ということで、守るべき基本的な原則をこえる選択をした

ことが必要なほどの緊急時だったのか?という点に疑問があります。あくまで「客観的に示せる証拠をつかむ前」なほど証拠のない状況です。それで将棋界の信頼が地に落ちる直前の緊急時であったのか。

やるにしても電子機器の持ち込み禁止ルールを導入するような働きかけまでで、三浦九段が呼び出され取り調べを受けるような形を招くのはやり過ぎです。

essaessa 2016/10/23 07:16 最悪のケースは、三浦九段が実力で竜王を取ってから、別のマイナーな棋戦で文春にカンニングの証拠をすっぱ抜かれることだと思います。

私は三浦九段がクロだとしたら、それは単に事前研究を確認するためにノートの代わりにスマホを見るという感覚の、悪意のないものだと想像しているのですが、その分だけ不用意で成果を出したからやめることもないし、周到に隠す算段を考えていることもない。

だから、「三浦竜王がカンニング現行犯」という想定は、無視できないシナリオだと思うし、渡辺竜王も同じようなことを危惧していたと思います。

だから「将棋界存亡のレベルの危機」という認識は間違ってないと思います。

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