「いいねの世界」 −「like」と「いいね」の言語的な違いから考える−

Facebookmixiの「いいね」ボタンについて。

日本では「いいね」だが、海外のFacebookでは「like」ボタンである。
なので、「いいね」とはちょっと意味が違う。

どう違うかというと、例えば「本/the book」に対して考えた場合、「like」ボタンを押すということは「I like the book.」であり、主語は「I」である。
一方、「いいね」ボタンを押すということは「その本、いいね」であり、英語にすれば「The book is nice.」、つまり主語は「The book」である。


「like」は「I」=自分を主体にして考え、「the book」については、とやかく言わない。
あくまで、自分が「like」なだけであり、この「like」に対しては反論は成り立たない。
本人の「like」という好みについて、他人は口出しができないからだ。

つまり「likeの世界」は、「自分のお気に入り」を集めた部屋のようなものだ。
その部屋には、嫌いなものは不要であり、「dislike(=嫌い)」ボタンは必要ない。

一方、「いいね」は「the book」を主体にして考える。
「いいね」によって、たとえそのつもりがなくても、「その本、いいね」という「評価」を示してしまう。
そのため、この場合は「いや、その本はよくない」という反論があり得る。
しかし、「よくない」というボタンは無い。
結果として、日本のSNSは「いいね」だけで構成される。

「likeの世界」とは違い、「いいねの世界」は自分の部屋ではない。
そこは評価される場であり、かつ、肯定しか存在しない、非常にバランスを欠いた世界である。