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2008-11-28 感情的に訴えるということの意味 このエントリーを含むブックマーク

 ワロンによると,人間が発達する方向性の捉え方には,環境に働きかけて何かが出来るようになること以外にも,自分の中で自分の感情をたかぶらせ,それを周囲に発散するということのように,自己内環境への働きかけ,あるいは自己の表現とでも言うべきものもあるという。赤ん坊が精一杯の力を振り絞って泣くとき,それは自己内で感情を高ぶらせ,感情を盛り上げて,一気に周囲へと放出する。そのような活動も人間が発達を通して獲得する1つの力であると言える。

 さて,議論において意見を主張するときを考えてみたい。赤ん坊のように,感情を自分のなかでたかぶらせて一気に放出するような主張のストラテジーは効果的だろうか?もちろんそれを有効な主張方法だと思ってしまった人がいたら,その人は「あの人はいつもぶち切れちゃうから,話ができないんだよなあ」と言われてしまうだろう。しかし,ワロンの観点から考えると,そのような「ぶち切れコミュニケーション」にもある種の妥当性があるのが分かる。言葉が使えないような場合ではそのように,自分の感情を自分の全てで表現する方法によって,そのメッセージを周囲に伝播させることができるのである。

 したがって,言葉を覚えた大人が「ぶち切れ」方略を使うということは,言葉をメッセージの担い手として信頼していないことが伺われる。一見,言葉を使っていても,それを意味のレベルで用いることもできれば,全身をふるわせながら感情を発するその媒体として言葉を用いることができる。つまり,言葉は使い方によっては記号であるが,使い方によっては感情の波動を載せる空気の振動として用いられるのである。

 なぜ人によって言葉の使い方が異なるのか,これをワロンの理論から見てみるとおもしろい研究になるかもしれない。

 また,「ぶち切れ」コミュニケーションと,優れた弁論家が熱をもって話す場合とでは,なぜ前者は子どもじみていて,後者は責任を持った活動家として捉えられるのだろうか。前者と後者では根本的に何がことなるのか。

 と,ワロンを読んでいろいろなことを考えました。

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2008-02-21 京都大学:第14回大学教育研究フォーラム このエントリーを含むブックマーク

 今日は研究会のお知らせです。

 3月の終わりに京都大学第14回大学教育研究フォーラムが開催されます。大学における批判的思考の教育・研究にご関心のある方は以下のセッションに是非ご参加ください。

http://www.highedu.kyoto-u.ac.jp/forum/2007/index.html

第14回大学教育研究フォーラム ラウンドテーブル 

京都大学(吉田南1号館) 

2008.3.27(木) 13:30〜16:00

学習者間インタラクションを通した批判的思考力と高次リテラシーの育成


企画者:楠見 孝(京都大学)   

司会者:道田泰司(琉球大学

話題提供者:

楠見孝(京都大学) 協同学習による批判的思考力と心理学リテラシーの育成

鈴木宏昭(青山学院大学) 市民リテラシーのためのライティング育成環境 

岩男卓実(関東学院大学) 議論を通じた批判的思考力と論理的文章表現力の育成:大学導入教育における文章構成法教示の実践例

富田英司 (九州大学) 議論の質を測る 


本ラウンドテーブルでは,学習者間インタラクションを通した批判的思考力と高次リテラシーの育成について,その認知的基盤と測定手法について検討を行う.OECDでは,大学の学習成果評価のための試行調査において,高等教育において育成すべき能力として「批判的思考力」を調査対象にすることを検討している.また,PISA義務教育修了段階の学力調査では,読解・科学・数学リテラシーが測定されているが,これらには,実生活での知識の応用のためのコミュニケーション能力であって,証拠に基づいて判断する批判的思考力が重視されている.高等教育においては,これらのリテラシーに基づいて,高次の批判的思考スキルと専門的知識に基づく読解能力・コミュニケーション能力である高次リテラシーをいかに育成するのかが重要な課題である.その育成には,学習者間のインタラクションにより,コミュニケーションスキルの構成要素である能動的傾聴や議論のスキルを高め,省察を深め,批判的思考力を高めることが重要であると考える.そこで,4名の話題提供者が教育実践や効果測定について紹介し,全員で討論をおこない,今後の課題について検討する.

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2008-01-30 格差を生み出すのは・・・ このエントリーを含むブックマーク

 いま日経新聞では前FRB議長のアラン・グリーンスパン氏の自伝がコラム形式で連載されています。今日特にはっとさせられたのは格差が生み出される仕組みについての一言でした。

 現在社会は科学技術や知識の急速な革新によって、産業の現場では常に新しいスキルや知識の獲得が必要となってきています。しかし、人間はすぐにそれについていけるほど、がんばりやさんではありません。もちろん本気でがんばればついていけるでしょうが、みんなが本気を出してがんばれる訳ではないのが世の常です。そこで、現代社会においては、新しい技術や知識が必要な人にニーズが殺到し、需給関係のバランスから、必要な技術と知識を備えた人に高給が支払われるようになります。それに対して、それ以外の人の給与は相対的にさらに低くなっていきます。これが今回書かれていた基本的な仕組みです。

 もし格差社会が問題だというなら、どうすればいいか。氏が言うには、そこで教育が大事な訳です。市場価値のある知識と技術を備えた人が増えれば、労働の需給バランスから、給料の高低の差は狭まります。このマクロな視点がやはり金融行政の人という感じですね。

 グリーンスパン氏はアメリカの初等中等教育の改善が課題と考えているようでしたが、日本ではどこを変えるべきでしょうか。格差を今後日本で広げたくないとすれば、教育の成果に対して大幅なてこ入れが必要でしょう。教わる子供は柔軟であっても、教える大人が柔軟であるとは限りませんが、そこはどうやって解決すべきなのでしょうか。大学の役割はどういったものでしょうか。

 もちろんこんなに急速に変わっていく社会についていきたくないという人も多いでしょう。その場合の解決策も考えないといけません。もうすでに世界は急速な変化の渦の中にあり、もう誰も止められないでしょう。早い川の流れの中で立ち止まっておくには、しっかりとした土台が必要です。進歩についていかないとすれば、それはそれで大多数の人々の内面に大きな変化を必要とします。

 地球のように多くの人々が住む場所では互いの動きによって相互に大きな影響が生まれます。そこには大変な軋轢やストレスが生じます。集団生活って大変だなあとつくづく感じます。地球という壁のない部屋の中での100億近いメンバーでの集団生活を我々は送っているのですね。

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2008-01-21 阪大学長の記事:議論できる喫茶店を このエントリーを含むブックマーク

今日の日経新聞のコラム・コーナーで,大阪大学学長の鷲田清一氏のインタビュー記事を拝見しました。

内容は一言で言うと,いま流行の日本のカフェでは議論ができていないし,かつてのジャズ喫茶などのように文化も担っていない。17世紀後半の英国で生まれたコーヒーハウスをモデルに,政治や学問や身近な問題について自然に話し合うカフェを作っていくべきだいうものでした。

こういった提言はこれまでも多くあったのですが,期待できるのは既にある試みが始まっているとのこと。阪大と喫茶店会社と鉄道会社がくんで今計画をすすめているのだそうです。

大阪には福岡と少し違って,見ず知らず人たち同士で議論をする風土があるように思えるので,阪大がこういった動きをみせるのはある意味自然なことかもしれない。また,鷲田氏が京都大学哲学科卒なのも大きく関連しているだろうなということを感じさせます。

翻ってここ福岡にはどんな文化的素地があるだろうかと考えると,1つは「博多にわか」じゃないかな。以前の福岡には,中央に対してもの申すという独自の気概あったことが博多にわかの中に感じることができます。政治や経済,社会のことを自分たちのこととして,直接知らない人同士と議論を共有することは,この時代,欠かせないと思う。それを引っ張っていくのが大学の役割の一つだと思っているので,まずは大学の中で議論することが大事なのかもしれないと思います。

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2007-12-25 アーギュメントの要素を図示する このエントリーを含むブックマーク

 以前から教育心理学の領域では,主張を組み立てる際の規範的モデルとして,トゥールミンのモデルが利用されてきました。このような主張の組み立てを図示してきた人々の研究をレビューした論文をたまたま見つけたので紹介いたします。

Chris Reed and Glenn Rowe(2007)A pluralist approach to argument diagramming. Law, Probability and Risk

http://lpr.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/mgm030v1

この論文によると,最初に図示をしたのはWhatelyという人だそうで,1850年のことだそうだ。ただし,鵜呑みにするのはたぶん危険でしょうね。だって,だれでも図示ぐらいできるでしょう。主張とそれを支える理由付けを線で結ぶとか。

 この本を読んでみて確かめてみないとね。新年あけたら注文してみよう。

Elements of Logic

Elements of Logic

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2007-12-13 教育再生会議の第3次報告書原案 このエントリーを含むブックマーク

 教育再生会議の第3次報告書原案では,大学教育については「英語での授業を増やす。当面30%の授業を英語にすることを目指す」ことが盛り込まれていました。

 ネット上でも検索しましたが,なぜか多くの新聞社のサイトでは,このことは取り上げられていなかった。日経新聞では取り上げられていました。12月12日朝刊の42面。

 これは是非実現したらいいなあと思います。

 他にも,この日の記事では熊本大学にe-ラーニングの博士課程が初めてできたということが掲載されていました。しかし,インストラクショナル・デザインという用語は使われていませんでした。これは自分用のメモです。

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2007-12-08 Goldin-Meadowのジェスチャー研究 このエントリーを含むブックマーク

Susan Goldin-Meadowというジェスチャー研究者の研究紹介サイトです。

彼女の研究が動画つきで紹介されていますので,大変お得です。短いので読みやすいですし。

http://goldin-meadow-lab.uchicago.edu/sgm/sgm_research_state.html

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2007-12-06 Eureka !!!! このエントリーを含むブックマーク

 この間の放送大学の面接授業以来,多くの方に書き込みをいただきました(個別にはお答えできませんが,本当にありがとうございます)。それについて,自分は授業で何をして差し上げることができたのだろうか,また,これから何をもっとして差し上げることができるのだろうかと考えていました。心理学者として,講師として。

 そして,茂木健一郎氏のブログがたまたま目に映って,またまた過酷なまでなハードスケジュールぶりを確認しました。「茂木さん,一体何をしようとしているのか」 別に本人に実際にお聞きしたい訳ではない。茂木さんのブログを見る度に,何が彼をそこまで走らせるのか,つい僕は自問自答しまっている。つまり,心の中で茂木さんらしき影(そこには自分も入り込んでいるが)と対話しているという訳です。

 この2つの想念がさっき一瞬交差しました。唐突で訳が分からないと思いますが,それを覚悟で書きますと,学者の役割が僕のなかで1つ明確になったのです。特に心理学の責任は重いかもしれません。

 それは何か。学者の社会的責任とは「人の思考や想念の深さを受け止め,共感するかどうかは別として,さらに深い思考や想念を披露することで人に何かを訴える」そういうことかもしれないと思い始めました。これは僕にとって非常に大きな発見だと思っています。ソクラテスとかそういった知の巨人達の偉大さとは,人の思考や想念の深さを死後も数千年にわたって受け止めてこれたことにあるような気もしてきました。

 これは情念を受け止めるのとはまた少し違うのです。情念を受け止めることの重要さは現在においては特に知られています。それは例えばカウンセラーや教師が子どもの声を聴くことが重要とされていることから分かると思います。

 ただ,思考や想念の深さはおそらく,大学にいるかどうかは全く別にして,学者しか受け止められないものだと思います。市井の人々の深い思考や想念は受け止める場所を待っているのかも知れません。そのような受け止める場所が大学やカフェであってほしいと心から思います。そして,僕自身は人の深い思考や想念を受け止めることのできる学者になりたいと思います。それが研究者としての1つのゴールかもしれないなと,そんな気もしてきました。

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2007-12-01 放送大学面接授業の授業記録 このエントリーを含むブックマーク

「創造的な学びと思考の心理学」受講生のみなさま

 書き込みありがとうございます。二日間ご静聴ありがとうございました。

 以下に,授業中ご紹介したものを再掲致します。

http://www.iknow.co.jp/

http://gc.sfc.keio.ac.jp/

http://cookpad.com/

 授業中に,実は日本の小学校教育の評価が国際的に高いことを申し上げましたが,1つ参考になる情報がありました。以下のものです。

http://benesse.jp/berd/center/open/syo/view21/2007/07/s01toku_16.html

Yu・UchYu・Uch 2007/12/02 19:49 2日間放送大学で講義を担当していただきありがとうございました。仕事や子育てで面接授業もほとんど取れませんが、今回思い切って受講し、久しぶりに大学生気分でした。ありがとうございました。

n-osin-osi 2007/12/02 20:08 本日資料のページを開くことができました。先生の講義を受けるのは実は2回目でした。心理学の分野は聞きなれない語句が多いのでやはり混乱しておりますが、教育と関連するので少しずつ理解できるようになりたいです。

chiーchichiーchi 2007/12/02 20:28 わーい。スライドまで載せて頂いてありがとうございます。
大変ためになる授業でした。これからの人生に役立てようと思いました。
縞模様の例えが、豚バラ・・・笑ってしまいました。このインパクトにまけないように第三章も熟読して忘れないようにします。

YAーYAYAーYA 2007/12/03 00:39 楽しい面接授業でした。2日間がすぐに終ったように思えます。1日目スライドをコピーさせて頂きました。 ありがとうございます。

sample9-happysample9-happy 2007/12/03 01:15 初めての面接授業で、はじめは緊張したのですが、とても楽しくて、あっという間に引き込まれてしまいました。直接うかがってみたい事もありましたが・・・。また、先生の講義を受ける機会が来る日まで、楽しみをとっておきたいと思います。考えがあふれて、とりとめの無いレポートになってしまいました・・・先生こそおつかれさまでした、ありがとうございました。

Yoshi_hi_okYoshi_hi_ok 2007/12/03 09:44 仕事の都合で面接授業がなかなか取れず今回が初めてです。充実した時間でした。本当にありがとうございました。余談ですが「Iknow」を子供と一緒にさっそく体験してみました(笑)
今後の先生の研究を楽しみにしております。

ピグロリンピグロリン 2007/12/03 11:40 二日間の講義お疲れ様でした。そんなに早口でもありませんでしたよw
さて、先生に勧めていただいた本「科学と宗教」ですが、数種発刊してあってどれか迷ってます。
著者について今一度ご教示いただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。

ピグロリンピグロリン 2007/12/04 14:33 早速のご掲示ありがとうございました。
池田○作著なんてのもあって(ただの対談ものみたいですが)
それ読んでたら今頃入信してるかもしれないとこでしたw
無い(( ̄_ ̄ )(  ̄_ ̄))無い ヾ(>▽<)o

eteduetedu 2007/12/04 22:11 皆様方
 書き込みありがとうございます。大変励みになります。今後もみなさんがお元気で活躍されることをお祈りしております。

maverickmaverick 2007/12/04 22:59 2日間、講義をありがとうございました。
医療現場で臨床指導者として活動しているので、得るものが多かったと思います。
先生の授業があれば、放大以外にも参加したいと思います。
お体に気をつけ、ご活躍ください。

http://mixi.jp/show_friend.pl?id=7826553

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2007-11-27 これはすごい!デモックス(democs)とやら。 このエントリーを含むブックマーク

 大阪大学CSCD科学技術コミュニケーション・デザイン・プロジェクトの非公式ブログで,デモックス(democs)というのを見つけました。

http://cscd-stc.weblogs.jp/blog/2007/10/post_5f93.html

 ゲーミング・シミュレーションによって,市民生活にとって大事な問題についての理解を楽しく(?)みんなで深められるというものです。

http://www.neweconomics.org/gen/democs.aspx

 登録すれば,ゲームのためのキットをダウンロードして,誰でもやってみることができるようです。さっそくやってみようっと。議論教育にも使えるかどうか検討してみます。

YA−YAYA−YA 2007/12/04 23:23 またまた新しい情報をありがとうございました!! 「日本の小学校教育が国際的に評価されている」とのこと。30年程前に米国(ロス)の幼稚園を見学した事がありますが、幼児をテストで能力別のグループに分けて文字等を教え、休息時間に教師は子どもが遊んでいるのをポケットに手を入れて見ているだけでした。笛で子ども達に休息時間の終わりを告げ警察官のようで驚いたことを思い出しました。そこの幼稚園だけかと思っていました。ご紹介頂いた資料を拝見して、日本ではプロ意識をもって子どもの個性を配慮した指導をめざしたり、教師間で研修したりしていることが国際的に認められるようになったとのこと、とても嬉しく思いました。日本の先生方は本当に良く頑張っていると思います。 2日目のスライドありがとうございました。

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