Let's try SAKE flights!「楯の川酒造」

渋谷 東急フードショー presents Let's try SAKE flights!- 東京。
楯野川の試飲会に参加してきたのでその備忘録。


イベントの流れ

蔵元による日本酒講座
歴史、製法、種類やそれぞれの楽しみ方、海外に持っていく際の注意点など、日本酒について様々な情報を提供します。

日本酒&おつまみ テイスティング
楯の川酒造が選ぶ6種の日本酒をテイスティング。それぞれのタイプの楽しみ方やおすすめの酒器などについてご紹介します。

日本酒と酒器をプレゼント
【楯の川酒造】の日本酒とテイスティングでお使いいただいた竹製『酒器』をプレゼント!

お酒の販売
イベント後は渋谷 東急フードショーのお酒売場での講座やテイスティングで気になった商品をご購入いただけます!

jp.wamazing.com

精米

商品ページを見るに、精米歩合1%にするためには出羽燦々は約75日間、山田錦は約2ヶ月半かけて精米するらしい。

www.tatenokawa.com

飲み比べ

種類

乾杯酒: 楯野川 純米大吟醸 清流(原料米:出羽燦々、精米:50%、酵母:山形KA)
1: 楯野川 純米大吟醸 美しき渓流(原料米:美山錦、精米歩合:50%、酵母:山形KA)
2: 楯野川 純米大吟醸 主流(原料米:山田錦、精米:50%、酵母:山形KA)
3: 楯野川 純米大吟醸 本流辛口(原料米:出羽燦々、精米:50%、酵母:山形KA)
4: 楯野川 純米大吟醸 上流(原料米:美山錦、精米歩合:40%、酵母:山形KA)
5: 楯野川 純米大吟醸 十八(原料米:山田錦精米歩合:18%、酵母:山形KA+協会1801号)
6: 楯野川 純米大吟醸 涅槃 黒 2020(原料米:惣兵衛早生、精米歩合:18%、酵母:蔵付酵母

乾杯酒から3はおちょこで、4から6はグラスで。

個人的には6番が好みだった。

ついでに仕込み水。

比較

乾杯酒と3番、出羽燦々の飲み比べ、磨き50%と40%の比較。
1番と4番、美山錦の飲み比べ、磨き50%と40%の比較。
2番と5番、山田錦の飲み比べ、磨き50%と18%の比較。
4番と5番、精米歩合18%の飲み比べ、山田錦と惣兵衛早生の比較。

おつまみ

いぶりがっこ金山寺味噌、からすみ。


リキュール

リキュールの試飲もできた。
たてにゃんのパペットかわいい。

一ノ蔵「酛摺り特別見学ツアー」

一ノ蔵「酛摺り特別見学ツアー」に参加したのでメモ。
生酛にフォーカスしたイベントは今回が初らしい。

教えてもらったこと

ツアーとしての説明の他、蔵で以前酛を担当されていた方や広報の方に直接質問した内容も。
詳しくいろいろと教えていただけた。

・吸水歩合は28%、摺るからと言って柔らかくする訳ではない。
酒母1日目は蒸米を5度くらいで半日くらい放冷して、その後水麹を品温6度、室温6度で仕込む。
・生酛は汲みかけしない。
・酛摺りをするのは酒母2日目、温度は引き続き6度。
・菌が増える速度に合わせて酒母の濃度(液化、糖化、浸透圧)を徐々に変えていくために酛摺りは時間を空けて4回に分ける。
・生酛は山廃に比べて濃度を人間がコントロールできるので再現性が高くなる。
一ノ蔵の場合、生酛の酒母に使う米は45kg、約1600L(4号瓶で約2200本)の酒が出来上がる。
・山廃はその3倍くらいの量を仕込む。
・生酛でも山廃でも酒母の日数は変わらない、摺るからと言って短くなる訳ではない。
・ヤブタは4台、銘柄(酒質)によって使い分ける。低アルコールで糖度の高いものは粕剥がししづらい。

雑感

酛摺りはやってもやらなくても乳酸菌は湧くという理解だったけど、菌が育つ環境をコントロールするための手段だというのは考えが及んでいなかった。
人間が介入して山卸しをすることで正しく環境をコントロールし菌育成の再現性を高めることができるというのは言われてみれば確かにそうだなと腑に落ちた。
時代の流れと技術の進化と回帰、とても興味深い。

山卸しをした場合と山廃を比べたときに、山卸しをすると米をすり潰す分雑味など味に影響は出る?と気になって質問してみたけど、特にデメリットにはならないらしい。
山卸しするにしてもしないにしても結局は酒母分の米はすべてドロドロになるから関係ないということなのだろうか。

写真

蔵外観。

資料。

酒母

山卸し。

枯らし室。

洗米。

浸漬。

醪。

上槽。

試飲。

お土産。
左から、
浦霞 山廃純米大吟醸 ひらの
一ノ蔵 生酛特別純米酒 耕不盡(こうふじん)
一ノ蔵 ひめぜん
一ノ蔵 熟成酒 招膳(しょうぜん)

バナナから酢酸イソアミルの抽出を試みる

本物のバナナからバナナフレーバーの抽出はできるのか?
それを日本酒に添加したら酢酸イソアミル高生産酵母を使った日本酒みたいになるのか?
ってのを実験。

バナナと酢酸イソアミル

まずはこの動画を参考にして、バナナと酢酸イソアミルの関係性を知ることにする。
動画の趣旨はこんな感じ。

バナナ味のラフィータフィー(アメリカのお菓子)は本当にバナナの味なのか。
人工的なバナナフレーバーが実際のバナナにも含まれる場合、どのバナナがそのフレーバーを最も多く含んでいるのか。
言い換えれば、どのバナナが最もバナナっぽい味なのか。

Why Doesn’t Banana Candy Taste Like Banana?

以下要約。

バナナの香気成分

人工的なバナナフレーバーを生み出しているのは、酢酸イソアミルという単一分子。
バナナには酢酸イソアミルは含まれている。
しかしバナナには酢酸イソアミル以外にも香気成分が多く含まれているので、人工的なバナナフレーバーとは一致しない。

バナナの品種

昔はGros Michelが主として栽培されていたが1950年頃からCavendishが主流になった。

バナナフレーバーの生い立ち

バナナ味や人工的なバナナフレーバーは、バナナがアメリカの市場で一般的になるよりも前から存在した。
なので多くのアメリカ人がGros Michelを味わう前に、合成化学版のバナナフレーバーを味わった可能性は十分にある。
人工的なバナナフレーバーは実在するバナナの香りから由来していない。
酢酸イソアミルは1800年代の科学者が炭素ベースの分子を実験していたところから生まれた。

酢酸イソアミル

酢酸イソアミルはエステルで、炭素と2つの酸素ともう1つの炭素を持つ分子。
イソアミルアルコールと酢酸を混ぜ触媒を加え加熱することで酢酸イソアミルが出来上がる。

バナナから酢酸イソアミルの抽出方法

モネル化学感覚研究所のDr. Pam Dalton曰く:
バナナを潰して純アルコールに入れ、しばらく蒸らして固形分を抜けば、本質的なバナナエッセンスのようなものができるはず。

動画内での方法:
10種類のバナナを10g、50g、100gと用意して、それぞれアルコール度数95度のエタノール60mlに浸す。
高濃度エタノールとしてEVERCLEAR GRAIN ALCOHOL 190 PROOFを使用。
浸した期間は不明。

バナナから酢酸イソアミルの検査結果

酢酸イソアミルを最も多く含む品種はGros MichelとCavendish。
また、検査したバナナのほとんどに酢酸イソアミルが全く含まれていなかった。

バナナ酵母

カプロン酸エチルの香りは単体で嗅いだことがあるので、どの香りがカプロン酸エチルなのか明確にわかる。
しかし酢酸イソアミルの香りは単体で嗅いだことがないので、どの香りがそれなのか明確にはわかっていない。
なので憶測と仮説。

以前、バナナ酵母で醸した日本酒「天吹 恋するバナナ 純米吟醸 生」を飲んだときに、本物のバナナではなく「明治 バナナチョコ」の味だと感じた。
飲んだ当初は、本物のバナナの酵母を使っているのになぜお菓子のような人工的な味がするんだろうか?と不思議に思ったが、上記のバナナと酢酸イソアミルの関係を見るにこの感覚は正しいのかもしれない。

バナナ酵母に以下のような特性がある場合、お菓子のバナナ味だと感じることが是となる。
・酢酸イソアミルを多く生成する。
・バナナを構成する香りのうち酢酸イソアミル以外の香気成分を多く生成しない。

もちろん日本酒は複数の香気成分や酸が混ざり合っているので複合的に本物のバナナの味のようだという感じ方もあるだろうと思う。

「天吹 恋するバナナ 純米吟醸 生」と「明治 バナナチョコ」

バナナと日本酒

さてここからは実験。
上の動画にもあるように、高濃度エタノールにバナナを漬けてエステルを抽出してみる。
うまくいけばバナナからアルコールに溶けやすい香気成分だけが抽出できるはず。

用意したもの。
・山梨銘醸 七賢 高濃度エタノール65
・生バナナ
・冷凍バナナ(1年くらい前に冷凍庫に入れて存在を忘れ去っていたもの)

漬け込み

30gの高濃度エタノールに30gのバナナを入れて潰して置くことでエステルを抽出した。
左は新鮮な生バナナ、右は黒くなった冷凍バナナ。
番外編としてバナナの皮でもやってみようかとも思ったけど、農薬がエタノールで溶けて身体に悪いと嫌だからやめておいた。
その分野にはさっぱり詳しくないので疑わしいことはやらないほうがいい。

漬け込み開始
濾過

大体20時間くらい漬けた。
これをティーパックに入れて濾過。

漬け込み開始から20時間後
アル添

濾過して出来上がったものを酢酸イソアミル系の純米酒に添加する。
バナナエッセンス本醸造の出来上がり。

左から、純米酒、生バナナエッセンス本醸造、冷凍バナナエッセンス本醸造
結論

漬け込み時間に関しては、時間経過と共に、エタノール感→アル添感→リキュール感、と変化していく感じがあった。
数時間置きに香りと味の確認をしてみたけど、後半になるにつれ普通にバナナが分解されていき香りよりも味が強くなり甘さも出ていた。
香りに関しては前半の方が強く香っていた。
4〜5時間も漬ければ十分だった気がする。

香気成分に関しては、やはり酢酸イソアミルだけという訳には行かず普通に本物のバナナだった。
バナナ酵母から感じたような人工的なバナナフレーバーを感じることはできなかった。
しかしアル添して本醸造として飲んでみると、まぁそっち系統の酢イソ系日本酒もあるよなぁという感じがしなくもない。
ただバナナのねっとりした雑味は強い。

味(甘みや雑味)を極力減らしてエステルを多く抽出するにはこんな感じかなと思う。
・熟していないまだ固いバナナを使う。
・バナナの繊維を壊さないために潰さずに包丁で切る。
・バナナの漬け込み時間は長くても4〜5時間。
・しっかり濾過する。(ティーパック→コーヒーフィルターと2重にするなど)

アル添酒における「醸造アルコール感」「アル添感」というのは、醪量と醸造アルコール量の比率や加水の具合、最終的なアルコール度数あたりで決まるものかと思っていたが、エステル成分量と醸造アルコール量の比率も関係しているのかもしれない。
まぁ単純にエタノール感をマスクする要素が他にあるかどうかという話だとは思うけど。

清酒醪へのアル添の場合、エステルが醸造アルコールに移り、且つ高アルコールによる酵母の死滅が起こらない程度の時間に留めるのがセオリー。
エステルを醪に移す」「エタノール感(アル添感)を出さない」「酵母を死滅させない」の3点を最大限実現する醸造アルコールの添加量と絞りまでの時間を見極めるというのも杜氏の技量なのだろうと思う。

瓶燗火入れについての実験と考察

寸胴鍋と低温調理器を買った。
四合瓶の瓶燗火入れが出来るようになった🍶🔥

生の夏酒を火入れして火入れ通年酒みたいな食中酒に変化させることができるのか?ってことを実験してみたので雑感。
ちなみに、自家アル添、自家加水、自家ブレンド、自家火入れ、ひいては自家熟成も蔵元の商品コンセプトを否定する消費者の劣悪なエゴでしかないと思っているのでラベルは隠しておく。

用意したもの


瓶燗火入れする対象

・奥の緑のボトル
純米無濾過生原酒。
精米歩合70%。

・右手前の青のボトル
純米生酒。
精米歩合60%。

・左手前の緑のボトル
温度確認用の水道水。

瓶燗火入れする設備

・寸胴鍋
24cm、約10L。

・低温調理器
Vsadeyというメーカーの商品。
爆発しても文句言えないくらい安い。
温度の誤差は、水だけ温めた場合には水温は設定温度よりも1度程度高くなる模様。
ものを入れたらちょうど設定したくらいの水温になるのかなという感じ。

自家瓶燗火入れ

期待する変化と仮説

生酒感、フレッシュ感、香りをなくし、落ち着きのある火入れ通年酒みたいな食中酒に変化させたい。

一般に火入れの技術としては、いかにフレッシュ感を保持したまま殺菌するかが焦点になっているように思う。
しかし今回求めているのは是とされている火入れ技術の反対。
つまり、下手くそな火入れをすれば期待する酒になる…?

フレッシュ感を損なわせることが目的ならば瓶燗火入れではなく蛇管スタイルの火入れ方法の方が良い気がするけど、少量の場合瓶燗火入れの方が楽なのでとりあえず瓶燗火入れでやってみる。

火入れ方法

瓶が割れたら嫌なので、2段階で温めることにした。
50度で保温、冷蔵庫から出したての瓶投入、63度で設定し直し、瓶内の温度が62度を超えてたあたりから20分くらい加熱し続ける。
加熱が終わったらお湯を捨て水道水を張り直す、水がぬるくなったら再度水道水を張り直す。
ある程度冷えたら冷蔵庫へ。

この方法で最高温度63度、水道水で冷やして27度くらい、そこから冷蔵庫へ。

小規模且つ北国ではない地域の課題。
・寸胴鍋の体積が小さいので冷えた瓶を投入すると水温が下がる。
・5月東京の水道水はぬるいので急冷は難しい。

実際の変化

生酒と自家火入れのお酒を比較すると、鼻に抜ける香りの広がりが弱まったように思う。
それ故の落ち着きはあるものの、一般に思う生/火入れの差というよりは、開栓直後/開栓数日後の差のような違いに感じる。
しかし若さというか喉に直接来る感じの青さ(?)は変わらず、期待するような食中酒にはならなかった。

無理やり差を見出そうとするとそんな感じだが、実際のところはそんなにいうほど違いはない。
やはり瓶燗火入れというのは劣化の少ない火入れ方法なのだろうと思う。
生の味わいを残したまま殺菌するのであれば瓶燗火入れは有用だが、火入れらしい味わいを求めるのであれば瓶燗火入れは適さないのだろう。

今回の自家火入れは少量ということもあり、思いの外質の高い火入れとなってしまったのかもしれない。
もっと味わいを変化させるような瓶燗火入れをするなら、
・水から温める。
・長めに火入れする。
・自然に冷えるのを待つ。
くらいでもよかったかもしれない。

蔵での瓶燗火入れ

今まで見てきた3つの蔵の瓶燗火入れの様子。
一応蔵の名前は伏せておく。
写真の撮影時間は、加熱し始めから冷却し始めまでという訳ではないので参考程度に。

蔵A

水に瓶を浸けてお湯をかけ流して徐々に加熱。
水のシャワーをかけて冷却。

写真のEXIF情報が飛んでしまっていたので撮影時間は不明。


蔵B

瓶をお湯に浸けて、お湯の中でP箱を動かしながら急速加熱。
水に瓶を浸けて、その上から雪をかけて急速冷却。

ここの蔵は瓶燗火入れ作業で温度差により瓶を結構割っていた印象がある。
当時は「あーやっちゃったな、もったいないな」くらいにしか思ってなかったけど、今思うと劣化を抑えるべくかなりキワキワな温度差を攻めた火入れをしていたんだなと思う。

1枚目:11時7分。
2枚目:11時12分。


蔵C

水に瓶を浸けて、お風呂の追い焚きの要領で水を循環させて徐々に加熱。(だったような気がする)
水のシャワーをかけて冷却。

1枚目:12時9分。
2枚目:13時12分。


あとがき

自家瓶燗火入れは、多少の劣化はあるものの個人的にはいうほどではないと感じる。
生酒を長期熟成させたいもしくは常温保存したいというような特殊な場合には有効なのでは。

消費者としては、落ち着きのある食中酒が飲みたいなら火入れ通年酒を最初から買った方が良い。
適宜熟成もされてるだろうし。

リゾープスとオリゼーの比較

今回はリゾープス(クモノスカビ)とオリゼー(黄麹菌)の比較をしていく。
主に酵素力価と生産する酸について。

比較

繁殖対象

黄麹菌は蒸米で増殖しやすくリゾープスは生米で増殖しやすい。
その理由は酸性カルボキシペプチダーゼ(ACPase)の力価が関係している。

蒸米では米の蛋白が熱変性し酵素作用を受けにくくなるため,ACPase力の低いリゾープスはN源の供給不足をきたし増殖が著しく低下する。
しかし,黄麹菌はACPase活性が高いのでその影響をあまり受けずよく増殖しアミラーゼ活性も高く,でん粉糖化力の強いバラ麹を造ることができる。
サワーにごり酒 2.撒麹と餅麹

酵素力価

オリゼー、白麹、リゾープスの力価の比較。

酵素力価を第4表に示した。
リゾープス麹は,オリゼー麹に比較すると糖化系の酵素力価が低い。
とくに,α-アミラーゼの酵素活性が低い。
そこで,リゾープス麹を酒造りに用いる場合,生産された酸を有効に活用することになる。

第4表 麹の酵素力価(U/g麹)
サワーにごり酒 3.リゾープス麹の特徴

複数のリゾープス属の菌株とオリゼーの力価と酸度の比較。
A=α-amylase, AP=acid protease, GA=gluco-amylase.

酵素活性は一般の清酒麹の活性と比較すると,Aで,1/400~1/100,GAで1/60~1/10と低かった。
APでは,1/4からほぼ同等程度示すものもありアミラーゼ系より強かった。
酸の生成では,リゾープス属はいずれも対照より多かったが,特にR.javanicus IFO 5442が酸度2.0と対照のA.oryzae RIB 128の0.2に対し10倍多かった。

第2表 酵素活性と生酸性
リゾープス属の清酒醸造への利用 実験結果 1.菌株の選定

有機酸組成

リゾープスが生産する酸の種類について。
リゾープスの菌種は、主にフマル酸を生産するもの、主に乳酸を生産するもの、フマル酸と乳酸の両方を生産するもの、の3種類がある。
またフマル酸を生産する菌種には微量のクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸を生産するものもある。

著者等は下記十七種の「リゾウプス」に就て其生産する酸を研究し或者は「フマル酸」を主産物とし又た他のものは乳酸を主産物とし更に他のものは兩者を共に生産することを確め且つ初めのものは微量の枸櫞酸及林檎酸酒石酸?を産する外更に痕跡の琥珀酸を生産するものあることを認めたり而して主として「フマル酸」を産する種類こしては Rhizopus Oryzae, R.tonkinensis vullemin, R.formosensis Nakazawa, R.form. var. chlannydosporus Yatnazahi, R.Candidus, R.chanknoensis Yamazaki, R.Hangchow Yamazaki, Rhizopus G.34 Yamazaki, R.Chiumiang Yamazaki, R.Delemar Wehmeret Hanzawa, R.niveus Yamazaki, R,albus Yamazaki の拾貳種を得又た乳酸のみを生産する種としては R.Salebrosus Yamazaki, R.G. 36.Yamazaki の二種更に「フマル酸」及乳酸を産するものとしては Rhizopns Chinensis Saito, R.liquefaeieu YamaLaki, R.pseudochinensis Yamazaki, の三種を見たり而して上記十七種は悉く少量の揮発酸を産するを知られたり
リゾウプス屬の生産する酸の性質に就て

酵母の働きによって転換される酸について。
フマル酸はリンゴ酸へ転換される。

生成される酸は菌種によっても異なるが,一般にはフマル酸が多くつくられる。
フマル酸は酵母の発酵によってリンゴ酸へ転換されることが推測される。
リゾープス属の清酒醸造への利用 緒言

オリゼー、白麹、リゾープスの有機酸組成の比較。

リゾープス菌の生酸性については多くの研究があり,菌株によっても異なるがフマル酸の生産性が高い。
第5表に麹の有機酸組成を示した。
焼酎用麹はクエン酸が主体であるが,リゾープス麹はフマル酸,リンゴ酸が多く,4~12mg/g麹有機酸が生産される。

第5表 麹の有機酸組成(mg/kg麹)
サワーにごり酒 3.リゾープス麹の特徴

あとがき

麹学(ネットで公開されていない書物)から直接引用しないためにネットで公開されている文献から引用してまとめたけど、結局は麹学を読んだほうがいい。
麹学に書かれている内容は、オリゼーに関しては専門的過ぎて訳わかんないけど、申し訳程度に書かれているリゾープスは程よい塩梅で専門的。
しかしまぁ高い。(5,500円+tax)

アミロ菌・アミロ発酵法について

今回は紹興酒醸造に使われるカビ、主にクモノスカビの種類と特徴について。
そして、アミロ菌とアミロ発酵法とは一体なんぞや?というお話。

毛カビ属 (ムコール)

菌界 ケカビ亜門 ケカビ目 ケカビ科 ケカビ属、に属する菌について。

ムコール・ルーキシー / Mucor rouxii Wehmer

由来:Calmetteが支那の酒薬の微生物研究中に発見分離。
毛カビ属の一種だと認められる前はアミロミセス・ルーキシー(Amylomyces rouxii)と呼ばれていた。
アミロ法の名前の由来になった菌。
発酵工業上「アミロミセスα」と呼ばれる。

糖化とアルコール発酵を兼ね営む。
高粱酒醸製に用いられている支那酵母中にこれを検出している。
酒薬が澱粉を糖化し直ちにアルコールを生産するのは酒薬内に存在するムコール・ルーキシーの営みによるもの。
発育適温は37〜40度。

アミロ法によるアルコール製造用として注目されたカビであるが、その後アミロ法は研究と改良が加えられ、優良カビが発見され、現在ではアミロ法にはムコール・ルーキシーは全く利用されていない。

その他

名前だけ紹介、気になったら各々調べてね。

ムコール・ムセドー / Mucor mucedo Linne
ムコール・ピリフォルミス / Mucor Piriformis Fischer
ムコール・ヒーマルス / Mucor Hiemalis Wehmer
ムコール・ラセモーズ / Mucor racemosus Fresenius
ムコール・ジャヴァニクス / Mucor javanicus Wehmer
ムコール・プライニー / Mucor Praini Nechitch
ムコール・チルチネロイデス / Mucor cireinelloides Van Tieghem

有用黴学 第五章 毛カビ属 (ムコール)

クモノスカビ属 (リゾープス)

菌界 ケカビ亜門 ケカビ目 クモノスカビ科 クモノスカビ属、に属する菌について。

リゾープス・ジャポニック / Rhizopus japonicus Vuillemin

由来:Boidinが米麹中から発見分離。
発酵工業上「アミロミセスβ」と呼ばれる。

糖化力が強いのでアミロ法に用いられる。
繁育適温は35〜38度。
胞子嚢の形成は35〜37度に於いて迅速、且つ多量。
38度以上に於いては菌糸を生ずるが胞子嚢を形成することはない。

以下、関連する研究。
Rhizopus japonicus sp. 由来のリパーゼ活性
Rhizopus japonicus NR400 の産生する菌体外リパーゼ

リゾープス・トンキネンシス / Rhizopus Tonkinensis Vuillemin

由来:Boidinが支那の酒薬から分離。
発酵工業上「アミロミセスγ」と呼ばれる。

アミロ法に用いられる。
適温は36〜38度。
蔗糖、イヌリンを発酵しない。
トレハロースを発酵する。

以下、関連する研究。
Rhizopus属の糸状菌培養液の腐造乳酸菌増殖抑止効果と速醸もとへの利用

リゾープス・デレマー / Rhizopus Delemar Wehmer et. Hanzawa

由来:Delemarが支那の酒薬から発見分離。
澱粉の糖化力が極めて強く、生酸力が弱いので、古くから現在に至るまで広く使用されてきている。
発育温度は12〜42度、適温は25〜30度。

以前麹と曲の違いと酒税法上の扱い - よしだ’s diaryでも紹介したように、新政2021年の頒布会7月分「C-Type」で使われているクモノスカビはリゾープス・デレマー。

クモノスカビにもさまざまなタイプがあり、今回使用したのは激しく酸っぱい有機酸(フマル酸)を生成するタイプの「Rhizopus delemar」を用いたとのことでした。
【飲み比べ】新政頒布会 2021【7月分】No.6「K-Type」「C-Type」その味わいは? | ねこと日本酒

リゾープス・ジャバニクス / Rhizopus Javanicus Takada

由来:武田義人博士が南洋産ラギから発見分離。
従来アミロ法に用いられてきたアミロミセスα、β、γ、Rhizopus Delemarに対して強力な澱粉液化並に糖化力を有し、甘藷(さつまいも)の澱粉糖化を容易に行い、繁殖が旺盛で、繁殖温度も高く、胞子嚢の形成も極めて多い。
発育温度は10〜40度、適温37度、死滅温度60度。

その他

名前だけ紹介、気になったら各々調べてね。

リゾープス・ペイカ / Rhizopus Peka I Takeda
リゾープス・ペイカ / Rhizopus Peka II Takeda
リゾープス・ニグリカンス / Rhizopus nigricans Ehrenerg
リゾープス・フマリクス / Miyagi et Kaneko
リゾープス・トリチチ / Rhizopus tritici Saito
リゾープス・オリゼー / Rhizopus Oryzae Went et Pr. Geerligs
リゾープス・フォルモセンシス / Rhizopus formosaensis Nakazawa
リゾープス・ヒネンシス / Rhizopus chinensis Saito
リゾープス・バタタス / Rhizopus Batatas Nakazawa
リゾープス・オリゴスポウス / Rhizopus oligosporus Saito
リゾープス・アルブス / Rhizopus albus Yamazaki
リゾープス・セレブロサス / Rhizopus salebrosus Yamazaki

有用黴学 第六章 クモノスカビ属 (根足菌属)

糖化方法

さて、先程から何度も出てきている「アミロ法」という言葉。
紹興酒の造り方について理解するにはまずはアミロ法・アミロ菌が何なのか知らなければならない。
なので前提知識のおさらいとして糖化方法について概要をまとめる。

澱粉を糖化をする方法には以下のようなものがある。

麹法

Aspergillus oryzae (コウジカビ)等の麹菌を、蒸した白米等の培地に植えて繁殖させたものが麹である。
麹菌として国によってはクモノスカビ、ケカビ等も用いられる。
アミラーゼ(α-アミラーゼやグルコアミラーゼ)を分泌するので、それを利用する。
麹を原料(蒸米など)に混ぜることで糖化が行われる。
日本酒、焼酎、甘酒等の製造に使われる。
糖化 - Wikipedia

麦芽

麦の種子は発芽時に、貯蔵したデンプンを利用するためにアミラーゼ等の加水分解酵素を合成する。
ある程度発芽した段階で、乾燥・焙焦により生育を止め、粉砕して、麦芽中の酵素を利用する。
粉砕した麦芽を原料(麦など)と混ぜ加熱することで糖化が行われる。
同じ原理で発芽玄米が使われたこともあった。
ビール、ウイスキーなどのスピリッツ類、水飴の一部に使われる。
糖化 - Wikipedia

酸糖化法

酸によりデンプンを加水分解して糖を含んだ溶液を作り、アルカリで中和、できた溶液を精製、濃縮し、糖を得る。
原料や製造対象(異性化液糖、麦芽糖ブドウ糖など)、製造設備により製造プロセスは異なり、厳密に分類すると種類は多岐にわたる。
精製方法も、活性炭投入やろ過、イオン交換膜など、いくつかのプロセスを組み合わせて利用する。(これはアミラーゼを利用した製法でも同様である。)
糖化 - Wikipedia

アミロ法

アルコールの製造法の一つで,アミロ菌による糖化と酵母による発酵を分けることなく行う発酵法.
アミロ法とは - コトバンク

アミロ法は発酵槽内でこのカビを増殖させ、デンプン材料(サツマイモなどに水を加えてデンプン濃度15~20%とし、蒸煮、糊化したもの)を糖化し、さらに酵母を添加してアルコールを生産させる。
発酵後に液を蒸留してアルコールを製造する。
この場合、糖化は37℃、通気培養、アルコール発酵は30℃、静置培養とする。
アミロ法のよい点は発酵期間が短いこと、種菌の接種量が少ないことである。
欠点は密閉したタンクが必要なこと、無菌管理が必要なことなどである。
別に液体麹を併用するアミロ麹折衷法がある。
アミロ発酵とは - コトバンク

アミロ麹折衷法

デンプンからアルコールを製造する一方法で,アミロ法でアミロ酒母を製造し,麹で糊化した原料と併せてさらに発酵させる方法.
アミロ酒母-麹折衷法とは - コトバンク

アミロ菌とアミロ発酵法

ここではWikipedia以上の専門的な内容を深堀りしていく。

定義

アミロ菌とは、糖化とアルコール発酵とを共に営むムコール属及びリゾープス属に名づけられた名称であり、アミロ発酵法とはアミロ菌を用いてアルコールを製造する方法に名づけられた名称である。
有用黴学 第八章 アミロ菌とアミロ発酵法

菌種ごとの糖化が得意な澱粉

以下のことから、新政「Type-C」でリゾープス・デレマーが採用されたのは穀類の糖化に適している菌だからだと推察できる。

リゾープス・ジャバニクスは切干甘藷の醪の糖化に、リゾープス・デレマーは穀類の糖化に適している。
有用黴学 第八章 アミロ菌とアミロ発酵法

アミロ菌のスターターとしての使われ方

アミロ菌のアルコール発酵は常態菌糸の作用にして、アルコールの生産量は弱く、3〜5%くらいの少量なので、カビの発育に好都合な35度の付近の高温で、最もよく発酵する酵母を添加して、アルコール発酵を促進している。
有用黴学 第八章 アミロ菌とアミロ発酵法

アミロ法の長所

アミロ法が他の方法よりも優れているのは、手数が非常に省けるということで、麹法では何百貫という麹を使用し、また歩留まりが悪い。
歩留まりとはアルコール1石を製造に要する原料の消費量のことである。
なおまた、労力も余計にかかる。
アミロ法ならば純粋培養した僅少の菌を添加するだけでよく、1Lのフラスコの純粋培養のアミロ菌を500石タンクに4〜5本を添加するだけでよく、歩留まりも高い。
有用黴学 第八章 アミロ菌とアミロ発酵法

アミロ法の短所

アミロ法は密閉したタンクを使用しなければならないから、麹法の如くコンクリートでも、木のタンクでもよいというわけには行かない。
またタンクは常に無菌にしておくという管理は技術的に相当熟練が必要である。
従って現在では業者はアミロ法のこの短所を補うために麹法とアミロ法との折衷法を採用しようという傾向にある。
有用黴学 第八章 アミロ菌とアミロ発酵法

(1)塩酸によるpHの調製が必要,
(2)Rhizopusのでんぷん液化力が弱い,
(3)サツマイモのように粘度の高い原料では濃厚な仕込みがしにくい,
(4)培養に時間がかかり雑菌に汚染されやすい
台湾の米酒,紹興酒,紅露酒 P582 2.米酒

あとがき

実際に紹興酒醸造ではアミロ法の特徴をどう活かされているか、どう欠点を補っているかを書こうかと思ったけど、力尽きた。
ちょっと長くなりそうだから記事を分けることにする。
今回の記事は後続記事を理解するための事前知識程度の話で瞬発的に面白みのある内容はないとは思うけど、大事な基礎なのでちゃんと記しておこうかなと。
後日「アミロ菌・アミロ法の特徴を活かした紹興酒醸造方法」みたいな記事を書く予定。
乞うご期待。

紹興酒の造り方の考察

信憑性の高い一次情報しか信じないぞという強い気持ちを持って中国語のサイトとJ-Stageでちゃんと調べた。
黄酒(紹興酒)の造り方について、日本酒醸造の知識と照らし合わせてまとめた。
複数の情報源からまとめているので一部重複する内容や説明が前後する箇所あり。

黄酒の造り方

何はともあれWikipedia(中国版)を参考にする。

Google翻訳とDeepLを使いつつ手直し。
用語は適宜それっぽく日本酒用語に置き換え。

一般に黄酒は、米を煮て麦曲と酵母を加え、前・後発酵の2段階を経て圧搾して完成品とするもので、次のような工程を経て製造されます。

# 工程 概要
1 材料の選択 さまざまな品種で必要な穀物を選別します
2 浸漬 選択した穀物を浸す
3 蒸米 浸した穀物を蒸します
4 放冷 蒸した穀物を冷却
5 摊饭 麹と冷やしたご飯を混ぜる
6 前発酵 麹を混ぜたご飯を水槽に入れて発酵させます
7 櫂入れ 発酵タンクで醪をかき混ぜて、タンク内で上下に均等に発酵させます
8 後発酵 瓶を使用して空気の接触面積を減らし、発酵効果を向上させます
9 絞り 完全に発酵した醪に圧力をかけ、酒粕と原浆酒に分離させる
10 煎酒 白色の原浆酒を色が濃い半製品に変わるまで加熱します
11 ブレンド 煎酒を凝縮するときに揮発した蒸留アルコールを収集してブレンドします
12 澱引き・濾過 ブレンドされた半製品は、低温で2〜3日間澱引きされた後、再度濾過されます
13 火入れ 加熱・殺菌することで、ワインの沈殿物を同時に固化させ、さらに澱引きすることができます
14 梱包と保管 滅菌後、熱いうちに詰め、種類に応じて保存し、アルコールと酸のエステル化を促進して味を良くします

米酒は黄酒に比べて製造工程が単純で、個人の職人による製造は最初の6工程と最後の1工程のみであり、その結果、製品の賞味期限は短くなる。
一方、工業的に大量生産される米酒は、醸造工程が一度だけで、その他は黄酒醸造と同様であるため、職人の個人醸造品よりも賞味期限が長いのです。

黄酒を造るには発酵が重要で、温度やエアレーションをコントロールして、さまざまな微生物のバランスを調整しながらもろみを発酵させる。
醪が酸っぱくなるのを防ぐのがポイントです。
糖化と発酵が同時に行われ、高濃度の糖が生成されず、酵母へのダメージが緩和され、曲と米が酵母の増殖と発酵を促進し、米のタンパク質とビタミンBが高度アルコールなどの有害副産物を除去しやすくします。
15℃での長い後発酵により、18〜20%のアルコールが生成されます。

水は重要な原料の一つであり、伝統的な紹興酒の製造方法においても、もち米を浸漬してできる酸水(浆水)の一部を使用してもろみの酸度を調整し、酵母が必要とする栄養分や成長因子を補って、酒の香りを高めている。

最高の黄酒はもち米から作られる。
もち米のでんぷんの98.8%はアミロペクチンで、樹枝状構造で分子量が大きいため、吸水が早く糊化しにくく、可溶成分が多く、まろやかな味わいの黄酒に仕上がります。
ジャポニカ米とインディカ米のでんぷんはアミロースを20〜30%含んでおり、蒸したときに吸水性が高く、米が緩み、軽い味わいの酒になるのが特徴です。
即墨や大連では、原料にアワ米を使い、水で焦げ目がつくまであぶり、熱湯で煮てデンプンを溶かし、酒に独特の焦げの風味を与えている。

曲は黄酒製造の糖化剤として使用されるが、一部の曲には発酵作用もあり、酒の香りや風味に重要な役割を果たす。
品種には、麦曲、酒薬、紅曲などがあります。
コウジカビ、クモノスカビ、酵母の増殖により、液化や糖化の役割を果たすアミラーゼ酵素が生成されます。
酒薬(小曲)は、米粉、米ぬか、ふすまに麹の種を加え、適量の水を加え、よく混ぜて麹の粒を作り、それを育てて保湿します。
主な微生物はクモノスカビと酵母で、中国独自の菌株保存法です。
使用量は原料米の0.3〜0.6%で、米と混合し、酒中の微生物を適切な条件で増殖させ、糖化・発酵させて、甜酒酿(発酵もち米)、淋飯酒母、甜型黄酒、米白酒などを製造する。
紅曲は、米を浸漬して蒸し、ベニコウジカビの種子を加えて培養した紫紅色の米曲です。
福建省浙江省南部では醸造用の主な糖化剤、発酵剤となっている。
福建省古田県で生産される紅曲が有名です。

伝統的な醸造法では、「淋飯酒母」を使って精製した酵母の自然培養を行います。
醸造工程での発酵もろみの酸敗を防ぐため、機械化生産には純粋培養した酒母を使用します。

黄酒 - 维基百科,自由的百科全书

米酒の説明にある「個人の職人による製造」というのは家庭で自家醸造したものを指すのではないかと思う。

煎酒ブレンド

10〜11番の煎酒ブレンドは日本酒にはない概念。
絞ったばかりの熟成していない白色の原浆酒を煮詰めて、その際に揮発した蒸留アルコールを収集する。
煮詰まった黄酒に戻してブレンドする。
蒸留を目的としている訳ではなく、気化温度が水よりもエタノールの方が低いので飛んだものを液化して戻す、ということかと思う。

原浆酒

上の説明を見るに原浆酒とは「発酵が終わった醪を絞った液体」を指す模様。
日本酒でいうところの「原酒」だと思う。

日本酒の原酒は加水していないことを指すけど、
黄酒の原浆酒は上の工程を見るに煎酒ブレンドする前のものを指す。
煮詰める前のものを指すのか、原浆酒を煎酒した時に収集した蒸留アルコールを戻す前のものを指すのかは不明。

以下Google翻訳とDeepLを使いつつ手直し。

原浆酒とは、穀物を酒曲で発酵させて作られた原酒で、全くブレンドされていないものをいう。 1960年代以前は、伝統的な意味での中国酒は原酒というカテゴリーに属していた。
原浆酒について話す前に、まず「浆」の意味を理解する必要があります。「浆」は比較的濃い液体を指します。
原浆酒_百度百科

言葉の意味としては「ブレンドしていない濃い酒」のことらしい。
逆に、ブレンドしたものは「勾兑酒」と呼ぶ。
原浆酒や勾兑酒というのは主に白酒で使われる用語のようで黄酒に関する情報が出てこない。

白酒についての原浆酒と原酒は同じものなのか?については以下。
そのまんま翻訳すると原浆酒も原酒もどちらも「オリジナルワイン」と訳されてしまい非常に読みづらいけど。

原酒就是原浆酒吗?原酒可以喝吗? - 美酒网

酒母

酒母の種類

階層化するとこんな感じ。

  • 乳酸発酵系酒母
    • 浸麹酒母
      • 九醒春酒法
    • 酸漿酒母
      • 冬米明酒法
      • 醸白醪法
      • 酒麹秘方
    • 自然の生態系を利用する酒母培養法
      • 曝酒法
    • 淋飯酒母
  • 加酸系酒母

色々あって大変なので詳細は以下参照。

中国黄酒醸造における酒母造りの変遷

分類方法

酒母の手法の名前は、どのフェーズの特徴に重きを置いているかが端的に表されている。
pHを下げるフェーズ、糖化のフェーズ、酵母を培養するフェーズ、など。
そのため、手法が技術的に近いか遠いかは名前からは判断しづらい。

例えば、
浸麹酒母法は、麹を水に浸して乳酸菌とクモノスカビを生やすことに重きを置いた命名であり手法。
九醒春酒法は、米を9回に分けて米を入れる段仕込みに重きを置いた命名であり手法。

技術的な進化

煮沸すれば腐らないとか、低温で管理すれば雑菌が繁殖しないとか、そういうことが時代を経るごとに解明されていっている。
いくつかの酒母法を時系列順にピックアップ。
現代で使われている手法は、淋飯酒母、速醸複式発酵酒母、高温糖化酒母の3つ。

・浸麹酒母
漢代(紀元前206年-220年)から唐代(618年-907年)まで使われていた中国の最も古い酒母培養法。
生梗米で造った小麹と水で、乳酸菌とクモノスカビと酵母を培養する。
クモノスカビは生の穀物に生えやすいく糖化もアルコール発酵もするという性質を利用した原始的且つ最小構成での手法。

・酸漿を利用する酒母培養 - 冬米明酒法
「齊民要術」(530~550年頃の著作)に記されている手法。
精白した稲米とお湯と麹の粉末で、乳酸菌を生やす。
その乳酸菌の生えた液体(酸漿)に醸米を合わせて煮る。
煮沸消毒されたpHの低い液体が出来上がる。

・酸漿酒母法 - 酒麹秘方
栄代(960年-1279年)に生み出された手法。
水と精白した米で、低温で乳酸菌を生やす。
日本酒の菩提酛に近い。

・曝酒法
1116年頃。
現代黄酒淋飯酒母の原型と考えられている。
精米と酒薬と大麹で造る。
コウジカビが使われるようになった。
米が空気に触れる面積を広げて酵母をよく繁殖させるために「搭窩」という操作をする。

・淋飯酒母
現代でも紹興酒などで使われている手法。
精米と酒薬と麦麹で造る。
瓶に仕込む前に曲を作る手法。
この方法も「搭窩」を行う。
日本酒の山廃に近い。

・速醸複式発酵酒母
淋飯酒母を基にして市販乳酸の添加と酵母の純粋培養技術を取り入れて発展した酒母
日本酒の速醸酛に近い。

・高温糖化酒母
1970年代から機械化新式黄酒醸造法に使われて来た方法。
日本酒の高温糖化酛に近い。

原料

麹菌 / 麹

淋飯酒母の時代になって、酒薬にはクモノスカビ(リゾープス)を、麦麹にはコウジカビ(アスペルギルス)を使うようになった。
「日本酒はコウジカビ、紹興酒クモノスカビ」という説明はよく聞くし対比することでわかりやすさはあるけど現代の醸造方法の説明としては適切ではない。

酒薬にはリゾープスが使われる。

酒薬には根霉(Rhizopus),毛霉(mucor),酵母(天然酵母)が主要菌として存在し,
中国の酒(その2)醸造酒-黄酒について

麦麹にはアスペルギルスが使われる。

麦麹は挽き割りの小麦に水を混ぜ稲藁で包んでアスペルギルス草包麹(図1)にしたり,レンガのように固めたアスペルギルスの大麹である。
はじめは草包麹を使って来たが,近頃アスペルギルス大麹は製造の効率が高く,貯蔵性や運搬性がよく,使い方も便利なので,アスペルギルス大麹(白酒に使う大麹はリゾープスを主体とするものでちがう。)を使うようになっている。
中国黄酒醸造における酒母造りの変遷 - 1 淋飯酒母

ということは前回まとめた「麹と曲の違い」では以下のように書いたが誤りということになる。
麦曲にはコウジカビが使われているので、コウジカビを表す「曲」という字が使われているので学名に沿った名称が付いていて正しい。
しかしコウジカビが使われるようになった曝酒法以前から曲と呼ばれていたようなので曖昧さは残る。

中国では、コウジカビを表す「曲」という字を使ってクモノスカビを繁殖させたもの(麦曲など)を表していることになる。
ややこしい…。
麹と曲の違いと酒税法上の扱い - よしだ’s diary

大麹やら小麹やらって言葉が何を指すのかいまいちわからないが、きっちり統一されていないらしい。
なので文脈から察するしかない。

中国特有の酒である黄酒や白酒の生産に用いられる諸原料の中で麹についての名称,原料構成,製法は,相似点と相違点が入乱れ難解であるが,用語の全国的統一が中国各地の相互の技術交流とその促進のため急速に行なわれつつあるものと思う。
しかし,広大な国土と歴史的伝統の深さゆえに統一化も簡単ではなかろう.
中国の酒(その2)醸造酒-黄酒について

個人的な見解としては、紹興酒を作るにあたってはこんな感じかなと思う。合ってるかはわからん。
・小麹=生米にリゾープスが繁殖したもの。粉にして淋飯に振りかけるもの。酒薬。
・大麹=加熱した麦にアスペルギルスが繁殖したもの。原料として甕に入れるもの。麦曲。

酒薬

米粉とヤノギ蓼を混ぜたものにリゾープスと酵母を友麹させて丸めたもの。
リゾープスにはアルコール発酵の酵素もあるので酵母がいなくてもアルコール発酵はする。
酒薬は砕いて粉にして、淋飯した米に振りかけて更に繁殖させる。

酒薬は梗米粉にヤノギ蓼の粉を混ぜ,水で練り混ぜ,4cm位の餅状にしてから古い酒薬を友麹としてふりかけ,麹室でリゾープスと酵母を繁殖させた小麹である。
中国黄酒醸造における酒母造りの変遷 - 1 淋飯酒母

酒薬:酒薬は黄酒醸造に必須の原料で,一種の種麹と見るべきだろう。

酒薬には二種類ある。
i)白薬:白薬は米粉を辣蓼草の草汁でこね,これに古い酒薬を接種したもの。
ii)黒薬:黒薬は米粉に辣蓼草と数十種の中薬(杜仲・桂皮・洋草・良姜・草烏など)の浸出液を加えて成型したもの。

白薬は紹興酒醸造に使用され,黒薬は一搬に蒸留酒の製造過程で用いられる。
中国の酒(その2)醸造酒-黄酒について

酒醸、酒酿とも言う。
酒醸は地域によっては甘酒を指すこともある。

酒釀 - 维基百科,自由的百科全书

麦麹(麦曲)

繁殖する菌は黄麹菌、ケカビ、黒麹菌。
麦麹の製麹には3週間かかる。

黄麹霉ってAspergillus flavusのことらしいけど、黄麹菌と解釈して読み進めていいんだろうか…?
ちなみにAspergillus oryzaeは中国語で「米麴菌」。

麦麹の生産に要する日数は三星期つまり三週間で,繁殖する菌類は前述の記文のごとくだが,黄麹霉,毛霉と黒麹霉と他書に記されている。
中国の酒(その2)醸造酒-黄酒について

酒母

原料のサブ項目として酒母を入れるのはちょっと違うけど、原料のまとめとして便宜上ここに入れておく。

黄酒の酒母と日本酒の酒母は、製造工程の順序が同じではない。
カッコの優先度に注目。

・黄酒、淋飯酒母の場合。
(蒸米+酒薬)+浆水+麦曲

まずは冷やした蒸米にリゾープスと酵母を繁殖させる。
そこに浆水と麦曲を入れることで、pHを下げてアスペルギルスを加える。

・日本酒、速醸酛の場合。
水+米麹+蒸米+乳酸+酵母

順序は蔵によって若干違うかもしれないけど、だいたい同じタイミングで混ぜ合わせる。
目的としては、蒸米に麹の酵素を行き渡らせ糖化しやすくし、乳酸でpHを下げて酸で酵母が生きやすい環境を作る。

・日本酒、生酛/山廃の場合。
(水+米麹+蒸米)+酵母

まずは水+米麹+蒸米で、糖化を進めつつ乳酸菌を生やす。
乳酸菌がpHを下げて糖化酵素が糖度を上げて、酸と糖で酵母が生きやすい環境を作る。
環境が整ってから酵母を添加。

生酛の詳しい説明は以前書いた記事を参照。
生酛系酒母と天然醸造醤油の比較 - よしだ’s diary

まとめるとこうなる。
黄酒は、酵母を育ててからpHを下げる。
日本酒は、pHを下げてから酵母を育てる。

工程

淋飯酒と攤飯酒の違い

a 淋飯,灘飯は仕込の前,蒸米を一定の温度に冷却する操作を意味する。淋飯は冷水を注いで冷やし,灘飯は蒸米を竹薦にひろげ,冷気で灘鯨する。
b 淋飯酒は灘飯酒の酒母として用いる。
c 淋飯酒法は家庭的小規模の生産に適し,酒質は灘飯酒に及ばない。灘飯酒法は良質酒の大規模生産に向いている。
中国の酒(その2)醸造酒-黄酒について

以下の古越龍山のサイトの情報を表でまとめる。
紹興酒の伝統的な製法

淋飯酒 攤飯酒
浸漬時間 約一日 約1週間
蒸米の冷やし方 水をかけて冷却 竹敷にひろげて自然冷却
仕込み 大甕に淋飯と酒薬(酵母)を入れて酒母を造り、その後に水と麦麹を入れる 攤飯に水、麦麹、淋飯酒(酵母)を入れる
発酵期間 1次発酵3日間、2次発酵約2週間 1次発酵5日間(30度)、2次発酵80日間(室外)

淋飯酒は別名「酒娘」とも言う。
灘飯酒は別名「大飯酒」とも言う。
黄酒工艺_百度百科

酒母 / 醪

淋飯酒は攤飯酒の酒母と言える。
とするならば攤飯酒は醪と言える。

淋飯酒は、お酒として飲む場合は絞って殺菌する。(現在は売られていない)
攤飯酒の酒母として使う場合は絞らない。

そのまま発酵させ、絞って殺菌したものを「淋飯酒」と言う。現在の紹興酒酒母(母体)として用いられる淋飯酒は、絞ったり殺菌したりしない。アルコール度数は低い。以前はよく飲まれていたが、アルコール度数が低く、味も薄いので、現在は販売されていない。
紹興酒 - Wikipedia

淋飯酒を日本酒でいうと「山廃酒母」もしくは「山廃、酵母仕込、1段仕込み」と言ったところだろうか。(そんな日本酒が製品として存在するかは別として)
攤飯酒は「淋飯酒+1段」と言える。

浸漬 / 放冷

日本酒と比べると浸漬時間がだいぶ長い。
この理由は以下のいずれかではないかと思う。
うるち米ともち米の差。
・ビシャビシャの方がリゾープスを繁殖させるのに都合が良い
・最終的にグチャグチャに溶かして味を濃くするため。

淋飯よりも攤飯の方が浸漬時間が長いのは、水を使わずに冷却するために浸漬の段階で水分量を多くしておくためかと思われる。
蒸し時間や放冷後の水分量が同じだとした場合、淋飯の方が芯の固い蒸米になると思われる。

蒸米の冷やし方は、攤飯は日本酒で言うと路地放冷にあたる。

仕込み

攤飯酒に使う蒸米の放冷方法は、酒母用は淋飯、段仕込み用は攤飯、となる。
米の役割としては、酒母用の淋飯は麹米、段仕込み用の攤飯は掛米に近い。
そう考えると役割に応じた蒸米の硬さにするために合理的に浸漬時間と放冷方法を変えていることがわかる。

そして浸漬に使った水は、(一部を)浆水として仕込みに使う。

淋飯酒の仕込み配合

糯米 144kg
麦麹 22.5kg
酒薬 187.5g~250g
水 180kg
中国の酒(その2)醸造酒-黄酒について

酒薬の割合は、糯米量の0.13〜0.17%程度、総穀物量の0.11〜0.15%程度。
これは日本酒の酵母仕込の添えにおける酵母の割合よりも低い。
通常の酵母だと液体で比較しづらいし出典が見つからないので酵母仕込と比較する。

酵母仕込の場合の割合は、総米量の0.04〜0.06%程度。
3段仕込みのうち添えが総米の18%だと仮定すると、添えの米量の0.22〜0.33%程度。

仕込総米1t当たり400~600gの圧搾酵母(培養し固形化させた乾燥させていないもの)
酵母仕込 | 灘の酒用語集

水の割合は、総穀物量の107.98〜108.11%程度。
これは日本酒の酒母における汲水歩合よりも割合が低い。

日本酒の仕込み配合は以下参照。
仕込配合 | 灘の酒用語集

攤飯酒の仕込み配合

糯米 144kg
麦麹 22.5kg
酒母(淋飯酒) 5~8kg
水 112kg
漿水(浸米水) 84kg
中国の酒(その2)醸造酒-黄酒について

日本酒の仕込み配合と比較するために、まずは酒母(淋飯酒)に使われている穀物量を計算してみる。
酒母(淋飯酒)は仕込み配合から直接計算するとして、淋飯酒5~8kgに使われている穀物量は2.40〜3.84kg程度。
穀物のうち淋飯酒に使用される割合は1.42〜2.25%程度。
これを酒母歩合とすると、日本酒の酒母歩合よりも低い。

通常は、普通酒で7〜8%、吟醸酒で5〜6%ほど(普通速醸酒母の場合)
麹をたくさん使うと、どんな味の日本酒になる? - 「仕込み配合」を学ぶ | SAKE Street | プロも愛読の日本酒メディア

しかも日本酒の場合は3段仕込みのところ、攤飯酒では1段仕込み。
糖化酵素酵母は相当薄まるように思う。
そこで役に立つのが浆水と仕込み後の加熱。
浆水でpHの低い状態を保ち、30度まで温度を上げて一気に酵母を活性させているのかなと思う。

穀物量から酒薬の割合を計算してみる。
淋飯酒5~8kgに使われている酒薬は2.70〜5.77g程度。
穀物量に対する酒薬の割合は0.000016〜0.000021%程度。
これは酒母仕込みの総米に対する酵母の割合よりも低い。

汲水歩合は117.58〜133.22%程度。
日本酒の汲水歩合よりも低い。

汲水歩合は125~135%が標準である。吟醸酒などでは、140%以上に達することもある。
汲水歩合 | 灘の酒用語集

発酵期間

淋飯酒は、1次発酵3日間、2次発酵約2週間。
攤飯酒は、1次発酵5日間(30度)、2次発酵80日間(室外)。

淋飯酒を山廃酒母、攤飯酒を醪と捉えた場合、
酒母期間は日本酒よりも短く、醪期間は日本酒よりも長い。

この1次発酵2次発酵というのは古越龍山のサイトでの表記だが、最初に書いた前発酵と後発酵と同じ意味と思われる。
室外が30度より高いのか低いのかよくわからないが、おそらく室外の方が寒いんだろうと思う。
攤飯酒1次発酵の30度というのは日本酒の温度管理よりも高いが、日本酒でいうところの段仕込みの添えから留めまでの期間で温度を高くするのと同じ理由かと思う。

日本酒との比較まとめ

仕込み配合の比較。

紹興酒 日本酒 比較
淋飯酒 酵母仕込の添え
酒薬(酵母)の割合 糯米量の0.13〜0.17%
穀物量の0.11〜0.15%
添えの米量の0.22〜0.33%
汲水歩合 穀物量の107.98〜108.11% 130%前後(要出典)
淋飯酒 酒母
麹歩合 13.51% 33.57%
攤飯酒 酵母仕込の留め
酒薬(酵母)の割合 穀物量の0.000016〜0.000021% 総米量の0.04〜0.06%
攤飯酒
酒母歩合 1.42〜2.25% 5〜8%
汲水歩合 117.58〜133.22% 125~135%
吟醸酒 140%
麹歩合 13.51% 16.87%

発酵期間の比較。

紹興酒 日本酒 比較
淋飯酒 山廃酒母
発酵日数 1次発酵3日間
2次発酵約2週間
約30日
攤飯酒
発酵日数 1次発酵5日間(30度)
2次発酵80日間(室外)
添仲留4〜5日
醪日数20〜30日

あとがき

日本酒醸造をある程度知る身としては、手法が定着した技術的背景を含め概ね紹興酒の作り方は理解できたかなと思う。
正直長過ぎて疲れたので、今後気になったことや漏れがあった場合は後日書こうと思う。

日本酒醸造についても言えることだけど、伝統的(乳酸や酵母無添加、無農薬、杉樽を使う等)だから良いものだとか、工業的(速醸や高温糖化酛、アル添等)だから悪いものだというものではない。
消費者が言えることなんて所詮は「自分にとって好きか嫌いか」という主観だけ。
作る側は何かしらの意図や目的を持って技術や手法を選択しているので、そこに対しての理解と共感なくして外野が甲乙を付けることは出来ない。