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2011-04-16 QBの確実な殺し方――『魔法少女まどか☆マギカ』における魂と身体 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 既に各処で指摘されていることですが、この作品にはヲタクないし男性一般のセクシュアリティーへの批判と見受けられる側面があります。
 ここ数年来のアニメ諸作に顯著な男性人物を排した人形偏愛症傾向に対して、少女間の関係を中心に据えつつも登場人物をヒステリー化することにより男性原理を浮彫りにし、性的な暗喩と拒絶が示されています。
 魔法少女になることで魂と身体が分離されていると知ったとき、まどかたちは感情を露わにします。ここで問われているのは第二次性徴期の「少女の身体の所有」という、極めて男性的なプロブレマティックです。例の電車内でさやかを激高させるサラリーマンの輕薄な会話は、野暮ったいまでにこの点を明確にしています。かつて斎藤環が描写した戦闘美少女たちは「ファルスを持った少女」だったわけですが、まどか☆マギカにおいては本性的に欠如の記号にすぎないファルスを”ソウルジェム”という形態のある物質として持つことで、少女たちの中身は空にされているのです。所謂「日常系アニメ」のフォーム確立によって戦闘美少女は去勢され、性を潛在化することで強迫的に薄い本を増刷させてきた、そうした系譜上にこの作品を症候として位置附けることができます。

 所有し、所有される自らの身体という觀念は、契約以前、つまり少女たちの「日常」においてはなかったものです。オープニングでまどかが無い乳を擦り合わせるシーンが象徴的に示しているように、このアニメでは變身することによって初めて自己同一性が獲得されます。(但し、空の肉体の上に。)魔法少女は取り返しのつかないかたちで身体の所有という問題に晒され、魂と調和した固有の身体を希求します。”魔女”はさながら、かつて持っていた身体に執着する魂とも捉えることが出来るでしょう。

 もうすぐ物語は終焉します。もし、ワルプルギスの夜が解決され、まどかの強大な魔法力を使うなどして日常が取り戻されるのであれば、彼女たちは自らに固有の身体を確かめ、彼女たちのアイデンティティーはより強く保たれることに成るでしょう。

 この未来は、致命的です。
 繰り返しになりますが、契約以前の、第二次性徴期の少女は固有の身体など持っていません。少女は生成しているのであり、常にメタモルフォーゼする可能性を祕めているのです。固有の身体を、アイデンティティーを持つことは、実のところ、一つの身体への隸属という耐え難い状態に他なりません。日常が取り戻されたとして、それはメタモルフォーゼという魔法少女の神祕、女の子の永遠の憧れを、所有可能な固有の身体という男性的な枠に封じてしまう救いようの無い結末なのです。

 諸悪の根源、QBという不氣味な存在にとって、身体は容れ物に過ぎず、それが破壊されても易々と別の体に蘇生します。それゆえ、この悪の根を絶つのは非常な困難に思われます。
 ここで重要なのは、彼がいつも同じ形態に顕現することです。QBのもつ同一性、固有性は、詰まるところ「キャラクター」の同一性です。
 われわれはこれまで、数え切れぬほどキャラクターに陵辱を繰り返し、責め苦を負わせ続けてきたわけですが、彼女/彼たちは終ぞ死に至ることなく、幾度も幾度も処女として蘇って来ました。それでもわれわれが厭くことなくキャラを犯すのは、翻って自らの同一性、固有性を解放したいがためでないとしたらなんなのでしょうか?それはかつて叶うことなく、時間が帰っても、メガネでも、パンツでも、却ってその同じものに固執することを止めません。

 QBを確実に殺すためには、あなたが愛するキャラクターを確実に殺さねばなりません。そして少女に變身を、メタモルフォーゼを返すのです。そのときこそ、QBは回復不可能なまでに穴を開けられるのではないでしょうか。




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