MissliM Tea Place (ミスリム)

京都は河原町通り丸太町下がる西側にオープンした紅茶店「MissliM(ミスリム)」をご紹介します。




クライアントの浅井さんは、某有名紅茶専門店Mで働いておられた方でした。
彼は、そこで紅茶づけの毎日を数年送っておられましたが、いつかは自分でカフェをしたい、と思っておられたようです。
我々に相談に来られた時には、開口一番「気軽にコーヒーやお酒やちょっとした料理を食べてもらえるような、あらゆる層の人に楽しんでもらえるカフェバーのようなものがしたい」、とおっしゃしました。

がーん。ありがちすぎるー(心の声)。と、いうか紅茶は・・・?

そ、そんな曖昧なイメージで果たして流行るお店が出来るでしょうか? 10年前ならそれでもよかったかもしれませんが、今だときつい。誰にでも受け入れてもらえるように、というのはつまり、誰にも強く愛されない、というのとほぼ同じです。デパートの上層階にあった、なんでも食べられるザ・レストランは、もう存在しないのが現状ですよね。そうでなくとも、コーヒーなどは客単価が低いので、客回転数が相当高くなければ(スタバのように)、生活していけないのではないでしょうか。趣味でお店をされるわけではないでしょう?

・・・というようなことをはっきりと言わせて頂きました。多分気分を害されたと思います。(←後にそのことを告白されました。もちろん今は納得されています)

カフェがしたい、と相談しにきたのに、そんなカフェでは駄目でしょう、と否定されたわけですからね。
でも、我々としては、デザインを通して、クライアントの人生に関わるからには、少しでも流行らない可能性を少なくしていきたい、長く続く仕事がしたい、と思っていますので、色んなことを見てみぬふりして淡々と仕事をこなす、というのは本意ではないです。

そして我々も、今の時代、単なる普通のカフェでは経営が厳しい、ということは踏まえてはいましたが、会話の端々に浅井さんの紅茶への造詣の深さ、見え隠れする愛情、そして、重要なことですが、この人は、なんとなく紅茶を美味しく煎れてくれそう!と思わせる風貌。そういったものをびびびbと感じとったからこそ、思い切って発言しました。
直接会って何度も何十回も話をしていると、ポンポンと紅茶について面白い話が出てきます。
これは、浅井さんにしか出来ない、京都ではオリジナルな紅茶のお店が出来るんじゃないだろうか、という確信は強まるばかりです。

コーヒーやお酒やランチは他の人やお店にまかせておいて、浅井さんならではの強みである、紅茶に特化した素晴らしいお店を創ることにしましょうよ!
本人が一番、そのことに頓着されていないし、計算高く自分の売りはこれだ、と押し進むタイプではないので(周辺の友人知人にはあまりみかけないほどの、素直で穏やかな方です)、我々expoが、マネージメントやプロデュースを行い、彼の能力を発揮させられるように、回り道や衝突も繰り返しながら、最終的な形に落とし込みました。

建物をデザインするという作業は、このプロジェクトにおいては4割、5割ぐらいの作業にすぎず、マーケティング、浅井さんの情熱を紅茶に絞ってもらうこと、運営方法などについて割いた時間と労力の方が大きくて、こちらとしても勉強にもなりましたし、大変思い入れ深く、今後にもつながる出会いとなりました。

そしてもちろん浅井さんも、自分は紅茶でやっていこう、と決意を新たにされ、熱い意気込みをもたれています。
浅井さんがんばって、紅茶の王子。を目指してください!


・・・出だしが長くなりましたが、ここからはさらっと店舗紹介。
まず物件は、河原町通りに面した、戦前に建てられたと思われる古い民家に決まりました。

以前は、婦人服のお店をされていたようです。ビルに挟まれており、ここに和風の民家があることを初めて知りました。


一階内部。柱などの構造部分が隠れているので、柱の傷みなどは、壁を撤去してみないとわからないです。


二階内部。入って三分もすると体が痒くなりました。(by ノミさん)

どれほど腐朽しているか、とか、どれだけ柱が傾いているか、写真ではわかりにくいですが、これは相当歪んでいますよ。
およそ60-70年前に建てられたもののようです。ちなみに建物は床から屋根までで11㎝傾いていました。


工事が始まるとはやいです。一気に解体。
梁があらわになりました。曲がったり、踊ったり、こちらの都合も考えず、いい感じにブギウギしています。

吹抜けになる部分を下から上に見上げる。土壁も色々味わい深い。
↑この写真は後に大切になってきます。記憶しておいてくださいネ。


(このあともいろいろ大変な工事でしたが、略)
長く苦しい戦いの現場となりましたが、様々な趣向を凝らした、茶と汗と涙の結晶、「MissliM」完成です。

外壁は漆喰です。簡素なファサードになっています。


吹き抜けの窓から、柔らかい光が常に差し込み、曇りの日でも明るい店内。
イメージはインドの中のイギリス(次回後述します)。
外観からははかれない、白を基調とはしながらも、色彩豊かな空間。壁は珪藻土


階段のデザインと、深い青の絨毯にはこだわりました。
床のタイルは一枚一枚白と濃紺で塗り分けてあります。
2階席もありますので、是非上がってみてください。


十分に開放感のある二階席。
一階とは雰囲気が違い、タモの無垢フローリングなど、オーソドックスな色彩です。
天井の梁は出来るところはそのままあらわしています。


河原町通りの様子がよく見えます。吹き抜け方向をみる。
照明器具はかなり選び抜きました。

全部で16席と、非常に余裕のある座席配置。紅茶を飲むのにゆっくりとした時間をとってもらえたらと考えています。
紅茶のプリンス浅井さんからのコメントです。
「紅茶を美味しくいれることには自信があります、そして、何でも聞いて下さい、皆さんお待ちしております。」

はい、さっそく、自信たっぷりのコメントありがとうございます。(台詞を3割強気にしておきました)

次回は、今回のデザインでこだわった点やコンセプト、注目ポイントなどを紹介してみたいと思います。

つづく



ミスリム ティーハウス
京都市上京区伊勢屋町400 河原町丸太町交差点下がる20m
電話 075-231-4688 営業時間 12:00-20:00 木曜日定休



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