うしとみ

2014-12-27 (土)

2014年にいちばん私の心を打ったのは、映画『5つ数えれば君の夢』だった

年の暮れ、さて今年触れた作品はどんなだっただろう、何が素晴らしかっただろうと振り返ったとき、いちばん素晴らしかったのは映画『5つ数えれば君の夢』だと確信しています。


3月に映画館で観たときに、これはすごいぞと興奮し、ブログにも書きました。

映画『5つ数えれば君の夢』が素晴らしいという話 - うしとみ

あらためて『5つ数えれば君の夢』について簡単な説明をしておくと、5人組アイドル「東京女子流」が主演の映画です。青春映画であり、少女映画であり、女子校映画。女子高の学園祭の準備期間から当日に向けての少女たちのドラマを描いた映画です。

アイドルが主演する映画というのは、基本的には、そのアイドルのファンだけが楽しめるものであろうと思います。そもそものストーリィ、作品としての出来、アイドルたちのつたない演技については、アイドル映画であるということで不問にされるものでしょう。

『5つ数えれば君の夢』も、一面では、まったくアイドル映画です。彼女たちの演技はつたない。しかし、彼女たちは美少女です。「美女」でも「少女」でもない、「美少女」。美少女とは、自身の容姿が他者の目を惹きつけうるという自覚をもった少女です。彼女たちは、ただいるだけでは、愛でられるだけで終わってしまいます。適切な切り取られ方をする必要があるのです。


なにぶん9ヶ月前のことですし、DVDレンタルも始まっているので、あらためて鑑賞しました。

ほんとうに素晴らしかった。

『5つ数えれば君の夢』のセリフ回しはとても特徴的です。文語的で、舞台演劇的で、詩的です。文語的なセリフを、決して演技がうまいわけではない美少女が、淡々と(そして滔々と)語っていく。そこに山戸結希監督の切り取り方がある。

5人組のアイドルを、それぞれに違う性質をもった独立したキャラクタとして設定し、それぞれの青春にある狂気を描いてしまいました。特に、「都」というキャラクタの狂気はすごい。文化祭前夜の、「宇佐美」への圧倒的愛の告白。「うさみ、うさみ、うーさーみー」。まったく、直前のシーンでの「委員長」の独白も強烈だったというのに。

狂気はいつも、ぶつける相手がいるからこそ顕在します。中野駅前での回る2人の対話も、学園祭前夜の兄妹の対話も、誰もいない体育館での愛の告白も。狂気とは美しさであり、美しさとは狂気である。それは、ただあるだけではなく、受け取る者がいるからこそ、美しいのです。

都の告白のなかに「(宇佐美がいない世界なんて)巨神兵のいない東京(のようだよ)」というセリフがあって、これはもう強烈に現代の狂恋です。巨神兵のいない東京、それはそれで平和で素晴らしい。けれど、そんな平和な日常なんて、刹那を生きる美少女たちは、きっと望んでいない。すべてを焼き尽くす愛、あるいは無。そんな瞬間と累積による美しさを、この映画は描き出しています。


観る人を選ぶ映画ではあると思います。もっともっと価値の高い映画は、きっといくらでもあるでしょう。そのことはわかった上で、私にとっての2014年のベストは、映画『5つ数えれば君の夢』だと断言するのです。