最初の人間

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年10月19日はこちらです。


『転落 追放と王国』

カミュ著 佐藤朔・窪田啓作訳 新潮文庫


 そうですよ、わたしほど天真らんまんな男はちょっといないんじゃないかな。

人生と完全に一致していて、人生の皮肉、偉大さ、惨めさなどを拒否せず、

全部ありのままに受入れていましたからね。とくに、肉体と物質、一言で言えば

形而下的なものですがね、これは恋愛しているときも、また孤独のときも、

たくさんの人間を焦立たせたり、がっかりさせたりしますが、わたしには

ちっとも邪魔にならず、いつも同じような歓びを与えてくれました。わたしは

生れつき理想的な肉体を持っていたんです。ですから、わたしには調和があり、

自由自在な抑止力もあって、他人もどうやらそれを感ずるらしく、

《おかげで人生に張り合いが出るよ》と言われることさえありました。だから、

みんなは争ってわたしと交際したがりました。たとえば、初対面の人でも、

わたしと前に会ったことがあるような気がしていたようです。君には生命力、

その実体、その恩恵があるねなどと、面と向って言われもしました。

わたしは愛想よく、得意そうにしながら、こういう讃辞に耳を傾けました。

事実、とても充ちたりた単純な人間として、自分でもいささか超人のような

気がしましたからね。

(「転落」本文より)


こちらは旧訳版で現在絶版となっております。

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