復活!!!
今日のおすすめ本。
2017年10月19日はこちらです。
『転落 追放と王国』
そうですよ、わたしほど天真らんまんな男はちょっといないんじゃないかな。
人生と完全に一致していて、人生の皮肉、偉大さ、惨めさなどを拒否せず、
全部ありのままに受入れていましたからね。とくに、肉体と物質、一言で言えば
形而下的なものですがね、これは恋愛しているときも、また孤独のときも、
たくさんの人間を焦立たせたり、がっかりさせたりしますが、わたしには
ちっとも邪魔にならず、いつも同じような歓びを与えてくれました。わたしは
生れつき理想的な肉体を持っていたんです。ですから、わたしには調和があり、
自由自在な抑止力もあって、他人もどうやらそれを感ずるらしく、
《おかげで人生に張り合いが出るよ》と言われることさえありました。だから、
みんなは争ってわたしと交際したがりました。たとえば、初対面の人でも、
わたしと前に会ったことがあるような気がしていたようです。君には生命力、
その実体、その恩恵があるねなどと、面と向って言われもしました。
わたしは愛想よく、得意そうにしながら、こういう讃辞に耳を傾けました。
事実、とても充ちたりた単純な人間として、自分でもいささか超人のような
気がしましたからね。
(「転落」本文より)
こちらは旧訳版で現在絶版となっております。
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