沈思彷徨

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年10月21日はこちらです。


『印度放浪』

藤原新也著 朝日文庫


 どのくらい、うとうとと浅い眠りの中に遊んだであろうか。ふたたび

目覚めたとき、すでに日は西寄りにかたむき、冬だというのに、刺すような

陽射しがしたたか頬を打ったと見え、そこは玉の汗だった。単調な風景は

デレデレと続いていた。上着をとり、汗をふいた。それから、ちょっとあわてて

自分の荷物を確認する。無事だった。ホッとして、また坐りなおす。

相変わらずゴトリゴトリとシリに響く車輪の音。前に坐っている男の顔を見る。

りっぱなジョンブル髭だが、左右の鼻の下に直径一センチくらいの天然痘

なにかの跡があるので、そこだけ毛がはえていない。最初は楽しめた・・・

しかし、これももう見あきた。そして、もういいかげん眠るのにもあきた。

腹がすいているかどうか確かめる。食欲もない。しかたがないな・・・と思った。

窓の手摺に両腕をすえてアゴを載せる。そしてまた・・・風景を見る。

 なにも説明したくないような特色のない地平線、青い空に風呂屋の壁に

ペンキで塗りたくってあるような、投げやりな雲・・・栄養のない赤土に、

花の咲かない草。ほかになにがあるかと言えば、ヤシの木。ヤシの木なんてのは、

北からやって来た最初に見つけた二、三本はまだ人の目を楽しませるが、こうして

百本も二百本も見ていると、これほど殺伐とした創り者もほかに例がない。

 バカバカしい、こんな単調な風景が何十時間も続くなんて、ちょっと

どうかしている・・・。


こちらは現在絶版となっております。

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日々のおすすめ本から、

お気にいりの一冊が見つかりますように。

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ごきげんよくお過ごしください。