杞憂/仏蘭西…そして罪の無い人々へ








 言論や表現の自由と言う貴い価値観はともかくとして、あなたは実際、仏蘭西という国で親の代からその国に移民として育ち差別された経験のあるアラブ人やユダヤの血を持つ民人もしくは今日仏蘭西人として認められている白色人種であっても先代が混血移民である人々と実際会話した事があるだろうか。


 南の仏蘭西を歩けば黒い肌以上にアラブの血をひく人々に出会う。そしてある程度の規模の町には移民の家族は或るブロックに暮らしている事が多い。そういう場所は観光では普通出会えないだろう。確かに危険だがそこにコミュニティーがある事も私は知った。それが西洋の一国仏蘭西だ。


 この写真は以前もどこかでアップしたかもしれないがアラブ人の経営する南仏のケバブ店である。朝から晩まで商いをしているが、時の流れは緩い。それでもオーダーしたケバブが出てくるタイミングは東京の印度料理店よりもはやい。店の向かい側には豪邸があった事を記憶しているが、通りは路地である。この街の名は蜜柑。私はちょっとした仕事のため、ここはしばし訪れた土地だが、ローマ人の足跡を遺す、佳き街だった。


 巴里のケバブ以上に南仏は安くて美味いよ。時々伊太利亜移民がピザと一緒にケバブも作る屋台を出しているのも好ましい。ピザもケバブも5~6ユーロで日本の2000円のピザ以上の満足を得る。ただ伊太利亜人の作るケバブはフォカッチャに似た生地だったりする。それでもボリュームがあり、野菜たっぷりで香ばしく、何より彼らが楽しそうに店を切り盛りしている姿がいい。それはマクドナルドのsmileとは異なる。ただそこで商いをしている夫婦があったとして、彼らは客たちと時に気さくに話しながら笑顔で商売をして過ごす人生を続けているのである。そんな光景は日本の商店街にもあるだろう。









 そのような街の光景に在っても、私は常に少しのお金を持ってこの国に滞在している日本人であるということをどこかで意識していた。そう、私たちは白人ではないのですよ、西洋では東洋人、忘れる事なかれ、目出たい人々よ。


 私にとっては、仏蘭西という国は、まさに日本と同様、関わった国の文化や食…様々なものを受け容れながらより良い国家を目指したと認識してきた。また、過去、多く戦場となった国として色々な面においてプラグマティックであり、その懐の深さにも感服してきた。そうして日本には無い福祉における寛大な精神があるという意味で感服させられた国である。が、今、今日、どのように動いていくのか、興味は深い。




 桜井李早