Hatena::ブログ(Diary)

起点3.11

2016-09-24 北公次氏の自伝を読む

北公次氏の自伝を読む

北公次氏の自伝、『光GENGIへ』が思いのほか興味深い。

光GENJIへ―元フォーリーブス北公次の禁断の半生記

光GENJIへ―元フォーリーブス北公次の禁断の半生記



「時代の証言」としても、「(劇的な人生を歩んだ、弱く愚かな)人間の独白」としても、読ませる本だ。

北公次氏は、1970年ごろ「フォーリーブス」というアイドルグループで人気を博した。1978年のグループ解散後は、ご本人には申し訳ないが、「北公次といえば、覚醒剤でボロボロな過去の人」くらいのイメージに成り下がっていた。2012年、63歳で亡くなっている。

北公次氏が『光GENJIへ』を出版したのは1988年のことだ。もうひと昔前の本とはいえ、多くの問題を提起している。
気になる問題点をいくつかピックアップしてみる。

1.覚醒剤依存症者に対する適切な対応とは

北公次氏は、フォーリーブス解散の数年前から、かなり重度の覚醒剤依存症だったようだ。
当然、事務所の人間も知っていただろう。というか、戦後の繁華街を生きてきたメリー喜多川氏などが「ポン中」を見抜けないわけがないし、北氏は覚醒剤を買うお金は毎日メリー喜多川氏に無心していたというし。
でも、それはともかく、である。

意を決して自分自身で目白の麻薬取締官事務所まで赴き、自首さえもした。

「正直に申し上げます。僕は3年前からずっと覚醒剤をやってきたんです」
取締官は実際の証拠も無いためか、まるでおれを教え諭すような優しさに満ちた顔で、「きみはこれから活躍する身だろう。今までの過去はきっぱり清算してしっかりやりなさい。力強く生きていくんだ」と励ましてくれたのだった。


おい。
重度の依存症の人間が、本人の意志だけで止められるようなものじゃないですよね、覚醒剤。麻薬取締官の覚醒剤依存症者への認識と対応が残念すぎる。

本人が「やめたい」と苦しんでいるならば、治療への道筋くらい示すべきところだろう。医療機関の紹介とかすればいいのに。

今でも警察や麻取への自首はあるだろう。今はその場合、どういう対応をするように教育されているのだろうか。

2.ジャニー喜多川氏の児童に対する性的虐待問題

北公次氏は、ジャニー喜多川氏が、事務所の少年たちに性的虐待を行っていることをはっきりと記している。

16歳の北公次氏は、ジャニー喜多川氏から執拗な性的虐待を受けた。
当初、北氏は、それが自分だけの体験か、他の人も同じ体験をしているのか分からなかった。

彼ら(注:フォーリーブスのメンバー)もおれと同じような夜を体験しているのか聞いてみたい時もあったが、それは聞かないでいた。聞いたところでどうなるものでもない、ホモの趣味はまったくないが、もしおれ以外にジャニーさんに抱かれていると知ったら、ある種の嫉妬を感じたかもしれない。またもしおれだけがそんな体験をしていたならば、偏見の目で見られることは明らかだったからだ。(P.108)


北公次氏のあらわな同性愛蔑視発言には時代を感じるが、だが、この「偏見の目」というのは今も強くある。
性犯罪は暗数がとても大きいと言われるが、多分、その中でも少年に対する性的虐待は表沙汰になることは非常に稀だろう、と感じさせる証言だ。

その後、北氏は、ジャニーズ事務所内で何人もの少年タレントが性的虐待を受けていたことを、実名を挙げて記している。
個人的に、最もぞっとしたのは、小学3年生くらいだった少年も性的虐待を受けていたという記述だ。小学3年生って。まだ8つかそこらだ。

では、周囲はジャニー喜多川氏と少年タレント達をどう見ていたのか。

テレビ録画の合間、おれたちの髪をていねいにとかしてくれたり、襟を直してくれたり、そんな特殊な関係を薄々気づいていた記者は「かわいい少年たちを心から愛するジャニー喜多川さんが常にかたわらに寄り添っている」といった書き方で表現した。

いつも公演に来てくれるファンクラブの女の子のなかには、すでにジャニーさんの性癖に関して気付いている子もいた(P.145)


周囲で気づいている人はそれなりにいたのだ。しかし、感覚的に、性的虐待を確信しても、証拠もない。
でも、手をこまねいていてよかったのか。「容認」していてよかったのか。

例えば、北公次氏は、名古屋に集団就職をし、16歳で単身、東京に乗り込んでいる。貧困からの脱出も、氏が芸能界を目指した大きな動機である。
実家は和歌山と遠い。当然、両親の庇護はない。
はっきり言って、いくらでも搾取可能な弱者だ。

実際、北氏はこのように記している。

嫌ならばさっさと部屋から出てしまえばいい、何度そう思ったことか。しかし東京で食いつなぎながらアイドルになるためには、ジャニー喜多川氏のもとで生活する以外に手段はなかった。


北氏のこの告発後、多くのジャニーズタレントから同様の告発がなされた。

更には、2002年から2004年にかけての裁判でジャニー喜多川氏による少年に対する性的虐待があったことが確認されている。

しかし、いまだ、この性犯罪者が、ジャニーズ事務所の社長として権力を持ち、少年たちを搾取しつづけてきていることは、まごうことなき日本の恥部であり、黒歴史だ。

3.著者問題

この本、失礼ながら、北公次氏自身が主に執筆したとは考えられない。
「北公次の本」ではあろう。しかし、恐らく、北公次氏が書いたり語ったりした内容を整理し、構成して、実質、執筆した「編集者」がいるはずだ。
「北公次 著」としか記されていないのは、ちょっと違和感がある。
「実際に書いたのは誰なのよ」というのは「編集者 なにがし」というかたちで記載してあるべきだと思う。
ゴーストライターというのはよろしくない。

★★★

覚醒剤依存症に対する対応問題も、ジャニーズ事務所の性的虐待問題も、ゴーストライター問題も、「相変わらず問題なまま」なものが多すぎる。

1988年に出版されたこの本が、意外に問題提起の書としての価値を失っていないところが「なんだかなぁ」と思わなくもない。

【関連エントリー】
2016年8月30日「ジャニーズ事務所 この許されざる者」
http://d.hatena.ne.jp/falken1880/20160830