池内恵「現代アラブの社会思想―終末論とイスラーム主義」

高木徹「ドキュメント 戦争広告代理店」での解説が素晴らしかったので読んでみた*1

正直期待外れ。ストンと腹に落ちてこない。いろいろ書いてあるし、社会思想の流れも整理されてるが、「それが正しいかどうかは別として」と言いたくなるところがミソ。

現代アラブの社会思想 (講談社現代新書)

現代アラブの社会思想 (講談社現代新書)


「ざっくり」言うと、論理展開がいまいちロジカルに感じられない。また全体像が何で、個々のトピックがその中のどこに、どれだけの大きさ(メジャー/マイナー)で位置付けられるのか、がよく分からない。そのため書かれていることが正しいことだと素直に受け入れられないのだ。しかも、やろうとしたけど未熟な面があるというよりは、そこに無頓着であるとすら思える。

例えば本書ではアラブと言いつつ、主にエジプトが対象なのだが、アラブとエジプトをどこまで同一視できるのか、アラブ世界の中でエジプトがどういう位置を占めているか、それがアラブを代表させるに足りるのか、が書かれていない。そもそもエジプトを主に扱うことすら書いてない。読者は読み進めていくうちに、「あれ、エジプトの話しか出てこないな」と気付くぐらいなのだ。

もしかしたら上記についてどこかに書いてあったのかもしれないが、検証する気も起きないような読後感でした。

他の方の書評で比較的近いと感じたものを挙げておく。


日記のような:少女の交通事故死と歩道橋−P-navi info
http://0000000000.net/p-navi/info/column/200507310415.htm

*1:この本についてのエントリはこちら>http://d.hatena.ne.jp/fart/20080406/1207492130