近況、二月
彼女の中にいる子どもが2cmの大きさになり人間らしい姿が見えてきた一方、彼女の腫瘍も6cmの大きさに肥大していた。10cmを超えれば摘出することになるが現状は直ちに必要ではなく、多少のリスクは抱えながら出産を迎える。子どもが生まれてから改めて手術を受けるかもしれない。
一緒に山へ出掛けようと彼女のトレッキングシューズを買ったが高尾山にも行かなかった。いつかは子どもを連れて行くのか分からない。無事に生まれてきて母子ともに健康なら、あとは近所の公園に出掛けるくらいで十分か。来年の冬でさえ寝返りが打てる程度のはずだから、その次の冬になるのか。
一人で過ごす時間がさらに摩り減っていけばいい。余暇ができないように仕事や読書を詰め込み、時々、二人で寝転がってテレビなど見られればいい。手術に費用が掛かるなら休日に交通誘導のバイトでもやればいい。そんなことはまったく苦労ではない。勿論、何一つとして不幸でもなかった。痛みを覚えたり重篤な状態などに陥らず病気を見つけられたのは幸いだった。
二人で借りた郊外の広いアパートは、二人で暮らすにはあまりに広すぎた。赤ん坊が這い回っていれば丁度良い広さになる。白い壁には落書きがあれば尚良い。彼女は怒るかもしれないが、今は綺麗に片付き過ぎているから、もうすこし乱雑なほうが俺は落ち着いて過ごせる。
籍はまだ入れていない。郵送で頼んだ戸籍謄本が間に合えば2012.2.22に入籍する。
婚姻届の証人を頼んだ友人から花をもらい、花瓶のかわりにレモネードの瓶へさして部屋に飾っている。花言葉は「永遠のなんとか」だと友人が言い、iPhoneで調べて「門出」と言い直していた。暖かくなったら友人を部屋に招きたいと考えている。
(追記 2.22)
今朝、入籍しました。あとは4月初めに彼女の手術。大丈夫だ。
近況
求婚から半年弱のあいだに体重が五キロ落ちた。本当なら時間をかけて話し合うなり愛を育むなりすべきところを短期間に詰め込んだため体調を崩すほどに忙しかった。互いの仕事の合間を縫って両家の顔合わせやアパートの契約を済ませ、それらの間隙に楽しいことも幾らかは有った。暑さが引いて気持はいくらか落ち着いた気がする。
現在、表面上は冷静に見えている自分が本当は気違いではないかと思う。泥酔した人間に声をかけても「大丈夫」と返事が来るように、自分は酔っているのかもしれない、というより、全く大丈夫ではなかった。重症の恋愛状態と強迫性障害とは区別がつかないと言われれば、たしかに病気かもしれない。休日を一人で過ごすことが苦手になっている。春先までは一人で郊外や里山を歩き回っていた俺がショッピングモールや映画館へ出掛けて楽しんでいるのは正常と思えない。
一方では、散歩や写真への欲求が少しづつ回復してきた今、引っ越し先の東葛地域を歩くことを楽しみに待っている。少し足を伸ばせば北総や茨城や房総半島にも行ける。正気を取り戻すといえば語弊があるけども、再び、地図とカメラを持って、一人で郊外を歩けるようにはなりたい。まだ調べたいことが沢山残っている。
再来週から始める同居については、仕事から帰ってきた部屋に彼女がいるのは勿論嬉しい。現在暮らしている家賃二万円台の風呂無しアパート生活とは掛け離れていて、実感は全く涌かない。
