第8回心の病気を考える うつ病について１ 家族や周囲の人たちへ

●うつ病はまだまだ人に隠したい病気

　この前、雑誌を読んでいたら、一説によると「サラリーマンの8割はうつ病予備軍」とありました。

　また、うつ病の患者数は全国で約100万人。テレビや雑誌等でもよくとりあげられるようになりました。

　とはいえ、まだまだ人に隠したい病気の一つではあるようですね。

　わたしが『不登校・ひきこもり・ニート』にかかわるようになってから、付き合いのあった人が、「実は、わたし、うつなんです」と、言ってくれることが多くなりました。

　それまでは、会っていても「自分はうつ病なんです」なんてことを言う人は、あまりいなかったんですよ。

　ぼく自身、いろいろと取材をしているうち、うつ病の本とかにあまり書かれていないことにも、気がつくようになりました。

　最初は、本人の苦しみをよく聞きました。

　ついで、家族の苦しみを聞きました。

　さらに周囲の人たちの苦しみを聞きました。

　その中で、今回書こうと思っているのは、家族や周囲の人の苦しみについてです。

● うつ病は周囲の人にも影響を与える

　まず、うつ病は病気ですから、本人が一番苦しみます。

　同じように家族や周囲の人が苦しむというのも、他の病気でも多くあると思います。

うつ病という病気は、気分障害ですから、身近な人の心に影響を与えることもある病気でもあります。

と、申しますのも、本人や家族や友人、同僚からお話しをうかがっているうちに、本人の身近な人も、うつ病にかかってしまうという例を、いくつか聞くことがよくあるからです。

●うつ病の人と周囲の人とのトラブル

　うつ病の人は、“マジメな人・大人しい人がなりやすい”というイメージがあり、病状も落ち込みやすいなど大人しいものと、思われていたりします。

　しかしながらうつ病患者は、ときとして激しく身近な人をののしったり、怒りをあらわすことがあります。

　うつ病の人が、イライラをぶつけたりできるのは、家族や親しい人であり、それだけに、お互いにつらい思いをすることがあるようです。

　そのうつのイライラ感からか、家庭内で暴力をふるったり、周囲に人にブツブツと文句や皮肉をいい続けたりすることがあります。

　夫がうつ病にかかり、妻を激しくののしるようなり、そのストレスが原因で妻が、うつ病になってしまったという話しも聞く話しです。

　夫は治療の結果、うつ病は治ったのですが、妻もうつ病になり、妻がうつ病が原因と思われる自殺をしてしまったという悲劇的な話しもあります。

　
ある会社で、社員がうつ病になり、自分がうつ病になったのは、同僚や上司の責任であるということで、訴訟騒ぎになりそうになり、しばらく休職。復職したとき、別の部署に移っても、同じような問題が起こってしまったという話しもあります。

　うつ病の人に、｢がんばれ｣は禁句だといいますが、周囲の人がつい「がんばれ」と言ってしまい、

「うつ病のオレにがんばれというのか！　アンタはオレに死ねというのか！」

　と、激しくののしられ、周囲の人と気まずくなってしまい、部署の空気がとても悪くなったり、患者本人が、仲間外れになってしまうこともあります。

　うつ病の人は、そのように怒りを爆発させた後、今度は逆に自己嫌悪を覚えてしまい、それが原因でまたうつ状態がひどくなってしまうといいます。

　うつ病は、感情の病気でもあり、本人にも、自分の感情がコントロールできないということでもあります。

　家族や周囲の人にとって、本人が病気であるということを知っていたとしても、こういった状態は、とてもつらいことだと思うんですよ。

　もし、うつ病の人が、このような暴言などをいうときは、「これは本人ではなく、病気が言わせているんだ」と、思うようにして、相手のことも、自分の心も守ってあげるようにして欲しいと思います。

　うつ病は、軽いうち「心の風邪」というふうに言われ、いかにも軽い病気であるという風に思っている人もいますが、ひどくなると自殺という、命にかかわる病気でもあります。

　また、家族や周囲を巻き込んでしまう病気であるからこそ、患者さんの家族や周囲の人は、振り回されたりしないように気をつけて欲しいと思います。

● まとめ
・ うつ病は家族や周囲の人につらい影響を与える病気です。
・ うつ病の人がキツイことをいったとしても「これは病気が言わせているんだ」と思って、相手も自分も守ってあげましょう。

FHN放送局
巨椋修（おぐらおさむ）拝

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巨椋修（おぐらおさむ）は陽明門護身拳法という護身術＆総合格闘技の師範をやっています。

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