学校関係者に非コミュが多い件について。

(連載記事はお休みです)
 
 さて、はてな界隈で「非コミュ」という言葉を目にするので何かと思ってキーワードリンクをたどってみて、なんか膨大な記事内容に仰天。
 どんな熱意だよ。
 
 ……まあ、要するに、コミュニケーション能力の低い人のことですね?
 対人スキルが欠けているというか。*1
 
 で、「非コミュ」でググると、「非コミュ指数テスト」(http://www5.big.or.jp/~seraph/zero/discomm.cgi)なるものがトップにきます。
 
 で、そこでは、「非コミュ」を、
 
「不器用型」
「無関心型」
「人間不信型」
「オタク型」

 
 ……の4類型に分けています。
 
 中でも「不器用型」を、
「いわゆる本来の「非コミュ」。アスペルガー症候群の可能性もある。」
 としているのが目にとまります。*2
 
 アスペルガー症候群って、いわゆる高機能自閉症ですよね?*3
 
 自閉症には、
「他人の気持ちを推測するのが苦手」
「冗談が通じない」
「“暗黙の了解”とか苦手」
「相手の言葉の裏を読むとか表情を読むとか苦手」

 ……といった、いわゆる「空気が読めない」という特徴があります。
 
 だから、「非コミュ」と重なる部分は確かにある、と言わざるを得ません。
 
 いや、
非コミュは病気だ! 専門機関で検査が必要だ!」
 とか言いたいわけではなくて。
 
 「自閉症スペクトラム」という考え方があって。
 Wikipediaの図を見てもらうのが早いんですが(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E9%96%89%E7%97%87)、要するに、確かに自閉症は病気だけど、「アスペルガー(要するに“知能は人並みの自閉”)」と「健常者」 の間に明確な境界はない、ということ。
 
「一応普通の範囲だけどかなりアスペっぽい」
 とかいう人が存在するわけです。*4
  
 「非コミュ」とは「自閉傾向の強い健常者」である……というか、重なる部分があるのは確かなんじゃないかと。(特に「不器用型」)
 
 さて、先日、研修で、軽度発達障害の子への対応とか勉強してきたんですけど。
 
 講師の先生、お子さんが何人かいらして、上のお子さんはアスペルガー障害。
 曰く、
「ウチは上の子ほど自閉傾向が強い」
 んだそうですが。
 
 で、冒頭でいきなり
「この中に、
『私、自閉傾向があるんですー』
 って先生はいませんかー?」
 
 間。
 
「あれ。いませんかね? 結構いると思うんですよー?
 私、学校関係で仕事することもあるんですけど、先生方って親切でね
『あのね、あの先生、話しかけるとき気をつけた方がいいわよ。話し始めると長いから!』
 とか教えてくれたりするんですよ。
 自分の興味のある分野の話を始めると、延々話し続ける人……いませんか?
 ちょっと自閉傾向があるのかも知れませんよねー」
 
 うちの学校にはいませんけどね。
 ……いませんよ?
 
アスペルガーの人もたぶん学校には多いと思うんですよ。
 よく、アスペルガー症候群が多い職業は、医者と弁護士が双璧だ、って言われるんですけど、学校の先生はそれに次ぐんじゃないかと勝手に思ってます。
 アスペの子って、興味のあることを暗記したりするのが好きなんですよ。うちの子も……(略)」
 
 学校でも、ちょっと心配な子に限って、恐竜に異様に詳しかったり、スター・ウォーズの登場人物の名前を全部(もちろん作品中で出てこない名前も)知っていたりします。*5
 
「……で、下の子は、暗記とか大嫌いで。
 だから、上の子ほど学校の成績はいいんです」
 
 こうして、高度な知的専門性を要求される職業にアスペ(≒非コミュ)人材が集まってくる、という可能性もあるのではないか、と思いました。
 
 いや、教員というのは人間とふれあう仕事で、高度な対人能力が必要とされる職業ですすけど。
 でも、それを言ったら医者も弁護士もそうですから……。
 
 よく、
「学校の先生は世間知らずだ」
 とか言われます。
 単に、学校の文化と企業の文化が違うだけじゃね? とも思うんですが。
 しかし、
「学校行事で、保護者が協力して準備などをしたんだけど、一人だけ浮いてる人がいて、聞いてみたらやっぱり他の学校の先生だった」
 とかいう話を聞くとううむ、と。
 
 学校職員には、世間より非コミュな人が多いのかも知れないですよ。
 「世間知らず」とか言われるのは、学校の閉鎖性とかの他に、そもそもそこにいる人間の資質も原因としてあるのかも知れません。
 
 まあ、「天は二物を与えず」。
 人間の能力は有限ですから。
 高度な知的専門性を具えつつ、優れたコミュニケーション能力も持っている……なんて人は希だ、ということかも知れません。

 人の精神は伸縮のきかない容れ物です。より多くの真理と完全な正気の両方を入れることは出来ないのです。
 一方をもっと多く入れれば、もう一方は押し出されてしまいます。
(「クトゥルフの呼び声」ルールブック(改訂版)、P75)

 ……いや、別に教育法規が「クトゥルフ神話知識」だというわけじゃないんですが。*6
 
 ↓のブログの人は、「霞ヶ関官僚はアスペルガー症候群じゃないか」って言ってますね。
http://diary.jp.aol.com/uvsmfn2xc/696.html霞ヶ関の官僚機構はアスペルガー症候群???」(貞子ちゃんの連れ連れ日記)
 
 ……いや、どうも官僚の悪口を言いたいだけみたいで、
霞ヶ関官僚はアスペルガーだ。→だからダメなんだ」
 って趣旨らしいので、あまり賛同はできませんが。*7
 
 で、もう一つ思うのは、「モヒカン族」の話。
 
 その定義についてはキーワードリンク、またはWikipedia記事(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%92%E3%82%AB%E3%83%B3%E6%97%8F_(%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E7%94%A8%E8%AA%9E))を参照してほしいのですが、
 
モヒカン宣言

  1. 発言者の社会的地位を気にせず、言説だけに注目する
  2. 事実のやりとりに、余計な装飾語はいらない
  3. 間違いは、きちんと認めて修正すればいい

 
 えーと、
・お互いの言葉の裏を読んだりするのは労力の無駄だよ
・間違いの指摘は非難じゃないよ

 ……とかって、そこはかとなくアスペの雰囲気が漂っていますよね。
 
 いやまあ、モヒカンとアスペルガーの関連性を論じる意見はすでに多数あるわけですが。
 http://d.hatena.ne.jp/strongaxe/20070207アスペルガー・ロジック」
(strongaxeの日記。……議論の最初の記事じゃないし、「モヒカン」に批判的な記事なんですが、コメント欄がいかにもモヒカンくさくておもしろかったので)
 
 「モヒカン」というのは、アスペ的人間理解の利点を規範とした人々のことなんじゃないか、と。*8
 
 ……と、以上の理由によって、
非コミュ」「自閉傾向*9」「モヒカン」
 の三者は、イコールではないにせよ、重なる部分も大きいのではないかと思います。
 
 ……なんか、はてな界隈で「非コミュ」「アスペ」「モヒカン」とかの用語をしばしば目にする理由がわかったような気がします。
 ほら、なんかSEとかの人が多いらしいし。(偏見?)
 
 もちろん、「モヒカン」の人は、意図的にそのような態度をとっているのであって、「非コミュ指数テスト」で言う「無関心型」とかに近い……とされるわけですけど。
 
 ……でも、
「俺は別にコミュニケーション能力がないわけじゃないんだよ。無用のなれ合いに意義を見いだせないだけであってさ。
 ……そりゃまあ、コミュニケーションの場に出る機会が少ないから、多少コミュニケーションの技術は他の人に劣るかも知れないけど、それは決して基礎的な能力の差ではないわけでさ」
 ……って言ってる人が、本当に「基礎的な能力」に普通人と差がないのかどうかは難しいところだと思います。(たとえ本人が本気で言っているとしても)
 
 先天的に非コミュの人が、その能力に合った職業に就いて、たまたま「モヒカン宣言」とかを読んで感銘を受けて、
「俺はコミュニケーション能力がないんじゃない!
 脱ムラビトを目指してるだけだ!」
 と思いこんでる……という可能性もあるんじゃないかと。
 
 ……あー、私の「指数テスト」の結果ですか?
 
 ……こんな感じ。

 
 非コミュ指数58。
「中度非コミュ」で「不器用型」(=本来の意味の「非コミュ」。アスペルガー症候群の可能性も)。
 
 ……いや、自分が非コミュだとは思ってたので、むしろ
「重度じゃなかったのか、良かった」
 って感じですけど。
(前述の研修の時、よっぽど挙手しようかと思った)*10
 
 ……でもよく考えると、これは「軽度じゃない」ってことで……。
高機能自閉症は高機能なのか」
 という。
 
 まあ、結果自体はそれほどショックではなかったんですが、GIGAZINEの紹介記事を見て驚きました。
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070430_dis_communication/「自分の「非コミュ」度をチェックできる「非コミュ指数テスト」」
 
 記者、「非コミュ指数2」とかってどんなだよ。
 他の編集部員も軒並み低いって、ありえないだろー?
 
 ……とか思いつつ、もう一度「テスト」を見直して、「統計モード」なるものを発見。
http://www5.big.or.jp/~seraph/zero/discomm.cgi?mode=report
 
 てっきり正規分布してるんだろうと思ったグラフが、わりときれいな漸近線を描いてるのに驚愕。*11
 
 「非コミュ指数0〜4」の人が一番多いのかよ。
 
 ……非コミュ指数が58〜の人を全部合わせても、十数%しかいないって……。
「中度」って、どういう意味の中度なんだ。
「軽度じゃない発達障害」とか、なんか嫌な表現が思い浮かぶんですが。
 
 まあ、ともかく。
 
 学校職員でオタクではてなユーザー、という私の今の位置は、まさに適材適所なんですよ、という……。
(ひでえオチ)
 
*余談
 
 ……再来月に結婚するわけですが。
 
「卒論ちゃんのどこが好きか?」
 と言われていろいろ考えるものの、「気心が知れている」というのが大きな理由かな、と。
 
 彼女が怒っているように見える時は怒っており、笑っているときは喜んでいるときなんです。
 
 言葉の裏とか読んだりしなくていいのはとても楽。
 
 ……そんな関係を末永く保ちたいものです。
 
 ……あ、彼女は非コミュじゃないですよ。全然。(前回・前々回を読んでる人には自明でしょうけど)

*1:なんか、はてなキーワードを見てると、「オレ理論グループの定義」とやらを参照すべきらしいんですが。
http://originaltheory.g.hatena.ne.jp/keyword/%E9%9D%9E%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%A5
 まあ、
「能力はあるけどコミュニケーションをとらない人もいるよ」(後述するテストで言う「無関心型」か)
 とか、「広義の“非コミュ”」とでも言うべきものと理解しました。

*2:ただし、このテストは
「αver.」
「設問や非コミュの分類、各種パラメータを試験中のため、ご意見等ありましたら掲示板でご連絡ください」
 とか書いてあるとおり、信頼性・妥当性が確認された学術的なテストではありません。
 まあ「非コミュ」自体、学術的な区分ではないし。
 「心理テスト」みたいなお遊びだと思えば良いかと。

*3:以下、霞先生のツッコミ待ち。

*4:これがたとえば「脳梗塞」とか「虫歯」とかだったら、そんな曖昧な領域はないか、あってもかなり狭いだろうと思うんですが。
「一応健康だけど、かなり脳梗塞っぽい」人……ってどんなだ。

*5:いわゆる「恐竜博士」とか「昆虫博士」とかがみんなアスペルガー症候群の疑いが、とか言いたいわけでは全然ないです。

*6:「ハンディ教育六法」日本語。正気度ポイント喪失は1/1D4。<クトゥルフ神話>に+4%。呪文はなし。

*7:日本の行政の運営が万全だ、と言いたいわけでもないですけど。

*8:みんながアスペ的に振る舞えば、アスペ的振る舞いは問題じゃなくなるんじゃね?
 というのは、↓の記事「定型発達者の会話では気遣いや感情が他のものに優先する」(アスペルガーライフblog 。……前にも引用したけど)を読んで以来思っていること。
 http://maminyan.blog5.fc2.com/blog-entry-184.html
 ……これもたぶん美化しすぎた見方で、アスペルガー症候群の子どもの保護者の方とかが聞いたら
「お気楽なことを言うなー!」
 とか怒られるかも知れないですが……。
こだわりの強さとか味覚過敏とか予定変更にパニックを起こすとかには苦労している、と、講師も言ってました。

*9:しばしば知的専門性とのトレードオフであることは既述。

*10:あの奇妙な“間”は、他にも同じことを考えてる先生が多かったことを示してるんじゃないかな……と、勝手に思ってます。

*11:しかもこのきれいさぶりがテストの信頼性を示してるようで嫌な気分に。